あなたの非財務報告書で、バリュークリエーション(価値創造)の投資手法を描けますか? あなたの非財務報告書で、バリュークリエーション(価値創造)の投資手法を描けますか?

執筆者 Mathew Nelson

EY Global Climate Change and Sustainability Services Leader

Leading a purpose-driven team that shares a common passion for creating positive impact. Workplace diversity and equality advocate. Engineer. Father of two boys. Australian Football League fan.

投稿者
10 分 2018年11月29日

環境、社会、ガバナンス(ESG)、非財務情報ファクターは、今や投資の意思決定のプロセスにおいて不可欠となりました。

EY Globalの 2018年 グローバル気候変動とサステナビリティサービス(CCaSS:Climate Change and Sustainability Services)の機関投資家を対象とした調査では、今やESG情報が投資家の意思決定に不可欠であるというグローバルなコンセンサスであることを明らかにしています。世界の投資家は、 長期的な価値の創造の評価に役立つ重要な非財務業績情報をこれまで以上に、より広範囲で利用価値の高い報告を利用するようになりました。

情報発行者は長年もの間、しばしば非財務情報を促進する報告をしており、高品質な非財務情報への投資家からの需要に応じる課題が増大しています。最初のステップとして、まずは組織や業界にとって重要なトピックが何であるのかをよく理解することです。: どのようなトピックを決定し、どのような基準で分析するかが、企業の長期的な価値を展開する上でのリスクとオポチュニティー(機会)への視野が広がり、最も有益となるからです。そのようなトピックに関連のある透明性が高く、一貫性のある比較データは、法人機関の信頼性がリスクにさらされている時も、ビジネスにける信用の回復も可能にします。

今年の調査の結果によると、企業は評価において何が不可欠で、何が必要ではないかについての判断能力を向上させてはいますが、重要トピックの報告や実績評価の方法について情報発行者と投資家の双方がコンセンサスを期待しています。こうしたコンセンサスには今後、政府や業界団体、投資家の間で高度な協働が必要になる可能性があり、ビジネスに投資家、株主、顧客へとより信頼性のおあるオポチュニティー(機会)を提供できます。

漁船を上から見た景色
(Chapter breaker)
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第1章

投資家はこれまで以上にESGや非財務情報に依存するようになりました。

ほぼすべての調査回答者が、ESG開示情報の評価を実施しており、またESG開示情報は意思決定において極めて重要な役割を果たしていると答えています。

ESG依存度の高まり

気候変動が商業へ与える影響がより一層明確になり、ずさんなコーポレートガバナンスによるスキャンダル、企業が会社に与える影響についての新たな解釈などが続いた数年間で、機関投資家はこれまで以上に投資の意思決定に際して非財務的な業績情報を重要要素として使用するようになりました。ほぼすべての投資家(97%)が、非公式な方法(65%)あるいは構造化され秩序立った方法(32%)のいずれかを実施している投資対象企業の非財務情報の開示を評価しています。

投資家は、対象企業の非財務情報の開示を評価

97%

の投資家が、非公式な方法、あるいは構造化され秩序立った方法のいずれかによって評価を実施しています

質問:社会と大企業の現在の信頼水準をどう思いますか?

EY Globalが投資家を対象とした2017年Global Climate Change and Sustainability Services investor survey(気候変動とサステナビリティサービス)では、78%が対象企業の非財務的な開示内容について非公式に、その構成内容についての評価を実施したと回答し、約20%の大幅な増加がみられました。2018年の調査では、非財務情報開示の審査をあまり行わない、あるいはまったく行わない、とした回答者はわずか3%でした。これに対し、2017年の回答者は22%、2015年の回答者は48%でした。

ESGファクターの多様な用途

投資時の意思決定プロセスにおいてESG情報の重要性がますます高まっており、投資家はESGファクターにはダウンサイドリスク(目標設定を下回るリスク)を緩和する可能性があると考えています。ほぼすべての回答者(96%)が、こうした情報が時に(62%)あるいは頻繁に(34%)意思決定の重要な要因となっていると答えています。

質問:社会と大企業の現在の信頼水準をどう思いますか?

2017年の調査 結果では68%がESG情報を頻繁に、あるいは時々使用していると回答しており、ESG情報の利用度は2017年の調査時から劇的に伸びています。

非財務情報をこれまで以上に考慮するようになったのは、リスクに対する評価の調整を行うとき(70%)、業界での競争力や規制を検証するとき(63%)、そして投資結果を審査するとき(61%)だと投資家は回答しています。

ESGファクターはダウンサイドリスク(目標設定を下回るリスク)の保護にもなり得ると考えられており、全体の89%は、市場が低迷している際の投資意志決定において、ESG情報はこれまでよりも幾分か価値がある(80%)、もしくは非常に価値がある(9%)と回答しています。

統合報告書と年次報告書への依存性の高まり

投資家はこれまで以上に投資対象とする企業からのESG開示情報に依存しており、企業の社会的責任(CSR)やサステナビリティに関する報告書、ブローカー・ディーラーからのエクイティ調査、報道機関やその他の外部情報源の利用は減っているか横ばい状態です。ほぼ全ての投資家(94%)が、統合報告書は非常に有用(88%)あるいは不可欠な(6%)非財務報告の情報源であると回答しています。また、同じ割合の投資家が、年次報告書についても非常に有用(82%)あるいは不可欠な(12%)非財務報告の情報源であると回答しています。

投資家は、統合報告書の有用性を理解している

88%

の投資家は、統合報告書を非常に有用であると回答しています

質問:社会と大企業の現在の信頼水準をどう思いますか?

EY Globalの投資家を対象とした 2017年 グローバル気候変動とサステナビリティサービス調査(CCaSS:Climate Change and Sustainability Services)では、統合報告書は非常に有用であるか不可欠であると回答した投資家はわずか57%、企業の年次報告書についても同様に63%でした。

半数以上(56%)が、企業の非財務情報開示について利用できない、あるいは、利用が可能な場合でも他社の非財務情報との有意義な比較には不十分な内容だと回答しています。投資家は、公式のガバナンス文書、ポリシーや取組みに関する情報開示は非常に多いものの、説明内容の信頼性に関する測定方法 – つまりどのようにして非財務的な基準が構築され管理されるのかを示す情報が欠如していると言います。投資家は、長期戦略目標を立てられるような環境や社会の要素を特定させ、またその投資期間全体に適用できる目標を設定させようと企業を見守っています。

緑青のついた青い漁船
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第2章

情報発行者はマテリアリティ(重要課題)をより適正に評価できるように

投資家はより広範なESG情報を求めており、その意思決定のためのの一貫した格付け情報を探しています。

企業のESGリスク開示の改善 – 特にガバナンスについて

大半の企業がガバナンス要素のマテリアリティ(重要課題)を評価できていると投資家は言います。全体の87%が、ほとんど(78%)、あるいはほぼすべて(9%)の企業が、ESGのマテリアリティ(重要課題)を適正に評価していると回答しました。

投資家は、ほとんどの企業がガバナンス要素のマテリアリティ(重要課題)を評価

87%

の投資家は、ほとんど、あるいはほぼすべての企業がESGのマテリアリティ(重要課題)を適正に評価していると回答しました

質問:チームがデータ主導の洞察を得ることができる状況について、最も該当していると思うのは以下のどれですか?
マテリアリティ(重要課題)の分析プロセスは、ESGリスクの影響を評価する際に主な問題点を明確にするために役立ちます。
Dr. Matthew J. Bell
EY Asia Pacific Climate Change and Sustainability Services Leader

投資家は、企業による評価のうち、ガバナンスのマテリアリティ(重要課題)の評価を最高点に格付けし(1~10点のうち8.28点)、これに社会的課題(7.72点)、環境課題(6.19点)も続きました。しかし、最も十分に報告されていると回答されたガバナンスリスクは、その評価や測定が困難な項目でもあります。

質問:チームがデータ主導の洞察を得ることができる状況について、最も該当していると思うのは以下のどれですか?

コンプライアンスとリスク管理がモチベーションに

圧倒的な数の投資家が、企業の非財務的活動やESG活動の詳細な報告について最も興味を持ち、その中でも規制に対するコンプライアンス(90%)と、続いてリスク管理(87%)についての報告を信用している、と回答しています。開示が迫られる理由としては上記以外に、長期的な価値に向けた戦略(78%)、競争からの圧力(70%)となっています。

質問:チームがデータ主導の洞察を得ることができる状況について、最も該当していると思うのは以下のどれですか?
滝を上から見た景色
(Chapter breaker)
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第3章

意思決定において最重要となる4つのファクター(要因)

意思決定における主要なESGファクターはガバナンス、サプライチェーン、人権、気候変動です。

主要なESGファクター(要因)

本年の調査では、投資家は投資の意思決定における主要なESGファクターはガバナンス、サプライチェーン、人権、気候変動に関連するリスクであると報告しています。

質問:「財務チームの抵抗と文化的障壁がデジタル革新を阻害している」と思いますか?

ガバナンスへの取組み内容が不十分であるリスクや履歴があることを理由に、即座に投資を中止すると回答した投資家は63%に上りました。 同様に、サプライチェーンのESG関連リスク(52%)、人権に関する取組み内容が不十分であるリスクや履歴(49%)、気候変動リスク(48%)も、投資を避ける引き金となっています。EYの 2017 グローバル気候変動とサステナビリティサービス調査(CCaSS:Climate Change and Sustainability Services)では、投資家は、投資を即中止する要素はガバナンス(38%)、人権(32%)、ESGデータや訴訟の検証能力(20%)、サプライチェーン(15%)であると回答しています。気候変動に至っては、要素の中で最低スコアのわずか8%でした。

気候変動に伴う移行リスクと物理的リスク

気候変動については、常に記者によって最重要課題と特定する問題の一つだと投資家は提唱しています。しかし、この調査では、たとえば新規の規制や取組み、プロセスの実施といった移行に伴うリスクよりも、気候変動の物理的なリスクによる影響の方を懸念していると投資家は答えています。70%が、この先2年間にわたり物理的なリスクについて相当量の時間や注意を向けるだろうと回答しています。48%は移行リスクに同等の時間や注意を向ける、と回答しています。

質問:「財務チームの抵抗と文化的障壁がデジタル革新を阻害している」と思いますか?
蒸気を上げる間欠泉
(Chapter breaker)
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第4章

投資対象に対するスクリーニングと、ポートフォリオ(資産構成)のティルト戦略(要因による投資配分の傾斜)の促進

ESGファクターは潜在的な投資にとってポジティブ、ネガティブ両方のスクリーニングとして利用できます。

ネガティブ・スクリーニングとポジティブ・スクリーニング

投資家は、ネガティブ・スクリーニングは超過リターンを生み(85%)、ベンチマークやターゲットに対するリスクを下げる(67%)と回答しています。 一方、ポジティブ・スクリーニングもリスクを下げ(79%)、ポートフォリオの重要な非財務目標を達成する(73%)と回答しています。

質問:今後2年で財務報告のデジタルイノベーションを実現する上で、AIの専門家はどの程度重要になりますか?

ESGに基づいたポートフォリオのティルト戦略を支持

投資家は、ESGのネガティブな属性のアンダーウェイト(低い投資配分比率)がリスクを下げ(67%)、超過率リターンを生む(68%)と回答しています。一方、ベンチマークやターゲットに対し、ESGのポジティブな属性のオーバーウェイト(高い投資配分比率)はポートフォリオの重要な非財務目標を達成し(72%)、ベンチマークやターゲットに対してリスクを下げる(69%)と回答しています。

ESGに特化した投資商品

投資家は、例えばグリーンボンドのようなESGに特化した投資商品は、ベンチマークやターゲットに比べてリスクが少なく(72%)、ポートフォリオの非財務目標を達成し(71%)、ベンチマークやターゲットに対しエクセスリターン(大幅な収益)を生み出す(69%)と回答しています。

金網を持った2人の漁師
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第5章

投資家はESG報告基準の構築に向けたコラボレーション(協働)を求めています

投資家は、非財務分野での会計基準の必要性をこれまで以上に感じており、政府、規制当局、そして企業の協働に期待しています。

求められる基準

投資家は、規範となる非財務分野での会計基準が緊急に必要であると感じています。非財務情報について規範となる会計基準が非常に有益になると考える回答者は59%に上りました。2017年 グローバル気候変動とサステナビリティサービス調査(CCaSS:Climate Change and Sustainability Services)の投資家を対象とした調査から26%の増加です。

質問:今後2年で財務報告のデジタルイノベーションを実現する上で、AIの専門家はどの程度重要になりますか?

さらに、投資家から必要とされているそれらの基準に相反して存在感が薄くなった3つの要因にいて、重視すべき順に次の通りランク付けしました: 国際統合報告委員会(IIRC)のフレームワークに沿った統合報告、経営層が企業の価値創造戦略に最も重要であると考える企業の情報開示、財務・非財務情報を統合した企業定義による報告などです。

国主導の取組みが求められる

非財務情報に対する投資家の要求と発行者から実際に提示される情報との間のギャップを埋める取組みを主導する存在として最適と投資家が回答したのは、国家の規制当局(70%)でした。この役割について、これ以外の選択肢としては、国際組織やNGO(60%)、投資家や資産管理者自身(56%)という回答が続きました。発行者や民間セクターの業界団体が主導すべきであると回答したのはわずか20%でした。

質問:今後2年で財務報告のデジタルイノベーションを実現する上で、AIの専門家はどの程度重要になりますか?
間欠泉の噴火を見る人々
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第6章

今後の課題

企業には、自社の業務繁栄に向けた無形資産投資をどう成長させるかについての戦略的なストーリーが必要です。

投資家の非財務資産報告に対する需要の高まりは、投資家が企業業績とESGファクターの関連性をより深く理解している事実を反映したものです。つまり企業には、財務報告と併せて、ビジネスの成功に向けた無形資産をどう成長させるかについての一貫性のある戦略的なストーリーが必要であるということを意味しています。 

貴社にこうしたフレームワークやデータがあれば、投資家との対話や将来の金融規制の進展に向けた準備に役立つかもしれません。

質問:今後2年で財務報告のデジタルイノベーションを実現する上で、AIの専門家はどの程度重要になりますか?

企業が検討すべき4つの主要領域:

  1. 構造化されたマテリアリティ分析プロセスの確立
  2. 社会的および環境に対する成果の測定と報告
  3. 長期的価値の測定と報告
  4. あらゆる気候変動リスクに関するこれまで以上の包括的な報告、投資家を含むステークホルダーとのエンゲージメント
  • この調査について

    2018年5月、EYはInstitutional Investor (II) のCustom Research Labに対し、投資における意思決定に非財務情報を使用することに対する機関投資家の意見調査を目的とした第4回機関投資家向け調査の実施を委託しました。

    IIとEYは、いくつかの過去数年間の一貫した質問に加えて、短期的に興味を引いたトピックからテーマ別に抽出した質問を組み込みんだアンケート作成をコラボレート(協働)しました。IIは、世界中の運用側機関で意思決定を行っている上級職から260の回答を集めました。

     

    質問:今後2年で財務報告のデジタルイノベーションを実現する上で、AIの専門家はどの程度重要になりますか?

本記事にある第三者の見解は、必ずしもEYまたはEYのメンバーファームの見解ではありません。また、これらの見解は、表明された時点の文脈にて解釈してください。また、これらの見解は、表明された時点の文脈にて解釈してください。

サマリー

本書は、ESGや非財務報告に対する投資家の視点、意思決定を行う上での役割について調査したEYのグローバル気候変動とサステナビリティサービス調査(CCaSS:Climate Change and Sustainability Services)の第4版です。

今年の調査では、投資家の意思決定にとって、ESGなどの非財務情報が重要であるというコンセンサスが明確となりました。世界の投資家は、重要な非財務活動実績の情報について、より豊富で有用な内容が、整合性のある高いレベルのクオリティで報告されることを期待しています。こうした取組みを実施することで、企業は価値主導の報告をより広範囲に発信し、キーとなるステークホルダーとの間にいっそう強固な信頼を構築するできるでしょう。

この記事について

執筆者 Mathew Nelson

EY Global Climate Change and Sustainability Services Leader

Leading a purpose-driven team that shares a common passion for creating positive impact. Workplace diversity and equality advocate. Engineer. Father of two boys. Australian Football League fan.

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