6 分 2021年3月31日
reframe your future desert bloom

CEOが直面する喫緊の課題 :逆境を成長への足がかりにできるか

執筆者 EYQ

EYQはEYのシンクタンクです。

EYQは「来たる未来の先に何があるのか」を考察することによって、リーダーたちが未来を形づくるフォース(要因)を予期するサポートをし、ディスラプション(創造的破壊)のチャンスをつかみ、より良い社会の構築していくための力を与えます。

投稿者
EY Japanの窓口

EY Japan Regional Accounts Leader LTV推進室リーダー

Japanリージョンのマーケッツリーダーおよび主要なアカウントリーダー。30年以上にわたりEYに貢献。公認会計士。

6 分 2021年3月31日

パンデミックの発生は、リーダーたちの間ですでに議題であったトレンドの到来を加速させました。 CEOはこの変革の機会を逃すと取り残されてしまうでしょう。

要点

  • CEOにとって今が正念場である。パンデミックの発生に伴い、長年CEOの課題としてあったトレンドが一斉に押し寄せ、対処すべき変革は重要な課題から喫緊の課題にシフトした。
  • 「成長型企業」と「伸び悩み型企業」の軌跡は急激に分岐している。 今こそ巻き返し、飛躍し、ライバルを引き離す時である。
  • CEOは成長と変革に投資する準備はできているが、主要な能力のギャップを埋め、未来志向型企業のDNAを獲得する必要がある。


パンデミックの発生以前、多くの企業は新しいバリュードライバーや喫緊の課題への思い切った対応を先延ばししてきました。しかし、もうその選択肢はありません。新型コロナウイル感染症(COVID-19)のパンデミックにより、これまでにCEOの議題として挙がっていたトレンドが一斉に押し寄せています。EYがグローバルで実施した最新のCEO Imperative Studyでは、パンデミックにより企業が進む軌道の分岐が加速しており、CEOはこの機会を捉えて変革を推進し、前進しなければ取り残されてしまうリスクがあることを示しています。

これは、逆境の中でも成長する企業と、生き残ったものの伸び悩む企業の分化が急速に進んでいるためです。「成長型企業」は、この極めて重要な瞬間に積極的に取り組み、「伸び悩み型企業」を引き離しています。

では、どうすれば成長型企業となり、さらなる発展を遂げることができるでしょうか。EY CEO Imperative Seriesは、CEO Imperative Studyの調査結果から企業の未来を再構築するために必須となる解決策や行動を提供しています。CEO Imperative Studyは、Forbes Global 2000企業の最高経営責任者305人を対象に実施する調査であり、長期的に持続可能な成長を達成するための考察を重点的に扱っています。EYは成功する企業の新たなDNAが出現し、それは人間を中心に据えた変革を基礎として築かれると考えています。その変革は縦割り組織を解消し、アジリティを向上させ、イノベーションを推進し、長期的価値への原動力となるでしょう。

成長型企業と伸び悩み型企業の分岐

パンデミックという喫緊の課題により、企業が上向きまたは下向きのどちらの軌道に乗っているのかが顕著にあらわれました。成長型企業と伸び悩み型企業がたどる道は、今後さらに分かれていくでしょう。成長型企業の79%が今後3年間の成長を予測していますが、伸び悩み型企業ではわずか7%です。 

成長型企業の半数以上(58%)は、既存の変革をパンデミックに合わせて加速させ、パンデミックに対応した適切な戦略、混乱の抑制、資本調達といった点で恩恵を受けているようです。その結果、すでに成長に向けた計画を実行しています。パンデミック以前も成長していましたが、今後も着実に成長していくでしょう。

一方で、伸び悩み型企業の多くは(54%)、既存の変革における優先事項の遂行を先送りにし、コスト削減に焦点を合わせています。 成長型企業が急速に前進する一方で、伸び悩み型企業はまだ改革に取り組んでいるのです。 

CEOは新たなリスクテイクと成長へ踏み出そうとしている

幅広い調査対象者を見て分かることは、CEOが安定した経営から成長と変革のために新たな投資を行う経営へと舵を切ろうとしていることです。

  • 61% が主要かつ新たな変革の先導を計画
  • 68% がデータとテクノロジーへの大規模な投資を計画

またCEOは、今後3年間で変革へより多額の投資を計画しています。 こうした投資の大半はコスト削減によって相殺されません。CEOの半数は財務業績が短期的に低下するとしても、これらのイニシアチブを投資家が支持していると回答しています。 

新たに緊急性を帯びたトレンドが変革を推進

企業の変革を推進するトレンドは今に始まったものではありませんが、このところ緊急性を帯びています。ビジネスのデジタル化とバーチャル化が進み、消費者の嗜好が急激に変化するにつれ、パンデミックで生じた市場のずれが明らかにしたものは、長年課題としてあったトレンドへの対応を遅らせてしまう危険性と、積極的な戦略を策定できるというメリットです。 

変革の優先事項:アジリティ、顧客とのつながり、長期的価値

それに対応してCEOが重点的に取り組んでいるのは人材、リーダーシップ、組織の構造、カルチャーや目的など、企業の人間的側面における変革です。従業員のスキルアップや再教育、連携の強化、アジャイルな意思決定、変革的なマインドセットなどの目標を見れば、変革の促進において人的要因が重要な役割を果たしていることが分かります。68%のCEOが従業員に関連する変革の優先事項を少なくとも1つ抱えており、15%は複数を抱えています。

カテゴリーごとに見ると、CEOが優先しているのはリスク管理、イノベーションプロセス、資本配分の意思決定、ビジネスモデル、およびサプライチェーンにおける変革です。 そのすべての根底に人的要因があります。 

意図と実行のギャップ

CEOに変革への意欲があっても、意図することを思い通りに実行へと移すために埋めなければならない重大な能力のギャップが存在します。

  • 長期的価値における言葉と行動のギャップを埋める/気候変動の盲点

    長期的価値の創造という課題は、重要かつ分野横断的な優先事項として持ち上がりました。しかし、言葉と行動のギャップが顕著であることから、CEOが長期的価値の意味とこの目的の達成方法について不明確であることがうかがえます。企業が長期的価値の創造に再び向き合うには、多くの重要な課題が残されています。

    企業に最も影響を与えるトレンドの1つとして気候変動における緊急性の高まりを認識しているCEOはわずか26%です。気候変動による広範なリスクに対する認識不足が、長期的価値に対する言葉と行動のギャップの一因と見られます。

  • デジタル主導の変革を再考

    デジタル主導の変革は何年にもわたりCEOの議題のトップに挙がってきましたが、依然として課題のままです。その原因は、近年の多くの取り組みにおいて対象とする範囲が不十分だったことにあります。テクノロジーの変化は、一度の変革で終わることはありません。前進するためには、変革を継続する必要があります。

  • データのギャップを埋める

    これに関連して、CEOは組織がデータから価値を創出する能力には大きなギャップがあることを示唆しています。 最も明白なギャップは、データと信頼性に関連しています。データに関して顧客から信頼されていると回答したCEOはわずか34%でした。このデータのギャップは、ビジネスモデルの再考からサプライチェーンの可視化、新規顧客への提案に至るまで多くの優先事項の障壁となっています。

  • 文化の壁の克服

    アジリティ、革新性、多様性は成長型企業にとって必須の目標ですが、文化的な弱点はこのような目標を達成する上で大きな障壁となります。組織全体に革新的な思考が浸透していると断言したCEOは44%にとどまり、共有している目的とビジョンが中間管理職によって体現されていると述べたCEOは32%でした。多様で包括的なチームをすべてのレベルにおいて実現していると述べたのはわずか28%でした。

    このような弱点は、経営幹部が変更する際に露呈します。CEOは多様性や外部の視点を取り入れることよりも、より効率的な意思決定を優先しているということです。

  • エコシステムへの投資

    エコシステムの発展や統合に重点的に取り組んでいると語る企業は増えていますが、そのために多額の投資を行っていると断言するCEOは47%に過ぎません。そして、エコシステムは依然としてボトムアップで推進されています。外部のエコシステムとのパートナーシップがビジネス戦略の一部だと述べたCEOはわずか31%でした。

未来志向型企業のDNA

最大手企業の一部ではCEOが縦割り組織を解消し、アジリティを高め、イノベーションを推進し、さらにデータを活用することで、長期的価値を重視するこの世界において顧客とのより緊密な関係の構築を目指す変革を加速させています。

成長するためには新しいDNAを獲得し、進化させなくてはなりません。

  • 人間中心のリーダーシップに取り組む。思いやりを持って先導し、試行とリスクテイクの模範を示し、ステークホルダーの信頼を育むことでコアバリューを推進する。
  • 長期的価値の創出を目指して組織体制を整える。未来志向型企業は、長期的価値を生み出すように組織を整備し、市場により評価されるであろう。
  • エコシステムの一部を担う。未来志向型企業は外部のエコシステムに組み込まれ、また内部のエコシステムから構成されている。このエコシステムの統合を重要なリーダーシップ能力の発揮に活用する。
  • アジリティを目的とした組織を作る。リーダーの意思決定と組織の両方が、素早く行動できるような体制が構築されている。

未来志向型企業の再構築

未来志向型企業に移行するにあたり、その意図と実行のギャップを埋めるには、相互に関連する3つのバリュードライバーを追求する必要があります。それは人間を中心に据え、テクノロジーを迅速に採用し、イノベーションを大規模に推進することです。

この3つのバリュードライバーを、求められている継続的かつ機能横断的な変革においてすべての側面に織り込めば、CEOは長期的なステークホルダーの価値創造を推進し、最終的に4つの基本軸(財務、顧客、人材、ステークホルダー)に沿った成長の可能性を最大限引き出すことができるでしょう。

CEOが実行できる具体的な行動例の一部は以下です。

  • 自社が成長型企業と伸び悩み型企業のどちらであるかを、「レベルアップ」または飛躍の機会と合わせて評価する。
  • 現状を見直すため、組織全体が返答に窮する質問を問いかける。
  • 戦略、経営、財務、文化における重大なギャップに対処するために、リーダーシップのアクションプランと企業変革のための計画を作成する。
  • 将来にしか効果を期待できない変革への投資について、取締役会と投資家の同意を得る。
  • イノベーションと意思決定の中心に人間(顧客や従業員など)を据え、変革の成功を後押しする。

サマリー

新しいバリュードライバーや喫緊の課題への重要な対応を先延ばしするという選択肢はもはやありません。 成長する企業は変革において伸び悩む企業に先行しているため、CEOは後れを取らないよう今こそ立ち上がらなければなりません。CEOは企業を再構築する準備はできているものの、主要な能力のギャップを埋める必要があります。企業が成長するために人間を意思決定の中心に置き、テクノロジーを迅速に採用し、イノベーションを大規模に推進することで、新しいDNAを獲得しなければなりません。このバリュードライバーを変革のあらゆる側面に取り入れることで長期的価値の創造を推進し、最終的には成長の可能性を最大化できるでしょう。

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EYQはEYのシンクタンクです。

EYQは「来たる未来の先に何があるのか」を考察することによって、リーダーたちが未来を形づくるフォース(要因)を予期するサポートをし、ディスラプション(創造的破壊)のチャンスをつかみ、より良い社会の構築していくための力を与えます。

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