5 分 2021年4月28日

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M&A市場での競争が激化する中、テクノロジー企業の経営陣は成長を重視

執筆者 Barak Ravid

EY Global Technology, Media & Entertainment, Telecommunications Leader for Strategy and Transactions, Ernst & Young LLP

Energized by all things at the intersection of technology and strategy. Passionate about the strength of diverse and inclusive teams. Love sailing, soccer and snowboarding. Father of three girls.

EY Japanの窓口

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション テクノロジー、メディア、テレコム セクター リーダー

事業開発、M&Aや事業投資に関する意思決定のためのアドバイスを提供。趣味は映画鑑賞や音楽、旅行。

5 分 2021年4月28日

テクノロジー企業の経営陣は増収見通しを示し、M&Aを重要な成長ドライバーと見ています。

要点
  • 多くのテクノロジー企業の経営陣は、増収、増益、成長が2022年まで続くとの楽観的な見通しを示している。
  • 2020年にはメガディールの増加が見られたが、テクノロジー関連のM&Aが急増するにつれ、さらなるディールの増加が予想される。
  • ステークホルダーの間では、事業が社会や環境に及ぼす影響に対する関心が高まっている。
Local Perspective IconEY Japanの視点

日本のテクノロジー企業は、加速するテクノロジーの進化を捉え事業を成長させるために、新たなテクノロジーの開発、自社事業を補完するための事業基盤および人材の獲得など、M&Aの重要性は増していくでしょう。また、テクノロジーは、コロナ禍で実感したように、社会インフラとしての役割も期待されており、テクロジーセクターとしての成長は更に加速すると予想されます。将来を見据えて、先手を打つために何をすべきかを常に検討しておくことが重要です。

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岩本 昌悟
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション テクノロジー、メディア、テレコム セクター リーダー

第23回グローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB)(PDF、英語版のみ) によると、テクノロジー企業の経営陣の半数近くが2021年も増収を見込んでおり、2022年までには利益率が完全に回復すると捉えています。短期での有機的成長は困難との認識から、51%の経営陣が来年に合併・買収(M&A)を推し進めることで成長を維持する方針だと回答しています。

テクノロジーセクター全体では、2020年も引き続き企業の株主総利回り(TSR)が市場平均を上回りました。EYの最近の分析結果によると、テクノロジーセクターのTSRは全体に市場を上回っており、現在、同セクターの収益と利益率の伸びは鈍化しているにもかかわらず、それをはるかにしのぐ勢いでTSRが上昇しています。この結果、増収・増益幅が縮小しても多くの企業が多大な株主利益を上げることができています。株主利益増加の大部分は収益拡大が「寄与」したものではないことから、多くの企業はいかにして増収基調に戻すかが懸念材料であり、特に収益で上位25%値に届かない企業にとっては頭の痛い問題です。

M&Aの展望

51%

のテクノロジー企業の経営陣が来年はM&Aを推し進める方針だと回答。

テクノロジーセクターのM&Aの現状

2020年、テクノロジーセクターのM&Aは、歴史的に低調な四半期で始まった後、歴史的に好調な四半期を迎えました。テクノロジー企業の経営陣はパンデミックへの対応に追われたため、年初はディール活動が停止したも同然でした。しかし、企業が即座に方向転換したことで、下半期に入るとテクノロジー関連のM&Aは激増しました。テクノロジー企業は今後の収益増加に向けてM&A戦略の調整を進めており、買収対象企業のレジリエンスと自社のデジタル技術との連携を今まで以上に重視するとともに、統合によるマーケットシェアの獲得を目指しています。

先行きの不透明感と当局による精査の厳格化にもかかわらず、前年はテクノロジー企業による変革を目指した買収が増えました。2020年は、50億米ドル以上のメガディールが全世界のテクノロジーセクター全体の取引額の59%(2019年は47%)を占めています。今後は多くのテクノロジー企業の有機的成長が減速するにつれ、成長する手段としてのM&Aが重要性を増すはずです。調査対象となったテクノロジー企業の16%が、50億米ドル以上の規模の変革を目指す買収を近々進める予定であると回答しました。今後はマルチプルエクスパンション、すなわちファンダメンタルズ(基礎的要因)ではなくセンチメント(市場心理)による株価収益率(PER)の上昇が鈍化する可能性があり、M&Aはますます重要になってくるでしょう。強い買収意欲を示す傾向は、業績が好調で、株主利益が他社を大幅に上回っている企業に多く見られました。

テクノロジー関連の取引市場は引き続き健全な状態が続くと予想されるものの、EYのCCBレポートによると、調査対象となったテクノロジー企業の経営陣の78%が、資産の入札プロセスでは今後12カ月間にプライベートキャピタルなどとの競争が激化すると予想しています。非テクノロジー企業がソフトウェア、ITサービス、垂直型のインターネット取引のケイパビリティの構築に取り組み、商品やサービスのデジタル化を図る一方、プライベートエクイティ企業はアプリケーションとIoTデバイスの確保に加え、リスク対策とコンプライアンス対策に多額の投資を行っています。

特別買収目的会社(SPAC)での過去に例を見ないM&Aの増加成長を抜きに、テクノロジー関連のM&A市場について論じることはできません。より確実な価格設定を提供したことで、パンデミックによる混乱期後に上場を目指す企業の間でSPAC人気が高まりました。SPACによるM&Aは急激に増加し、2021年初めにはテクノロジー関連のM&A取引額の50%を占めるまでになっています1。上場を目指す企業の獲得を狙うSPACの数が過去最高に達したことでバリュエーションがかなり高まり、従来型M&A市場のバリュエーションの上昇も招いています。

人材への投資

パンデミックを受け、テクノロジー企業の経営陣は事業運営をあらゆる側面から検証することを余儀なくされています。今後は、自社のデジタルトランスフォーメーション、カスタマーエンゲージメント、人材管理への戦略的投資を増やす予定です。競争が激しいテクノロジーセクターでは人材の活用が常に課題でしたが、今回のパンデミックで、優秀な人材の確保に関する企業の考え方が変わってきました。テクノロジー企業のCEOの82%が、リモートコラボレーションにより将来の経営モデルに対する見方が変わったと答えていますが、リモートコラボレーションが可能になったことで人材獲得において企業の機会が大幅に広がったことを考えれば、これは驚くことではありません。

テクノロジー企業の場合、人材の採用と定着だけでなく、成功に欠かすことのできないツールとテクノロジーへの投資も重要です。パンデミック後に必要となる「職場復帰」の新たな手順を考え始める中、企業は戦略的に動くことで移行を円滑に進めることができるでしょう。企業にとって人材が最大の課題であることに変わりはありません。テクノロジー企業のCEOの91%が戦略の見直しにあたっては従業員を意識すると回答しています。あらかじめ従業員にプロセス、スケジュール、安全対策の内容を伝えて不安を和らげておくことが肝要です。テクノロジー企業はまた、従業員の雇用契約を引き続き維持しながら、テレワークと出社のバランスをどのように取るかという面から、従業員への提供価値を見直さなければなりません。これについては、こうすれば正解というものがありません。柔軟性と説明責任を最も重視し、このプロセス全体を通して従業員にフィードバックを求めることが大切です。

将来に備える

テクノロジーセクターはかねてから先頭に立って環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みを推し進めてきました。社会的信頼、プライバシー、データの利用、規制面での注目の高まりなどの要因によりテクノロジーセクターへの信頼が損なわれる可能性があるため、企業はESGの取り組みを今後も最重視する必要があります。具体的には、持続可能な事業運営、持続可能なエネルギー管理、持続可能な消費と生産、そして特に透明性を確保し、倫理とデータプライバシーを守ることなどです。顧客と従業員は、単に規制に従うのではなく、変革を主導することをテクノロジー企業に期待しています。調査対象となったテクノロジー企業の多くでは、幅広いステークホルダーの間で、事業が環境と社会に与える影響についての認識が高まっており、今後は利益の最適化に注力する以上の対応が求められる可能性があることを認めています。

企業はパンデミックにより引き起こされた変化のうち、どれが定着するかを「長期的視野」に立って見極め、長期的な人的価値、財務的価値、社会的価値、消費者価値をもたらすことに焦点を当てた意思決定を行わなければなりません。いずれは、テクノロジー企業の経営幹部の77%が長期的な価値の創造について全てのステークホルダーに明確に説明する、より幅広いストーリーを用意しておくことが重要だと述べています。これらの取り組みの透明化を図り、取り組み実績の指標を開示してこそ、社内外で信頼と信用を醸成することができます。

結論

テクノロジー企業の経営陣は今後の収益と黒字転換について相変わらず楽観的な見方を示しています。業績回復ではトランザクションが中心的役割を果たすことになるでしょう。買収によって新たな商品、市場、ソリューションを獲得することが増収を後押しし、一方、非主力事業の売却により、不振事業や低成長事業を切り離してポートフォリオを再構築することが可能となります。テクノロジー企業の経営陣は、事業をどのように将来に耐え得るものにするかを検討しながら、引き続き人材育成と長期的価値創造の取り組みに力を入れる必要があります。

サマリー

EYのグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査(CCB: Global Capital Confidence Barometer)(PDF、英語版のみ)は、経済見通しに対する企業の信頼感を評価し、キャピタルアジェンダ(資本課題)の管理方法における取締役会の傾向と取り組みを明確にします。

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執筆者 Barak Ravid

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