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執筆者 Peter Wollmert

EY Global and EY EMEIA Financial Accounting Advisory Leader

Senior Assurance leader. Promoting quality and effectiveness in corporate reporting and the audit. Advocate for the future of the accounting profession. Passionate runner and scuba diver.

2018年11月12日

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組織では、報告の透明性を確保することで、信頼を構築し、長期的価値をどのように生み出しているか説明することが喫緊の課題となっています。これを実現するには、データを駆使して戦略的な資産を生み出す必要があります。

しかし、多くの組織はこうした機会をつかみ損ねています。情報を得られておらず、 結果として自らの財務・非財務データを十分に活用できていないのです。こうした組織は、単純に多様性と量に圧倒されるばかりです。データフローをコントロールし、負債から資産へと転換するには、人工知能(AI)をはじめとする一連のテクノロジーへのアプローチを再考し、異なる人材特性を構築し、既存スタッフのスキルセットを高める必要があります。

組織が報告においてデータを最大限に活用するには、財務リーダーが以下の3つの重要アクションを検討する必要があります。

  1. 企業の報告システムに疑問を投げかけ、価値主導の報告を実現する
  2. 人工知能および新たなテクノロジーを最大限に活用する
  3. 財務スタッフに変革をもたらし、文化的障壁を克服する

上記の3つのアクションに取り組むことで、財務リーダーは簡単に測定できる内容を報告するだけでなく、長期的価値をもたらす要因を理解するために、資本市場のステークホルダーが必要とする洞察を提供できるようになります。こうした透明性を実現することで、財務リーダーは企業と公的機関における信頼を回復させることができます。

報告の変革に関する洞察は、「2018年 EY Global 財務・会計アドバイザリーサービス(FAAS)(2018 EY Global Financial Accounting and Advisory Services (FAAS))」における企業報告の調査結果から得ています。また、調査の背景にあるデータを検討し、国別の結果を確認し、国や業界ごとの結果を比較できます。

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第1章

企業の報告に疑問を投げかけ、価値主導の報告を実現する

報告は、組織の財務/非財務業績について明確な洞察を提供することで、信頼の再構築で中心的な役割を果たします。

企業と資本市場は、信頼性が高く、かつ関連性の高い企業報告に依存しています。こうした報告は企業の評判を支え、企業リーダーの活動に対する市場の信頼を高めます。

しかし、企業報告の有効性は、2つの面で脅威にさらされています。1つ目は、企業と社会の間で信頼が損なわれていることです。今回のEYの調査では、企業に対する信頼が非常に高いと答えた財務リーダーの割合はわずか58%でした。企業の財務リーダーは、企業に対する信頼について比較的ポジティブに考えているかと思われますが、回答における自信のなさは多くの地域で見られました。たとえば、「企業に対する信頼が非常に高い」と答えたEMEIAの回答者は12%で、「信頼が高い」は43%となり、合計はわずか55%です。

財務リーダーは、企業に社会的信頼があることに自信を持っているとは言えません

58%

58%が「企業が得ている信頼が非常に高い」または「信頼が高い」と答えました。

質問:社会と大企業の現在の信頼水準をどう思いますか?

企業に対する社会の信頼は、企業の報告項目と社会的課題で断絶があることによって一層悪化しています。組織の業績を左右した非財務情報を把握できていないことが多いと報告されています。したがって組織は、現在よりもはるかに明確かつ明晰に業績を把握・説明する必要があります。

EYの調査では、財務リーダーが現在よりも大きな全体像に基づく報告を期待していることが示されています。投資家の意思決定において非財務情報の利用が拡大していると答えた財務リーダーの割合は、4分の3をわずかに下回っており(72%)、その重要性に注目するグループCFOの割合は4分の3を超えています。

質問:「投資家の意思決定において非財務情報が積極的に利用されつつある」と思いますか?

信頼を再構築し、組織の計画に関する洞察をステークホルダーに提供することで長期的価値を生み出すには、財務チームが以下の2つの優先課題に注目する必要があります。

現在よりもはるかに明確かつ論理的に企業の業績を把握・説明する

企業は、財務・非財務情報の報告に関して大幅な進歩を遂げています。こうした企業は現在、経済、戦略、そして環境・社会・ガバナンス(ESG)の重要業績評価指標(KPI)について報告を行っています。今回のEYの調査では、最も一般的なKPIとして「従業員の待遇」および「顧客ロイヤルティ」または「ネットプロモータースコア」などがありました。

組織は、さまざまな方法で非財務情報も伝達しています。 こうした方法には以下があります(今回の調査順)。

  1. 財務・非財務情報を統合する会社独自の報告
  2. 国際統合報告評議会(IIRC)の国際統合報告フレームワークに準じた統合報告
  3. アニュアルレポートの特定セクション
  4. 独立した企業の社会的責任報告
  5. 独立した持続可能性報告

しかし、こうした大幅な進歩にもかかわらず、報告に関する取り組みではまだすべきことがあります。報告項目に誤りが多く、ステークホルダーが知りたいことではなく、簡単なものを測定する傾向があります。これは、無形資産や非財務資産で特に当てはまります。財務リーダーのほぼ4分の3(73%)が「非財務KPIに関する成果は無形資産に大きな影響を与えている」と答えました。こうした考えは、財務部門全体で共通のものであり、グループCFOの75%、グループ財務コントローラーの70%が同意しています。

長期的価値に基づくアプローチでは、戦略的資産の価値を伝え、多数のステークホルダーが望む情報を提供し、組織が長期的にどのように価値を生み出しているか示す新たなフレームワークが求められます。The Embankment Project for Inclusive Capitalismはこうしたフレームワークに向けた取り組みです。

  • Embankment Project

    企業は、社会全体に利益をもたらす包括的かつ長期的価値の創造に向けた貢献を実証する必要があります。Coalition for Inclusive CapitalismとEYは、こうした要求への対応を踏まえて、30を超える大手組織(運用資産30兆米ドル超)のCEOを集め、自分たちがステークホルダーに対してどのように価値を生み出し、短期のトレードオフに対する圧力を減らしているか効果的に説明する方法を検討しました。

    「The Embankment Project for Inclusive Capitalism」と名付けられたこのイニシアチブは、企業がステークホルダーに対してどのように長期的価値を生み出しているか説明できるよう、測定可能、比較可能かつ有意義な方法を開発しています。

    このプロジェクトには、投資・資産運用会社に加えて、消費者製品、医療サービス、工業セクターの企業が参加しています。プロジェクト参加者は、一連の成果指標の特定し、企業が自らの戦略により長期的価値を実現する方法を説明するためのフレームワークを構築しています。

財務情報と同じレベルの厳密性と確実性で非財務情報を管理する

非財務情報に対する関心の高まりにより、ステークホルダーが詳しい報告を求めることが考えられます。

経営幹部および取締役会は、情報が有益かつ関連性が高いことを確認する必要があり、規制当局は情報が正確かつ規制に準拠していることを確認する必要があります。財務情報であるか非財務情報であるかを問わず、投資要件を満たさない報告情報があれば、信頼が損なわれるでしょう。

義務的なものであれ、自発的なものであれ、情報に対する独自の検証は重要な役割を果たすと思われます。EYの調査では、非財務情報を独自に検証している企業は、企業報告に対する信頼性に自信を持っている傾向が明らかになりました。企業報告に対する投資家の信頼が高いと答えた割合は全体で62%でしたが、非財務情報の監査を行っている回答者ではこれが83%に増加しました。

  • 非財務報告に対する投資家のニーズを満たす

    EYの気候変動・サステナビリティサービス(CCaSS)の調査によると、報告の改善・統合に対する気運は、機関投資家コミュニティで大きく高まっています。

    ここでは、世界的な政策議論、新たな規制要件、サプライチェーンの逼迫が一部影響しているものの、投資家全体の声が引き続き最も目立っています。たとえば、EYの気候変動・サステナビリティサービスの調査では、過去12カ月の投資決定において非財務業績が重要な役割を果たすことが「頻繁にあった」または「何度かあった」と答えた投資家が大半を占めました(96%)。

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第2章

人工知能およびスマートテクノロジーを最大限に活用する

多くのチームは、利用できるデータの量に圧倒されています。こうしたチームは、テクノロジーを利用する必要がありますが、規範と信頼を失ってはなりません。

組織とその財務チームは、コンピューターの処理能力の増大、接続の拡大、クラウドおよびその膨大なストレージ能力により、以前よりも多くのデータを扱うようになっています。

しかし、多くの財務・報告チームは、データの量と多様性に圧倒されるばかりです。今回のEYの調査では、財務リーダーの約半分(49%)が「データの分析に費やす時間よりも、データの収集と処理に費やす時間が多い」と答えました。

多くの財務・報告チームは、データの量と多様性に圧倒されている

49%

49%がデータの分析に費やす時間よりも、データの収集と処理に費やす時間が多いと答えました。

質問:チームがデータ主導の洞察を得ることができる状況について、以下のどれが最も該当していると思いますか?

データから真に価値を重視した報告を作成するために、財務チームは以下の2つの優先課題に注目する必要があります。

自動化、AI(人工知能)、ブロックチェーンにおける急速な技術の発展を利用する

自動化:財務チームに、自由に洞察を得ることに集中させる

最も敏速な財務・報告チームは、自動化により新たなレベルの業務スピードを実現しています。

  • チームは、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)に熟達しており、新たな水準の効率性を実現しています。また、ルールベースのロボティックテクノロジーを利用して、膨大な財務取引プロセスを自動化しています
  • チームはすでに、次の自動化領域である「インテリジェント・プロセス・オートメーション」を検討しており、ここではRPAを機械学習などのAIと組み合わせています。こうしたテクノロジーでは、時間とともに多くのデータを利用することで学習が進み、財務チームは価値の高い財務関連の業務に力を注ぐことができます。こうしたツールの改善に伴い、複雑な契約やデータの読み取り、管理、分析が可能になるでしょう。ここで利用可能な他のインテリジェントテクノロジーとして、音声認識、自然言語処理、生体認証、チャットボットなどがあります

AI:データから得られた洞察を活用する

財務リーダーは、AIを利用してデータの基本パターンを探し、機械学習によりシナリオを予測し、結果を改善することができます。

調査では、財務リーダーのほぼ4分の3(72%)が財務におけるデータ主導の洞察にAIが大きな影響を与え、AIが将来の財務部門で重要なテクノロジーになると答えました。また、財務リーダーに、3つのテクノロジー(RPA、AI、ブロックチェーンによるツール)の重要性について順位を尋ねたところ、現在はRPAが一位に挙げられましたが、今後5年にはAIがこれに代わるでしょう。

しかし、財務リーダーが財務部門でAIをどのように利用するか検討するだけでは不十分です。彼らは、企業報告を選別するために、投資家などのステークホルダーがAIをどのように利用しているかも検討しなければなりません。投資家はAIにより、以前では考えられなかった方法で企業の財務情報を分析できるようになっています。 

人工知能:データから得られた洞察を活用

72%

72%が財務におけるデータ主導の洞察に人工知能が大きな影響を与え、人工知能が将来の重要なテクノロジーになると答えました。

質問:現在および今後5年での財務部門における以下の各テクノロジーの重要度をランク付けしてください。
  • 人工知能と倫理

    人工知能が急速に発展しており、財務リーダーは動向に注視する必要があります。これは、情報に基づく決定に関して、財務・報告のどの領域でテクノロジーが最大の価値をもたらすかが重要になることを意味しています。これを受けて財務リーダーは、自分たちの変革を計画し、財務とITの強力なコラボレーションの基礎を築くことになります。

    しかし、ここには倫理的な問題があります。財務・報告では、システムが正しく機能していることを確認するだけでは十分でありません。システムが正しいことを行っていることも確認する必要があります。これは、人工知能などの変化の速いテクノロジーで特に重要となります。なぜなら、規則と規制はテクノロジーの後手に回り、リスクの適切な検証と対応ができるとは限らないからです。

    これらのツールに対する倫理基準を構築するアプローチとして、テクノロジーの影響を受けるステークホルダーに自分の視点からテクノロジーを検討してもらうことができます。また、システムの設計では、報告システムにおける決定方法について透明性を重視する必要があります。

ブロックチェーン:未来の報告は従来から大きく変化するか?

ブロックチェーンは、分散型台帳で取引を記録するため、すべてのネットワーク参加者は、ほぼリアルタイムで過去のすべての取引について安全な監査証跡を得ることができます。一部の評論家は、このテクノロジーが報告と会計の業界標準となり、既存のバックエンドITと従来の報告実務に取って代わると期待しています。ブロックチェーンを利用して自動的に会計記録を統合できれば、報告チームは照合と集約に時間をかけず、信頼できるデータの分析に集中できます。

今回の調査では、数多くの財務リーダーがテクノロジーの可能性を認めていることが示されています。EYの調査では、4分の1近く(24%)が今後5年でブロックチェーンが財務部門で最も重要なテクノロジーになると答えました。当然ながら、克服すべき課題も数多く存在します。 たとえば、規制当局から取締役会までの主要ステークホルダーは、必要な規制環境に同意し、これを導入する必要があります。

データアナリティクスにおける信頼の構築

財務リーダーは、データから報告の洞察を生み出すことに注目していますが、難しいバランスを調整する必要があり、規範と信頼を損なわずにデータ利用でイノベーションを実現する必要があります。

今回の調査では、財務リーダーの懸念として、データのリスクに関することが最も多いことが示されています。また、データの安全性に関する懸念は、新たな報告テクノロジーを導入する上で最も重要な障壁の1つとなっています。

しかし、デジタルおよびデータに関するリスクへの懸念によって組織を後退させてはなりません。真に価値を重視した報告を行うには、財務チームが自信を持ってデータを扱う必要があります。これには、テクノロジーとプロセスに関する変革だけでなく、意識、スキル、ガバナンスが必要となるでしょう。

現在の財務リーダーが抱える5つの課題:

  1. データ保護とプライバシーリスクを重視する
  2. テクノロジーの変化と歩調を合わせる
  3. 監視の強化と規制の変化
  4. リアルタイムかつ将来志向の情報に対する需要の増大
  5. 社会規範の変化への対応
質問:自分が所属する財務部門において、新たに革新的な報告テクノロジーを導入する上で何が最大の障壁となっていますか?
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第3章

財務チームに変革をもたらし、文化的障壁を克服する

財務部門は、異なる人材特性を必要としており、リーダーは文化的障壁を克服して硬直したプロセスを打開する必要があります。

価値主導の報告では、財務チームが新たなテクノロジーを導入するだけでなく、異なる人材特性とスキルセットが必要になります。

財務部門は、従来の財務・会計スキル以上の新たな能力を備えたチームメンバーから恩恵を受けます。こうしたスキルには、人工知能などの新たなテクノロジーに対する戦略的な認識、データサイエンスや高度な統計などの分野における知識が含まれます。

チームが非財務・財務情報間の相互関係を理解・測定するのを支援できる人材は、有益な存在となるでしょう。こうしたスキルでは、非財務情報の管理について軽微な違いを理解し、組織の各種資本の相互関係を把握する必要があります。

財務リーダーは、部門の人材特性でてこ入れが必要であることを理解しています。今回の調査では、財務部門において新たなスキルを急いで採用する必要があると答えたCFOが大多数を占めました(79%)。

しかし、硬直した文化や変化への抵抗が進捗を妨げ、アプローチの変革がきわめて難しい可能性があります。今回の調査では、「財務チームの抵抗と文化的障壁がデジタル革新を阻害している」と答えた財務リーダーの割合は63%でした。常に革新を進め、テクノロジーの課題が変化し続ける業界で生き延びる必要があるテクノロジー企業では、デジタル手法を採用し、組織全体が望むスピードで活動するチームの能力について特に上級財務リーダーが大きな懸念を示しています。

質問:「財務チームの抵抗と文化的障壁がデジタル革新を阻害している」と思いますか?

抵抗に勝ち、財務スタッフの変革を加速するために、組織は2つの優先課題に注目する必要があります。

人材と特性に関して創造性を発揮する

財務部門は新たなスキルを備えた人材を求め始めています。次の世代の人たちは、会計と自分の業界だけでなく、人工知能、ブロックチェーン、機械学習、そしてこれらのテクノロジーを連携させる方法を理解する必要があります。

今回の調査では、今後2年の財務・報告において革新を進める上で、人工知能に関する専門知識が不可欠になり、すべての領域でこれが優先課題になると答えた財務リーダーの割合は全体の72%となりました。

財務リーダーは、企業の戦略に基づいて必要となるスキルと能力を明確にし、透明性を維持または拡大して長期的価値を生み出す必要があります。

優れた財務部門は、チームの既存の能力を評価してどのようなギャップがあるか理解しています。これには、新たなテクノロジーおよびデータを検討する上で必要なハードスキルと、解釈と戦略にかかわるソフトスキルの両方が含まれます。

人工知能に関する専門知識の価値

72%

今後2年の財務・報告において革新を進める上で、人工知能に関する専門知識が不可欠になると答えました。

質問:今後2年で財務と報告のデジタル革新を実現する上で、人工知能の専門家はどの程度重要になりますか?

採用、人材開発、リソース調達に対する革新的なアプローチ


多くの組織は、新たなスキルと特性が必要であることを理解していますが、異なる場所で人材を探さず、人材開発で新たな戦術を使用しないのが一般的です。こうした組織は、従来の手法にあまりにも依存しています。つまり、何年も使用してきた同じ方法を利用し、独自の採用と人材開発に慣れてしまっています。

財務部門は、こうした固定化したアプローチと、財務部門のケイパビリティに対する視点に疑問を投げかけるために、活動を強化する必要があります。例えば、自動車業界は、デジタルディスラプションとコネクテッドカーの課題に対して大胆な対応を行いました。

今回の調査から、財務リーダーは人材の調達と育成に関して創造的である必要があることが示唆されます。財務部門が、採用アプローチを拡大し、従来とは異なる経歴を持った人材を見つける必要があると答えた割合は76%でした。

  • 若い財務エグゼクティブは、最先端の能力を重視する傾向がありました。

    今回のEYの調査では、すべての回答者が新たな領域におけるテクノロジー専門知識がデジタル革新に不可欠であると考えられる一方で、若年層の財務エグゼクティブはこの領域をさらに重視していることが示されています。たとえば、39歳以下の財務エグゼクティブは、4分の1以上(27%)が財務のデジタル革新でロボティックスが「きわめて重要」になると答えています。50歳以上ではこの割合が16%に低下します。 若年層の財務エグゼクティブは、デジタル革新に関して、データサイエンティストと統計専門家がきわめて重要になると考える割合が高いことも明らかになっています。これは、若い世代が新たなテクノロジーの影響に対する認識がきわめて高く、それに伴い必要となる専門知識を財務部門が採用することに抵抗がないことを反映した結果であると思われます。

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第4章

今後の展望

豊富なデータを活用することで、財務部門は企業に関する洞察を提供し、ステークホルダーに対する長期的価値を支援することができます。

信頼構築には長い時間がかかりますが、失うのは一瞬です。信頼の再構築は多くの要因で左右されますが、この中でも報告は重要な役割を果たすことになるでしょう。

報告チームは、新たにアクセス可能になった豊富かつ多面的なデータを利用する必要があります。デジタルテクノロジーと分析スキルを利用することで、ビジネスを可視化させ、長期的価値を支える報告の洞察をステークホルダーに与えることができます。

報告においてこの役割を果たすには、財務リーダーは以下の3つの重要なアクションを検討する必要があります。

報告の作成と透明性に関する自身のアプローチを、同僚のものと比較してみる

報告に対するアプローチは、この分野の同僚やリーダーと比較する必要があります。これにより、主要なステークホルダーに長期的価値を伝達するための体系的なフレームワークを構築することに関する自分の考えを活性化させることができます。また、外部のステークホルダーと取締役会が情報を信用することができるよう、非財務的保障にどのようにアプローチするのかを検討する必要があります。さらに、支援プロセスとシステムを改善するため、リスク管理方法と機会を獲得する方法について検討する必要があります。

財務部門が新たなテクノロジーの発展をどう活用できるのかについて、実践的かつ説得力のあるビジョンを設定する

今後数年のインテリジェントシステムは、報告に関するプロセスとタスクにおいて役割が増大し、データから洞察を得る財務チームの能力を変えていくでしょう。インテリジェントシステムの可能性を実現するには、こうしたテクノロジーによって解決できる報告の問題をすぐに特定し、自分たちのアプローチをどのように変革できるか検討する必要があります。これにより財務部門は、変革に向けた説得力のあるビジョンと実践的なロードマップの両方が得られます。また、組織の抵抗を克服し、監督委員会や監査委員会といった主要ステークホルダーに働きかける際にも役立ちます。

データに伴うリスクの緩和と、データがもたらすチャンスの活用とのバランスを取る

「リスクとしてのデータ」と「機会としてのデータ」の間には重要なバランスが存在します。データの革新を進める一方で、データセキュリティの不備や顧客のプライバシーに対する脅威を回避する必要があります。これは、データに関して適切な組織内文化を構築することを意味し、行動規範とデータガバナンスのフレームワークにより裏付けされた明確なデータ戦略に全ての人が従う必要があります。また、データの保護とプライバシー規制のフレームワークをコンプライアンス活動として捉えるのではなく、データへの前向きなアプローチを採用する機会として再構成することを検討する必要があります。

サマリー

組織は、データを自在に利用して戦略的資産に転換することによって信頼を構築し、どのように長期的価値を構築するかを説明しながら報告の透明性を早急に構築する必要があります。

信頼を再構築するために、企業は新たなテクノロジーを利用してデータを整理・分析し、従来の会計スキルを超えた新たな能力を採用することで、価値を基準にした報告を作成する必要があります。

この記事について

執筆者 Peter Wollmert

EY Global and EY EMEIA Financial Accounting Advisory Leader

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