4 分 2020年5月6日
株価ボードの前で株価指数を見て反応を示す投資家

M&Aによって価値の創造を目指す日本企業

執筆者 Vincent Smith

EY Asia-Pacific Strategy and Transactions Deputy Leader

Experienced executive management, and corporate restructuring professional. Champion for diversity and inclusiveness in the workforce.

4 分 2020年5月6日

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日本企業の経営層は、経済の回復は緩やかだと想定するものの、中長期的に見てM&Aへの意欲は依然として旺盛としています。

日本を含むAsia-Pacificのビジネスリーダーは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらしたサプライチェーン、売り上げ、収益などへのさまざまな影響への対処に注力する一方で、新型コロナウイルス感染症危機(以下、コロナ危機)後の状況を見据えて資本配分やM&A計画の再構築に取り組んでいます。日本を含むAsia-Pacificにおける企業経営層900名を対象に行われたグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(pdf)(グローバル全体では2,900名以上を対象に実施。調査実施期間:2020年2月4日~3月 26日)において、日本を含むAPAC企業の回答者の圧倒的多数(日本企業96%、APAC全体94%)が、新型コロナウイルス感染症は、サプライチェーンへのディスラプションや、消費の減少という形で、世界経済に深刻な影響をもたらすと予想しています。

これは、Asia-Pacificの回答者が、グローバル企業全体の経営層(73%が影響は深刻と回答)よりも、悲観的であることを示しています。一方で、世界経済に対する危機感と比較すると回答割合はやや低かったものの、Asia-Pacificの経営層の58%、日本企業の経営層では70%が、コロナ危機が自国の経済に大きな打撃を与えると回答をしています。

セクターの観点から見ると、グローバル全体およびAsia-Pacificの経営層の回答者のほぼ全員が、新型コロナウイルス感染症が収益性の低下を引き起こすであろうと回答しています。さらに日本企業の経営層の回答者の半数(50%)は、景気回復は緩やかで、2021年までかかると予想しています。企業による経済成長予測については、日本企業の経営層の回答者93%が経済成長に明るい見通しを抱いていた1年前と比較して大きく変化しています。今回の調査では、2月上旬には明るい見通しを持つ回答者は23%まで著しく落ち込み、さらに2月19日以降には13%にまで低下しました。

企業の経営層は、今回の危機へ対応するためにオペレーティングモデルの見直しを行っています。世界の多くの地域で企業活動の停止が相次いでいる中で、多くの企業でそのサプライチェーンの脆弱性が露見しています。3分の2(67%)のAsia- Pacificエリアおよび4分の3(74%)の日本企業の経営層が、既存のサプライチェーンの再構築に向けて動き出していると回答しています。

同時に、世界各国の政府は、新型コロナウイルス感染症の影響を最小限に抑えていくために、積極的に景気対策を打ち出しています。日本を含むAsia-Pacificエリアの各国政府では、自国経済の強化を目指して、公的援助や事業支援を提供しています。

サプライチェーンの再構築

74%

既存のサプライチェーンの再構築に向けて動き出していると回答した日本企業の割合

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次の段階に備える

企業経営層は、新型コロナウイルスの感染拡大という、これまで経験したことのない、国際的な公衆衛生上の緊急事態への対応に注力していますが、また同時に、この危機が収束した後について考え始めています。

企業経営層は、コロナ危機の影響に緊急に対処しなくてはならない状況ですが、それでも今、成長の将来展望を見直し、企業にとっての今後の「ニューノーマル」を考えていく必要があります。主に中国、東アジア、東南アジアなどのAsia-Pacificの国々が、危機収束の方向に徐々に動き出している中で、企業は俊敏性(アジリティ)、柔軟性(フレキシビリティ)、回復力(レジリエンス)を企業戦略に取り入れており、多くのセクターで企業が大規模なトランスフォーメーションを行うことが予想されます。これは日本企業にも大いに当てはまりますが、緊急事態宣言を発表した日本はまだ新型コロナウイルス感染症の影響に対処するには初期段階にあります。

日本企業の経営層は既にサプライチェーン見直し(74%)、デジタルトランスフォーメーション推進(28%)、オートメーション加速(50%)、従業員の管理体制強化(50%)といった行動を起こしています。日本企業の4分の3(76%)は、売上目標や収益目標達成への期待に対応するため、大きなトランスフォーメーションに向けた施策実施に着手していました。現在の新型コロナウイルスの感染拡大をめぐる状況と相まって、変革への意欲はかつてないほど強くなっています。

日本企業は、グローバルで貿易をめぐる緊張感が高まりつつあるという状況に対して自分たちのビジネスモデルを適応させることに焦点を置いてきました。

企業はコロナ危機が、一度きりの事象ではないと想定しています。多くの日本企業の経営層は既に繰り返し起こるディスラプションこそがニューノーマルな持続的ビジネス戦略ととらえており、優先事項と考えています。企業の経営層はこれからますます変革をもたらす戦略を徹底するようになるでしょう。

危機が終息した後の、M&Aによるリカバリーポイント

回答者の大部分が中期的には経済が回復すると考えている中で、日本企業の経営層の57%が、今後1〜2年以内に積極的にM&Aを行っていくと述べています。また、日本企業の経営層の80%が、今後1年間で買収競争が激化すること、そして、こうした競争の半分以上(67%)がかつてないほど豊富な投資資金を擁するPE(プライベートエクイティ)を含むプライベートキャピタルからのものだと予想しています。

M&Aに対する意欲

57%

今後1〜2年以内に積極的にM&Aを行っていくと回答した日本企業の割合

サマリー

EYのグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(PDF)は、経済見通しに対する企業の信頼度を評価し、キャピタルアジェンダ(資本課題)の管理方法における取締役会の傾向と取り組みを明確にします。

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執筆者 Vincent Smith

EY Asia-Pacific Strategy and Transactions Deputy Leader

Experienced executive management, and corporate restructuring professional. Champion for diversity and inclusiveness in the workforce.