多くのグローバル企業は、欧州連合(EU)で適用された一般データ保護規則(GDPR)に準拠するための課題に取り組んでいます。現在では、100を超える国、州、都市がそれぞれ独自の「ローカルGDPR」を施行しています。それは、規制とコンプライアンスに世界的な混乱を招くでしょう。データのコンプライアンスと完全性は、もはや選択適用できるものではなく、急速に法令化の方向に進んでいます。
多くのグローバル企業は、欧州連合(EU)で適用された一般データ保護規則(GDPR)に準拠するための課題に取り組んでいます。現在では、100を超える国、州、都市がそれぞれ独自の「ローカルGDPR」を施行しています。それは、規制とコンプライアンスに世界的な混乱を招くでしょう。データのコンプライアンスと完全性は、もはや選択適用できるものではなく、急速に法令化の方向に進んでいます。
EYは、How to prepare for global data compliance の記事で、新たなデータプライバシー規制がグローバル企業にとって何を意味するのか、具体的に言うと、コストの増加とコンプライアンスリスクの上昇について、検証しています。
信頼という優位性 — 信頼できるデータに基づく関係を収益につなげる
ここでは、顧客からの信頼が厚い企業が、顧客との信頼関係を収益に結びつけた4つの事例を挙げています。
1. 最上のパーソナライズ
信頼できるデータに基づく関係は、カスタマイズされたウェブページよりも効果的です。あるグローバルに展開する家具の⼩売企業は、年間カタログ冊⼦とデジタルカタログ上に画像認識と拡張現実(AR)を取り⼊れたところ、顧客は、そこに⾃分の好み、購⼊履歴、⾃宅の画像などの⾮常に個⼈的な情報を提供しました。
顧客はこのデータに基づき、モバイル端末でカタログをスキャンすることで、仮想的に商品を⾃宅に置いてみることができ、デジタルで再現された住居のスタイル、⾊、サイズなどを確認できます。この⽅法によって、カタログ読者は⼗分に情報を得た上で購⼊できるようになり、顧客満⾜度の向上や返品の削減につながりました。何より、顧客を喜ばせることができました。
2. 製品とサービスのエコシステムの創造
農業機械の⼤⼿企業は、テクノロジーを活⽤している農家向けにプラットフォームを構築しました。このプラットフォームは、オプトインの承諾にのっとって集めた、使⽤した機械、作物の選択、植え付け⽇と収穫⽇などの情報をはじめ、さまざまな種⼦、肥料、農薬の使⽤に関する⽣産者データを含むものでした。これに、気象条件、輸送コスト、商品市場価格などの外部データ、さらには農業機械の使⽤やメンテナンスの情報などの内部データが組み合わされました。
同社は、承諾を得たデータに基づき、資⾦調達源、商品バイヤー、種⼦・農薬・肥料⽣産者のエコシステムを構築し、「メンバー」に低コストの製品とサービスを提供しました。信頼できるエコシステムによって、同社のトラクター、コンバインなどの販売台数も増加しました。
3. まったく新しいデータドリブン企業の創出
ビル設備を製造するあるグローバル企業は、⻑らくオフィスビルや⼯場向けの屋上換気システムを販売する業界のトップ企業でした。同社は、こうした設備のユニットをデジタル化し、顧客のエネルギー消費量と⽇ごとの使⽤パターンに関するリアルタイムのデータフィードを作成しました。顧客から信頼されているこの企業は、顧客の了承を得た上で、ユーザーとエネルギー使⽤に関するデータを、卸電力市場のピークプライシングに融合させました。
その結果、まったく新しいデジタルビジネスが⽣まれました。同社はエネルギー管理部⾨を⽴ち上げ、承認を得た上で顧客に代わってエネルギーを売買し、そこで節約できた分が企業の収益になりました。そのビジネスはさらに設備ユニットの販売数の増加をもたらし、それまでコモディティ市場であったところに「絆の強い」信頼関係が⽣まれました。
4. 公共の利益のための信頼できるデータ
コロナ禍の収束も、感染パターンの追跡、接触者追跡、ワクチン接種率とその有効性の確認など、データに左右されます。こうした分析は、健康診断や個⼈的な関係を含む、最もセンシティブな個⼈情報の開⽰に依存しています。
EYが近ごろ実施した調査について記した Has lockdown made consumers more open to privacy? では、公共の利益のために消費者が⾃分の個⼈情報を提供する意思があることが分かりました。世界各地の消費者1,900⼈以上を対象としたある調査では、50%が「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、個⼈情報の共有について前向きに考えるようになった。それが研究活動や地域のウエルネスに貢献するのであれば特にそう思う」と回答しています。実際に、こうした他の⼈を思いやる気持ちがなければ、パンデミックがどう収束するか予測することは困難でしょう。
結論
専⾨家の多くが、競争優位性を左右する新たな源泉になるのはデータだと述べています。しかし、顧客が企業による個⼈情報の使⽤を承諾しない場合、企業にはどのような優位性があるのでしょうか︖
収集した情報の透明性を担保し、個⼈情報のコントロールを顧客に預け、それに⾒合った公正な価値を提供できる企業 は、顧客の信頼を集め、今後も幅広く顧客を獲得できるでしょう。個⼈情報の使⽤⽅法を開⽰せず、それに⾒合う価値を提供できない企業は顧客の信頼を失い、ビジネスを維持することもできません。信頼されるデータを管理する信頼される企業には、未来が約束されています。
サマリー
情報の透明性を企業が担保できる場合、消費者は積極的にデータを共有することが分かっています。一度顧客の信用を得られれば、そこから収益を生み出し、それを足掛かりに別の利益を追求することも可能となることでしょう。