7 分 2017.03.09
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「持続可能な開発目標」を事業計画に取り入れるべき理由

執筆者

EY Global

複数の強みや専門性を兼ね備えるプロフェッショナル集団

7 分 2017.03.09

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企業は17の持続可能な開発目標を利用することで、成長を促し、リスクに対処し、資本を引き付け、理念にフォーカスすることができます。

2015年9月25日、国際連合(UN)が主導するプロセスにより、2030年までに貧困をなくし、不平等と不公正を撲滅し、気候変動対策に取り組むことを目指す 17のグローバルな持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、以下「SDGs」) を193の加盟国が採択しました。

SDGsは包括的な経済環境の実現、天然資源の減少、不安定な地政学的状況、環境の悪化、気候変動の多面的な影響など、広範な課題を対象としています。2030年までの包括的な経済成長のためのアジェンダが定義されていますが、これは世界中の企業、学界、非営利団体からの意見を取り入れて作成されました。

多くの企業は、環境、社会、経済の問題への取り組みを進めています。その上で、持続可能性を実現するための複雑な課題に対処するには、同業他社、業界・セクター団体、顧客、政府、非営利団体、そして社会との協力を通じた努力を拡大する以外に方法がないことに、大手企業が気付くようになりました。SDGsは世界的な協力と行動のための普遍的で先見的なフレームワークを提供し、すべてのステークホルダーを一つに結びつけ、課題への積極的な対処・解決を促すものです。

SDGsの達成を目指すにあたって、企業は大きな役割を果たすとともに、多くのメリットを得られる可能性があります。

ビジネスケース

企業は、希少な天然資源、低迷する金融市場、現地の購買力の限界、有能な人材の欠如など、成長のポテンシャルを抑制する課題に直面しています。成長、リスク、資本、理念という四つの主要テーマでこれらの課題に取り組むために企業がSDGsを活用できる、分かりやすいビジネスケースについて検討してみましょう。

成長の促進

しかし、地域レベルで行動を起こすためには、自社が事業展開する市場で業績を推進するのと同様に、目標達成に貢献する方法を特定する必要があります。

SDGsの目標8、9、12は、経済成長、雇用、持続可能な産業化、イノベーション、持続可能な消費と生産に言及していますが、他のSDGsの多くは、新市場へ拡大し、人材を引き付け、運営のリスクを軽減することにより、ビジネス上の利点をもたらすものです。

例えば、飲料会社が集水する地下水を供給して流域の環境改善に投資し、それによって水に不自由している地域の住民がクリーンな水を利用できる取り組みを進める場合、その戦略はSDGsの目標6(安全な水と衛生)と一致することになります。流域の近くで飲料製造の基盤を維持するために給水を確保する一方、事業を展開し、結果として地域社会でブランドを強化できる社会的ライセンスにも投資していることになります。

どの企業も、よりレジリエンスの高いコミュニティー、天然資源へのアクセス、教育を受けた健康な人々を労働力として活用したいと考えています。このような成果に向かって前進し、共有価値を生み出すことで、長期的に資本と株主価値を創出する能力を高めることができるでしょう。

 Business & Sustainable Development Commission の報告によると、SDGsに関連した持続可能なビジネスモデルは、2030年までに最大12兆米ドル相当の経済的機会をもたらし、雇用を最大3億8,000万人増やす可能性があることが明らかになっています。

リスクへの対処

自然、社会、金融、製造に関する資本が他の分野に流出している場合、企業は長期的に資本の創出を継続できないかもしれません。SDGsの17項目は、すでに企業や社会にとって課題となっているリスクの分野に対応したものですが、これらのリスクは対処しなければ存続・増長してしまう可能性があります。

サプライチェーンは特に気候変動や天然資源の枯渇の影響にさらされていますが、これはSDGsの目標12、13、14、15に対応しています。そして、平和と公正(SDGs目標16)、人や国の不平等(SDGs目標10)、一部地域における開発の遅れ(SDGs目標1、2、3、4)により、新興国市場のポテンシャルは抑制されています。ステークホルダーはこういったリスクの発生や悪化に対する企業の役割について説明責任を追及するため、これらを始めとするリスクに対処することはビジネス上で大いに意味があります。企業は、これらの分野のステークホルダーのニーズに応えることにより、事業を継続するための社会的ライセンスを維持することができるのです。

投資家は、投資決定にあたり「環境、社会、ガバナンス(ESG)」のリスクにますます注意を向けるようになっています。第3回EY投資家調査(2017年)では、脆弱(ぜいじゃく)なコーポレートガバナンス、劣悪な環境パフォーマンス、資源不足、気候変動、人権リスクが、投資家の意志決定を変える可能性が最も高い要素として挙げられています。

調査に参加した投資家たちは、投資の意思決定の全段階にわたり、さまざまな非財務情報を活用していました。SDGsにコミットすることを公表している企業は、戦略的優先事項をSDGsにリンクさせています。また、SDGsの進捗状況を測定、公表、報告することで、ESGリスクを管理し、ESGのパフォーマンスに関連した競争上の優位性を生み出す能力について投資家に強いメッセージを送っています。地域社会によるSDGsの達成を支援することは、投資家が自身のリスクを管理しポートフォリオを構築する機会にもつながります。

資本を引き寄せる

今後、SDGsを中心とした世界的な開発課題へと投資フロー(上場および非上場の両方)が向かうことが予想されます。国連は、SDGsの達成コストを年間約3.3〜4.5兆ドル程度と推定しています。私たちは、以下の実体験をもとに、革新的な金融モデルが今後開発されると考えています。

  • 気候にフォーカスした多国間上場ファンドを通じて、政府・民間セクターからの資金がプロジェクトに充てられた気候変動ファイナンス
  • 革新的な非上場金融商品(グリーンボンドの発行など)

世界銀行は115のプロジェクトを通じて235億米ドルを拠出し、SDGsに沿った課題の解決方法の特定に向けて途上国を支援しています。また最近、欧州の機関投資家から出資を得て、そのようなプロジェクトの資金調達を支援する、1億6,300万ユーロ相当の株式指数連動サステナビリティ債を発行しました。

自行のSDGsイニシアチブの一環として債券のアレンジを行ったBNP Paribasによると、債券の投資収益率は、Solactive SDG世界株価指数(社会的、環境的な持続可能性の問題について各業界で認知される有力企業で構成)の対象銘柄である企業の株価パフォーマンスに直接連動しています。これらのことから、SDGsに歩調を合わせたビジネスモデルを持つ企業が、新たな資金源から直接メリットを得られることが分かります。

理念にフォーカスする

SDGsは、世界中の多くの企業の理念に重大な影響を与える可能性があります。SDGsへの貢献は、あらゆるステークホルダーが共有できる価値を創出する一つの手段です。そのため共通の共有成果をめぐりステークホルダーを活気づける強い推進力として、企業は対応していくべきです。他者のための価値の創造、私たちが暮らす世界の改善、あらゆるレベルで組織をインスパイアすることに根ざした理念に企業がフォーカスするとき、利益を推進し、持続可能な価値を創造する能力が高まる可能性があります。SDGsにより企業は、イノベーションの促進要因となり、従業員の参画と意欲を促し、新たな市場とチャンスを切り開き、将来的に幅広いリスクから企業を守るような課題に自社の目的をフォーカスすることができます。

理念を活性化させ、共鳴し、最終的にポテンシャルを発揮するためには、その理念が事業にとって関連性が高く、実行可能であり、変革的なインパクトを持つものでなければなりません。SDGsは、ステークホルダーに深く関連する刺激的な方法で大胆な理念を定義し、理念を自社の戦略の基盤とし、長期的に株主価値を高められる前向きな変化のきっかけを作る上で、企業を支援します。

基本的にSDGsは、企業が社会的課題に取り組み、これを事業の成長と長期的な競争力を強化する機会として活用できる歴史的瞬間を提供してくれます。

企業が今すぐ取るべき六つの行動

1 特定とコミット

重要なステップは、目標が直接的および間接的に自社の事業にどのように関連しているか特定することです。企業は戦略的アプローチを取り、自社の優先事項を関連するSDGsと一致させ、顧客、従業員、ステークホルダーとよりよい関係を築き、前向きな影響を生み出す必要があります。

企業が検討すべきこと:

  • 長期的にリスクと機会に関して最大の影響をもたらし、自社が目標に向かう上で貢献力が最も強いSDGsを特定する
  • ビジネスモデル、調達戦略、製品・サービスの変更を通じて影響を調整するために利用可能な手段を決定する
  • SDGsに公にコミットし、関連する目標に取り組む
2. 目標とKPIの設定

SDGsの17の目標とともに、より具体的な、世界規模の、普遍的に適用可能な169のターゲットが掲げられています。企業が優先すべきSDGsを特定し、その戦略の検討を始めるにあたり、進捗状況を監視・伝達するための明確な目標と重要業績評価指標(KPI)を設定する必要があります。

企業が検討すべきこと:

  • 関連するSDGsと密接な整合性のある目標とKPIを設定する
  • 既存の目標、監視、測定方法と、SDGsを踏まえた新たな目標およびKPIの整合性をとる
3. サステナビリティと企業戦略を目標に向けて調整する

最も関連性の高いSDGsを特定し、目標とKPIを設定するプロセスに取り組むことにより、既存の慣行と問題・目標との整合性を再評価することが企業にとって重要です。

企業は以下のような分野を検討する必要があります。

  • ビジネスモデルを調整できる
  • 製品またはサービスが開発されている
  • サプライチェーンが大きく変化している
  • イノベーションと研究開発が再注目されている
  • 持続可能性戦略が、企業目標とSDGsの両方を達成するように再調整されている
4. ビジネスチャンスを創出する

SDGsは、売上を生み出し、事業成長の機会をもたらし、製品・サービスのイノベーションを促すためのフレームワークを提供します。目標に向かって進む原動力となる新たなビジネスモデルや製品・サービスを特定することで、よりレジリエンスの高い豊かなコミュニティーが出現し、市場の拡大や新市場の確立が実現し、消費者基盤を拡大できる可能性があります。

企業が検討すべきこと:

  • 持続可能な方法で開発された革新的な製品・サービスのメリットを得られる可能性のある、恵まれない地域や社会的セグメントを特定する
  • 教育、能力開発、労働の機会に投資し、環境を保護しながら地域の経済力を高めることにより経済を刺激する
  • エネルギーや水の効率性、低炭素、循環型経済の理念を通じて、経済成長と天然資源・材料の過度な利用との関連性を弱める
5. コラボレーション

1社の企業がこれらの問題のいずれかを自社だけで解決するのは難しいでしょう。セクター内でも、各業界間でも、いずれにおいても協力は不可欠です。SDGsへの取り組みとその拡大を成功させる上で、協力が重要な実現要因となるでしょう。

企業が検討すべきこと:

  • 相互に有益なソリューションを実現し、ネットワークを活用し、規模を確保し、責任を共有するために、同業他社、顧客、供給業者、学界、非営利団体や業界全体との協力の機会を特定する
  • 政府、都市、市民社会と協力し、開発、安定、商取引の促進に向けて企業の財務的、技術的、人的資源を展開する
6. 測定、評価、報告、伝達

企業はまた、自社の活動の影響、特にSDGsに関連する目標への取り組みの進捗状況について説明責任を負うことになるでしょう。SDGsをコアビジネスや報告のサイクルに統合することで、企業は目に見える共有価値の創出に集中できるようになります。

企業が検討すべきこと:

  • 既存の報告活動とコミュニケーションをSDGsに合わせて調整し、SDGsに基づく期待に照らしてパフォーマンスについて議論するとともに、開示情報をSDGsの表現に合わせ、ステークホルダーの共通の対話を確保する
  • SDGs問題の管理を日常的な事業上の意思決定に統合するためのシステムを開発する

SDGsにより新たな考え方が求められる可能性があることを私たちは認識しています。目標は複雑で相互に関連しており、その実現は企業、政府、市民社会の新たなパートナーシップに左右されるかもしれません。しかしながら、企業が総合的な方法でSDGsに貢献できる方法について理解を深めるための有用なツールが登場しています。ビジネスモデルや製品・サービスだけでなく、事業を展開する地域社会も変革できる持続可能な戦略の策定方法に関して、内外のステークホルダーと関わるためのロードマップをSDGsが企業に提供してくれると期待しています。

サマリー

SDGsは、ビジネスモデル、製品・サービス、事業を展開する地域社会を変革できる持続可能な戦略の策定方法に関して、ステークホルダーと関わるためのロードマップを企業に提供します。

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