オープンバンキングは、金銭的利得を解除する鍵となるでしょうか?

執筆者

Hamish Thomas

EY EMEIA Payments Leader and UK Advisory Banking Technology Leader

Transformation leader in payments and open banking. Passionate about technology’s potential to create opportunity and manage risk. Optimistic runner. Film enthusiast.

Wayne Brown

EY UK Advisory Digital Banking Operations Leader

Transformation leader in digital operations, platforms and open banking. Passionate about combining technology and operations for customer-centricity. Loves sport. Enjoys cooking. Beatles aficionado.

8 分 2019.04.24

銀行業が急速にデータビジネスになるにつれて、セキュリティが大きな問題となります。ですが、金融サービス企業はメリットの提供に注力すべきでしょうか?

電話をタップすれば、あなたの使用習慣に合わせてガス・電力のプロバイダーを、あるいはブロードバンドのプロバイダーを自動的に変えてくれるという、あなたのお気に入りブランドのアプリを想像してみてください。あるいはさらに、あなたにより安い自動車保険を見つけてくれるとしたら。アプリがあなたの貯金も管理し、食料品の支払いもし、ウェブサイトのサブスクリプションも更新してくれることを想像してみてください。

そのようなブランドは驚くほど便利で、強力です。そして、オープンバンキングのおかげで、今やどんなブランドもそのようなブランドになりえます。欧州での改正決済サービス指令(PSD2)の導入により、顧客は、承認されたいずれのプロバイダーにも、サービス提供のため自身の銀行データへのアクセスを許可することができます。

このEU指令は、「オープンバンキング」を可能にするオープンAPI、すなわちアプリケーション・プログラミング・インターフェースへと向かう広範なグローバルトレンドの一部分です。金融サービスにおける競争の活性化を目指したオープンバンキングは、銀行業をはるかに超えたイノベーションと機会を生み出し始めており、あらゆる取引ベースの、そして洞察ベースのサービスが運営される方法を変えています。この新エコシステムの頂点に立つのが銀行です。

銀行業は、この機会によって変容し、顧客との関係性を深め、あらゆる支出と金銭管理の選択肢に対し会話の機会を生み出すことができます。

PSD2によって、消費者は今では自身のデータを所有しています。オープンバンキングが契機となり、銀行やフィンテックはそのようなデータを有用で意義のあるものに変えていきます。
Anita Kimber
Digital and Innovation Leader, EY UK Financial Services Advisory
(Chapter breaker)
1

第1章

データシェアリングによって、業界の境界線がなくなってきています。

取引データから生まれた洞察によって、金融の垣根を越えた数多くのサービスが生まれます。

銀行は、巨大な新市場を発展させる可能性を秘めた、金融サービスを超えたはるかかなたへとすでに動き始めているプラットフォームベースの取引関連サービスの将来へと続く道に立っています。

オープンバンキングのイノベーションは、すでに、全世界で企業と顧客の活動を変容させています。

欧州で、大きな混乱と機会が生じるきっかけとなったのが、2018年1月に欧州で導入されたPSD2です。PSD2は、承認された第三者が同意を得て支払者の口座にアクセスできるように、決済指図伝達サービスと口座情報サービスを規定します。

中国、そして極東から米国、オーストラリア、カナダに至るまで、オープンバンキングはお金の管理をディスラプトしています。ドイツはすでにPSD2を導入済みですが、オーストラリアは2019年に新規制を導入する予定です。その他、中国などの国々は、自発的なアプローチをとっています。

中国の非常に革新的な市場で活動する微信(ウィーチャット)のような非金融サービスは、金銭管理とその他の製品やサービスを統合する機会を駆使しており、将来の銀行の役割に疑問を投げかけています。

ビジネス顧客にとって、この新たな景観は、銀行業や融資にとどまらない、キャッシュフローや給与計算サービス、公共料金、保険、不動産管理といった第三者を通じたサービスへの容易なアクセスを意味します。

消費者の領域においては、オープンバンキングは、公共料金や保険、そしてもしかしたら旅行やエンターテインメントといったものまで、すべてをつなぐことになるでしょう。

成長の機会は計り知れません。アリペイなどのグローバルなプラットフォームがすでに出現し、決済がマルチサービス・コンシューマー・プロポジションの中核となっています。中国の人々は、実際には決済ではなく、統合APIエコシステム、すなわちオープンバンキングによって支えられるたくさんの活動をしに、そこへ行きます。

あなたの銀行取引を確認できるデーティングアプリを想像してみてください。ある登録者はミシュランのレストランとオペラにお金を使います。もう1人はピザとネットフリックスに消費します。もしかしたらこの2人の相性はよくないかもしれません。
Tom Bull
EY FinTech strategy director
(Chapter breaker)
2

第2章

銀行はデータあるいは関係のいずれに注目すべきでしょうか?

セキュリティと感情の両方が成功のカギになるでしょう。

金融機関が監督するエコシステムは拡大するでしょう。そして、非金融サービスにとっての入り口は、顧客のエコシステムにおける 「メンバーシップ」を許可する金融サービス関係を通じたものとなるかもしれません。

銀行が既存の顧客と有している関係は、そのような入り口を支配するための新たな機会と課題を提示します。

新たなプレーヤーがオープンバンキングのプラットフォームに参戦できる今、既存のプレーヤーには、自らの利点を最大限に活用する絶好のチャンスが訪れています。

銀行は、データセキュリティを強調できる立場にいます。新興の超流動的な市場では、すべてのプレーヤーが銀行によって管理されるデータに頼り、銀行は新たなエコシステムの中心となります。

銀行は、APIを通じてデータにアクセスする顧客の承認した第三者と情報を共有してはいますが、やはり金融取引の拒否や不正取引に対して責任を負います。

この重大な責任は、銀行にとってセキュリティ慣行や不正防止慣行について顧客に強いメッセージを発していくためのチャンスでもあり、確立したブランドに対する信頼をゆるぎないものとしていくことができます。

英国の大手銀行の1社は、オープンバンキングキャンペーンを開始する際このチャンスを利用しました。APIモデルのセキュリティ側面に着目したことによって、顧客がオープンバンキングを享受するために第三者に認証情報を提供する必要をなくしたのです。

「セキュリティは銀行業において前提条件でなければなりません」と、EYデジタル・イノベーション・リーダーのAnita Kimberは述べます。「大きな影響を与えるのは、顧客ベースに提供するメリットと結果なのです」

(Chapter breaker)
3

第3章

顧客にメリットを提供するブランドが勝ちます。

プラットフォームベースの取引サービスを推進しているのは利便性です。

生活のあらゆる側面でデジタル化がもたらすパーソナライズされた、つながった対話により、「あちこち探しまわる」手間は不要となり、顧客は、より多くの情報に基づいた視点から金銭的な望みを見渡すことができます。

オープンバンキングを通じたサービスの選定と提供の自動化によって、料金比較サービスが生まれ、金融サービスは利益重視の市場へと移り変わります。中国では、セルフサービスの生命保険商品がすでに「代理店」モデルを覆しています。この中国市場は2015年上半期で350%成長し、市場シェアの3.5%を獲得しています。

セキュリティ問題の克服ではオープンバンキングのメリットと利便性を推進するブランドが、より優位に立つかもしれません。結局、中国の消費者は、オープンバンキングを話題にしません。ただ、アリペイやテンセントといったブランドが提供してくれるものが好きなだけです。

ビジネス顧客、特に独立したファイナンス機能を持たない小企業にとっては、会計プラットフォームの統合によってこのようなメリットが生じるかもしれません。デジタルによってアドバイスされたプラットフォームは、問題を特定するだけでなく、新たな物件購入の際の保険や、ローンの最適な時期といった機会を見つけ出し、キャッシュフローを検査することができるでしょう。

企業だけのメリットにとどまらず、そのようなプラットフォームは、例えば、銀行データを会計・税務申告アプリに統合してデジタル税務申告を容易にするなど、必ずしもビジネスの需要によって生じるのではない、より幅広い利得をもたらしてくれるかもしれません。このようにして、政府に対しては効率化による削減が、社会全体に対しては透明性というメリットがもたらされます。

消費者にとっても同様に、利便性のみが唯一の利点ではありません。オープンバンキングのエコシステムによって発展したデジタル化された顧客確認(KYC)セキュリティ、例えば、データベースに基づく写真付ID認証などにより、現在パスポートや他の写真付身分証を持っていない人が銀行サービスや取引サービスにアクセスすることができます。

これらの手段は、高額ではありますが、金融包摂を大きく前進させます。「銀行口座を利用できない」中小企業は、新興国の金融サービスプロバイダーにとって大きな成長機会です。新興国では、経済的に排除された企業の40%が融資を得ようと奮闘しています

インドなどで起こっている通貨のデジタル化によって、以前は銀行口座を持たなかった消費者が、国の支援を利用できない保険などのオープンバンキングが支援する商品をどんどん手にするようになっています。

このような広範囲に及ぶメリットによって、老舗の金融サービスブランドは、別の場所で成長を追い求めながら、より成熟した市場では信頼をさらにゆるぎなくしていくことができます。ブランドをスピンアウトし、より直接的に再構築を選択していく動きもあります。すでに見てきましたが、ユーティリティーセクターの英国ガスブランドHiveは、スマートなつながるホーム製品・サービスを提供し、製品よりもメリットを重視しています。

この新しい市場で真の勝者となるのは、製品本位とは対照的な、顧客のことだけを考えるこのような企業なのです。
Wayne Brown
Executive Director, Digital Banking Operations lead in the UK.

ソーシャルメディアによる投稿を分析した結果、オープンバンキングをめぐるネガティブな消費者感情の48%はデータ保護とサイバーセキュリティの懸念によるもので、オープンバンキングについての全世界のポジティブな投稿の40%は、イノベーションと顧客のコントロールに注目したものであることが分かりました。

データの管理者としての自らの役割を強調することのできた銀行は、顧客の責任の重大さについて懸念が提起されたドイツなどの一部の地域で顧客に安心感を与えることができます。

変化し続ける利益重視の市場について顧客に教育することのできた銀行は、英国、米国、オーストラリア、またシンガポールのような懐疑的な市場に至るまであらゆる調査対象市場で顧客感情を最もうまく利用できるかもしれません。

保険市場でのウェアラブルな活動トラッカーの成功から、消費者が、直接的なメリットによってセキュリティ上の懸念を克服していることが分かります-そして、オープンバンキングのさらに楽しみなメリットはまだこれから出てくるのです。フィンテックは、現在、アカウントとデータの集約に注力しており(23%)、自動購入能力分析などの変革の可能性を秘めた提案の開発はより少なくなっています(6%)。

デジタル化によりキャッシュ離れが進み、取引が追跡可能となるにつれて、支出パターンの分析やロイヤルティー、バンドリングのメリットの生み出す価値によって、企業や消費者はオープンバンキングを信頼し、利用していくようになり、銀行は新たな収益源を育てることができます。

金融サービスは、金銭管理が企業と消費者の生活のあらゆる側面にデジタルでつながっていく新たな時代に入っています。ファーストムーバーは、すでにこのチャンスをつかみ、ベンダー、小売業者、その他のサービスプロバイダーと連携し、金融機関が監督する取引のエコシステムの基盤を築いています。

あらゆる角度からデジタルトランスフォーメーションの可能性を探る

EYのデジタル変革についてのインサイトでは、貴社が新たな価値を発見し、未来を切り開けるよう支援します。 

詳しく知る

サマリー

テクノロジーがセクターの境界線をあやふやにし、グローバルな金融サービス市場は様変わりし、企業と消費者に金銭管理の方法を根底から変える新たなメリットを生み出しています。

この記事について

執筆者

Hamish Thomas

EY EMEIA Payments Leader and UK Advisory Banking Technology Leader

Transformation leader in payments and open banking. Passionate about technology’s potential to create opportunity and manage risk. Optimistic runner. Film enthusiast.

Wayne Brown

EY UK Advisory Digital Banking Operations Leader

Transformation leader in digital operations, platforms and open banking. Passionate about combining technology and operations for customer-centricity. Loves sport. Enjoys cooking. Beatles aficionado.