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国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、「初期のサステナビリティ基準のすべての技術的内容について最終決定を下した」こと、本年6月までに最終基準を発行する予定であり、これらの基準が2024年1月から適用予定であると発表しました。
このISSBの発表は、2023年2月にモントリオールで開催されたボード会議の決定に基づいており、20か国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)をはじめとする国際的な機関はこれらを歓迎し、基準の最終化とISSBの「気候から先の」活動に期待していると述べました。また、証券監督者国際機構(IOSCO)もISSBの発表を歓迎するとし、ISSB基準に関する「独立評価」を年内に終了する意向を明らかにしました。
また、メディアの報道によると、世界第二位の経済大国である中国は、近々、上場企業に対してサステナビリティ報告の義務化を導入する可能性があるとのことです。
サステナビリティレポートに関するグローバルな政策動向の詳細を以下に示します。
ISSBは、IFRS S1号 サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(S1)及びIFRS S2号 気候関連開示(S2)のレビューを予定通り完了したことを発表しました。
これにより、S1及びS2はIFRS財団の正式な審議及び承認プロセス(書面投票に向けたプロセス)に移行します。最終基準は2023年6月に公表される予定であり、2024 年 1 月 1 日以後開始する年次報告期間から適用される予定です(すなわち、2025年に行われる報告から)。
この発表はIOSCO及びG20を含む国際的な機関に歓迎され、ISSBの活動に対する政府の継続的な支援が示されました。IOSCOのサステナビリティタスクフォースの議長であるRodrigo Buenaventura氏は、IOSCOが今年中にIFRSサステナビリティ開示基準の独立評価を完了する予定であることを明らかにしました。
その他、ISSBの注目すべき動きは以下の通りです。
ISSBの次のステップは以下の通りです。
米国では、環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題は、依然として非常に政治的な問題です。フィナンシャル・タイムズ紙の調査によると、米国の12の大手金融機関が、ESG投資に関する「見解の相違」や「要求の競合」を重要な財務リスクとして挙げています。米国での議論の中心は、ESG投資が自由市場原理に反するかどうかであり、今月のニューヨーク・タイムズ紙(How Environmentally Conscious Investing Became a Target of ConservativesとOn Wall St., ‘Socially Responsible’ Is Common Sense. In Congress, It’s Political.)とワシントン・ポスト紙(The conservative battle against ‘woke’ banks is backfiring)がこの議論をよく捉えています。
2023年3月6日、エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党-マサチューセッツ州)とダン・ゴールドマン下院議員(民主党-ニューヨーク州)を中心とする民主党議員数十名は、証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長に対し、気候変動開示規則の最終化と、最終規則において温室効果ガス排出量(GHG)スコープ3の開示義務化の維持を求める文書を提出しました。
一方、先月、下院金融サービス委員会の新委員長であるパトリック・マクヘンリー下院議員(共和党-ノースカロライナ州)と上院銀行住宅都市委員会の有力メンバーであるティム・スコット上院議員は、SEC委員長に対して気候変動開示規則の策定プロセスに関する情報を要求する書簡を送りました。この書簡では、昨年ウェストバージニア州が環境保護庁を相手取りGHG排出規制に関して争った最高裁の判決を引用して、この規則案が「規則の策定プロセスの濫用」であるとして、この規則が最終決定された後に直面するであろう法的課題を予見しています。(注:最高裁の判決は、連邦のESG規則に対する主要な議論の1つとして浮上しています。)
SECは、気候関連開示規則の最終版と人的資本管理開示規則の草案を2023年4月末までに(ただし、このタイミングがずれる可能性もあります)公表する予定です。
一方、ブラジルでは、証券取引委員会のESG関連開示規則(ポルトガル語のみ)が2023年1月2日に施行されました。同規則は、上場企業に対し、コンプライ・オア・エクスプレイン(訳注:原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)でESG要素を開示することを求めています。
欧州連合では、欧州委員会金融安定・金融サービス・資本市場同盟 総局(DG FISMA)が、4月中旬に第一弾の欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)について4週間のコンサルテーションを開始する予定です。
欧州委員会は、この第一弾の(セクター横断的な)ESRSの最終版を2023年6月に採択する予定です。第二弾のESRSは、セクター別基準と上場中小企業向け基準で、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)が起草中です。この第二弾の公開草案に関するコンサルテーションは2023年4月または5月に開始予定です。
一方、EFRAG事務局は、12月の会議を経て、財務報告とサステナビリティ報告情報のコネクティビティに関する新しい共同研究プロジェクトを提案しています。(注:このプロジェクトのディスカッションペーパーの提案時期は、2024年下期及び2025年下期が含まれます。)
ブルームバーグ・ニュースの報道によると、中国は中国国内の上場企業に対してサステナビリティ報告の義務化を導入する予定であり、規制当局は、強制的な枠組みに移行する前に、まずコンプライ・オア・エクスプレインで規則を導入する可能性があるとのことです。昨年、中国証券監督管理委員会の方星海副主席は、サステナビリティ報告の義務化規則の策定は 「次に検討すべきこと」である考えを示しました。
日本では、岸田文雄首相が3月2日、IFRS財団の幹部と会談し、「IFRS財団のサステナビリティ開示基準の策定における弛まぬ努力に敬意を表し、気候変動に関する国際開示基準の開発において、ISSBが達成している進展を歓迎する」と表明しました。
一方、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、日本のサステナビリティ開示基準の策定に関するプロジェクト計画を発表しました。SSBJは、2024年3月までに公開草案を、2025年3月までに最終草案をそれぞれ発行する予定です。
日本の金融庁による新しいサステナビリティ開示義務化規則が3月末から適用されます。
今後90日以上にわたって注目すべき主な日程は以下です。
サステナビリティ保証の現状
国際会計士連盟(IFAC)のシリーズの最新版では、調査対象企業の64%がサステナビリティ情報の一部について保証を取得していますが、ほとんどの保証契約は温室効果ガス指標に焦点を絞ったままです。加えて、保証の80%は限定的な保証です。合理的な保証(すなわち、財務諸表監査で一般的に提供される保証のレベル)を提供しているのはわずか7%です。
The State of Play in Sustainability Assurance
IFRSサステナビリティ・シンポジウムで得られた7つの重要なポイント
2023年2月17日、IFRS財団は初のサステナビリティ・シンポジウムを開催し、世界のステークホルダーを招集し、ISSBのこれまでの進捗や今後数か月及び年間の課題について議論しました。
Seven key takeaways from the IFRS Sustainability Symposium
2021年10月22日に欧州監督当局がサステナブルファイナンス開示規則のドラフト版細則を公表
2021年10月22日、欧州監督当局より、欧州の資産運用会社等に対する開示を義務付けた「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」における詳細な内容を定めた「ドラフト版細則(Draft Regulatory Technical Standards; Draft RTS)」が公表されました。
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