⾃律型農業
農業は技術先進型のセクターとしては認識されていませんが、⽣産コストの⾼騰や⽣産性の課題によってイノベーションの波に乗るよう迫られています。国連の推計によると、世界の人口は2030年には85億人に達することが予測されています。また世界の飢餓人口はすでに8億1500万人に達しているとされています。
貨物運送業者と同じく、農業従事者の環境も⾃動技術に適しています。⼀般的に車両の通行がない農業の現場では、安全なエリアであるジオフェンシング(仮想的な境界線)を容易に設定できます。南カリフォルニアやインドなど様々な市場で⾃動⾛⾏トラクターなど農業機械の実証試験が⾏われており、市場調査レポートによると、⾃律型農業機械の世界市場は 2024 年には 180 億米ドルに拡大すると予想されています。
「ムーブメント(移動)」はスマート農業の一つの側面にすぎません。 — IoTに完全に対応した農場を実現できて初めて、真の価値を得ることができるからです。 — とはいえ、自動運転車両は私たちが最初に手にすべきピースの一つといえます。必要なセンサーが搭載された自動運転車両は未来の農業ネットワークに不可欠なノードになるでしょう。農業が基幹産業である国には、スマートコネクテッドビークルの技術で⽣産性向上とコスト削減を実現できる多くの機会があります。
資源の効率的利用は、気候変動に対する影響を削減することができます。オックスフォード大学のFood Climate Research Networkでは現在、ヒトによる二酸化炭素の排出量のうち食糧生産がその 20%–30% を占めていると推定しています。
新しい所有モデル
都市部の「MaaS(Mobility-as-a-Service)」と同様に、郊外で起きている「Movement-as-a-Service」への移行を最大限に活用するには、新たな所有モデルへの適応が求められます。しかし、シェアード・オーナーシップという方法により、貨物運送業者や農業従事者が特に資産活用に関して抱えている財務上の問題に直接対処できるため、この新たなモデルへの移行はB to C向けアプリケーションではなく、B to B向けアプリケーションにおいて、より早い段階で実現されるでしょう。
陸上貨物運送にとっての長年の課題はバックホール(中継地点)に伴う費用や遅延です。貨物の配送を終えたトラックが、次の集荷場所から遠い場合はどうしたらよいのでしょうか。選択肢は、次の集荷のために空のまま走らせるか、現地で貨物の集荷を待っているか、いずれの方法も資産活用の最適化にはつながりません。
農業でもそれは同じです。数十万ドルもする特殊な機械設備を購入しても、それぞれの機械の運転手がそれを操作する期間は1年のうちわずか数週間で、あとは使用せずに休眠状態です。
いずれの場合も、シェアード・オーナーシップの⽅法で使⽤頻度を上げることができます。あるオペレーターが使⽤した共有トラックを、これから集荷のある別のオペレーターがピックアップできるため、バックホール(中継地点)での待機や空になった戻り便を待つ必要がありません。農業従事者の場合は特殊な機械設備を共同所有することで全体の保有数を減らし、これを購⼊する資本コストの削減も可能になります。
プラットフォームとマーケットプレイス
スマートシティ・アプリケーションを対象としたプラットフォームやマーケットプレイスは、こういった機会にも問題なく機能すると考えられ、より早い段階で投資利益率(ROI)をもたらす可能性があります。タクシーや⾃動⾞と同様にトラックやトラクターにもデジタルIDを付与することができます。また空港や電⾞の駅への乗り付けと同様に、ブロックチェーンを⽤いたスマートコントラクト(⾃動契約)を貨物運送のマイレージや耕起作業にも適⽤することができます。
すべてのトラックにデジタルIDがあり、ブロックチェーンに登録されていれば、往復ではなくポイント・ツー・ポイントの貨物運送が可能になります。現在でもカー・シェアのプラットフォームから乗り捨て(ワンウェイ)利用の予約が可能なように、新たなB to B向けマーケットプレイスやプラットフォームから貨物便のワンウェイ利用を予約することも可能になるでしょう。