3 分 2019.12.26
太陽の光をバックに白いウィングスーツを着て飛んでいる人物

世界的に不確実性が高まる中、日本のビジネスリーダーは引き続きM&Aの機会を狙う

執筆者

Vincent Smith

EY Japan Regional Transaction Advisory Services Leader

ヴィンセント・スミス / オーストラリア人。実務経験豊富な企業リストラクチャリングの専門家。職場におけるダイバーシティー・インクルーシブネスの代弁者。

田村 晃一

EY Global Transaction Advisory Services トレードルート統括、 EY Japan TAS マーケッツ統括

世界を舞台に 投資銀行・M&A アドバイザリー、及びプライベートエクイティファンド投資業務の経験を持つグローバルプロフェッショナル。グローバル人材・リーダーシップを育てるべく人材育成にパッションを持つ。

3 分 2019.12.26

急務となっているテクノロジーや人材の獲得が買収を後押し

EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB : Global Capital Confidence Barometer)によれば、日本企業の52%が投資総額の4分の1以上をテクノロジー関係、特に売上成長を促進するソリューションに関連するテクノロジーに配分する予定と回答しています。日本企業のほぼ半数(49%)が買収、ジョイントベンチャーまたは外部ベンチャーファンドを活用したテクノロジーへの投資を計画しています。また、日本企業の回答者のほぼ3分の2(65%)が適正なスキルや人材を確保することの難しさを経験しています。

テクノロジーへの投資に関して、買収か自社開発かという選択に対し、ほとんどの企業が、買収を選ぶ傾向があります。また、人材不足により成長が妨げられてしまうため、買収により将来の成長を支えるために必要なスキルを有する人材を確保することが、現在のM&Aを語る上で不可欠な要素になってきています。

経営層の多くは景気減速を脅威とみなしていない

仮に短期あるいは中期的に景気減速が起きたとしても、それが脅威とはみなされません。日本企業の経営層の74%が、景気が減速するとは思わないと回答しています。

企業は経済に対する信頼感を損なうと捉えられかねない、貿易および関税の問題に適切に対処しています。日本企業の経営層の41%が自らアクションを起こし、サプライチェーンの再構成や生産設備の移転などにより、貿易および関税の問題の影響を緩和することを計画しています。これ以外の企業でも、30%が急速に変化する状況への対応策を積極的に検討しています。

競争入札や敵対的買収提案の多様性が見込まれる

強気の景気見通しを背景に、2020年に向けてM&A市場は競争が一層激しくなっていくことは、ほぼ間違いないでしょう。日本企業の78%が今後1年間で敵対的買収提案や競争入札が増えると予測しており、また同じく80%が、プライベートエクイティが主な買い手になると予測しています。

また、日本企業は超大型(100億米ドル超)案件が増えると予測しています。約4分の3(76%)がM&A活動全般は鈍化しないと見込んでおり、ほぼ同数の日本企業の経営層(73%)がクロスボーダー案件の増加を予測しています。

競争入札

78%

今後1年間で敵対的買収提案や競争入札が増加すると予測した日本企業の割合

米国が首位に返り咲き、英国は投資家にとって依然として魅力的であり、日本は大規模なカーブアウトが活発化

最新のEYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB)によると、回答した日本企業の半数以上が今後12カ月間でM&Aの候補案件が増加すると見込んでいます。

ここ数年、日本市場は、大手コングロマリット(複合企業)グループからの大規模なカーブアウト(事業部門の切り出し・独立・分社化)をいくつか経験してきました。今後、数年間で脱コングロマリット化とカーブアウトは増加するでしょう。この日本でのまたとない機会に注目するグローバルおよびアジア地域のプライベートエクイティ投資会社が、日本を中心にアジア地域に向けた投資枠を増加させるに従い、買収価格をめぐる競争はますます厳しくなってきています。上昇する評価額を正当化して案件投資額を投資後に価値化するなど競争力を維持するために、価値の創造、事業へのオペレーションとEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の改善および最適化を実行することが、大規模なカーブアウト取引への投資における重要な差別化要因であり、成功要因となります。

最新のCCB調査の結果、グローバル企業は、米国を最も望ましい世界的なM&Aの投資先候補国と考えていることが分かりました。また、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う不確実性が続く中で、英国の投資先としての魅力度は高く、グローバルな投資家の間では望ましい投資先候補国として第2位となっています。日本企業が回答した投資先順位は、日本(前年度1位)と米国(2位)に続いて英国(3位)、中国(4位)、フランス(5位)となっています。

多くの主要経済大国では貿易問題が現在も起きていますが、それらを要因とするM&Aの計画を棚上げするといった事態には至っていません。これはつまり、変革の必要性が、不確実性リスクを上回っているということなのです。こういった状況が続く限り、旺盛なM&Aの需要は続くでしょう。こうして行われるM&Aは、引き続き事業ポートフォリオを再構築し、CEOが取り組むべき変革を加速するための強力な手段となります。

M&Aに対する意欲

57%

12カ月以内にM&Aを積極的に実施する予定と回答した日本企業の割合

明確な企業理念と長期的な価値創造

企業理念および社会的影響(ソーシャルインパクト)について、取締役会の議題の中で重要度を増しており、企業が何をもって成功を測るかという考え方を根本的に変えつつあります。日本企業の約85%(グローバルでは約84%)が、社会的価値を報告する際の測定基準をすでに有している、または来年度には有する予定と回答しています。

ビジネスリーダーたちは、より広範な社会的責任のエビデンス(根拠)の提示という投資家の要求に、これまで以上に注意を払うようになってきています。良き企業人である必要性を認識し、それに応えようとしています。なぜなら、ビジネスおいて取るべき立場を誤れば、時代の流れに逆行することになると分かっているからです。

サマリー

EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB : Global Capital Confidence Barometer) (PDF)は、経済見通しに対する企業の信頼度を評価し、キャピタルアジェンダ(資本課題)の管理方法における取締役会の傾向と取り組みについて明確にします。 

この記事について

執筆者

Vincent Smith

EY Japan Regional Transaction Advisory Services Leader

ヴィンセント・スミス / オーストラリア人。実務経験豊富な企業リストラクチャリングの専門家。職場におけるダイバーシティー・インクルーシブネスの代弁者。

田村 晃一

EY Global Transaction Advisory Services トレードルート統括、 EY Japan TAS マーケッツ統括

世界を舞台に 投資銀行・M&A アドバイザリー、及びプライベートエクイティファンド投資業務の経験を持つグローバルプロフェッショナル。グローバル人材・リーダーシップを育てるべく人材育成にパッションを持つ。