5 分 2019年3月13日
バルコニーで夕日を見つめる女性

高級品産業の進化を加速させる11の成長ドライバー

執筆者 EY Global

Ernst & Young Global Ltd.

5 分 2019年3月13日

デジタル化、中上流市場の成長、そして新興市場が一体となって高級品市場の成長を加速させています。当社の2018年ファクトブックでは、11の主要なトレンドを探ります。

高級品産業は、過去3年間で緩やかに成長しました(年間+3~4%)。また、個人高級品から高級ワインや経験型の高級商品に至るまで、全製品カテゴリーにおいて主要なブランドでパフォーマンスの差異が広がりました。 

EY高級品・化粧品指標(高級品・化粧品財務ファクトブック2018年版の対象となった企業による)は、過去10年間でトータルリターン137%(年間平均リターン8.6%に相当)と市場を大きく上回りました。2015~2016年で冴えなかった売上成長は、2016~2017年で持ち直し、2018年予測ではプラスになることが確実です。

  • 当社は、この主因を以下のように考えます。
  • 急速なカジュアル化の成長
  • 伝統的な正装を着用する機会の減少
  • 購入の経験的要素に対する強い関心
  • あらゆる層の消費者が「ミックスアンドマッチ(うまく組み合わせたスタイル)」を好む傾向
  • デジタルの成長 

ファクトブックでは、大いなる成長ストーリーのドライバー、消費者の好みと期待においてこの進化を加速させているもの、そしてこれらの結果として企業の業績について説明しています。 

当社の11の重要な発見

1. デジタルメディアは、新たな、直接的方法で消費者とつながっています。 

コミュニケーション手段はメディアからデジタルへと移り変わり、消費者とのコミュニティーが中心となるより直接的なつながりが見られます。デジタルに影響された購入は60%を超え、70%以上の消費者がソーシャルプラットフォームを通じて自身のお気に入りのブランドにつながっています。高級品企業は、デジタルを使用して自社のビジョンとメッセージを拡充し、消費者と親密な関係を構築しています。 

消費者のつながり

70%

の消費者がソーシャルプラットフォームを通じて自身のお気に入りのブランドとつながっています。

2. 鍵を握るのは新興市場

高級品・化粧品セクターの両方で、中国、ロシア、アラブ首長国連邦といった新興の高級品市場、特に化粧品市場における消費者の支出が成長を押し上げています。EYは、2020年までに新興市場がパーソナルケア商品の売上で50%を占めると予測しています。高級品市場の対前年比売上成長率は4.6%~5.8%伸びており、2017年実績-2018年予測では対前年比で過去最高の成長率(6.1%)が見込まれます。 

3. 設備投資に影響を与える店舗形態 

平均設備投資比率は、単一ブランドの来店者数と売上の減少、それによる小売店開業ペースの減速によって近年わずかに減少しています。今後数年で、店舗形態の組み合わせはディスカウントストアや空港の免税店へと移行し、単一ブランドの店舗、デパート、専門店は苦しくなるでしょう。至る所で顧客と接点をもつことで大きなインパクトを生み出すオムニチャンネル戦略が、顧客との関係を増やし、改善していく際に重要な鍵となります。 

4. 強力な時価総額をもつ企業では、発展途上国への進出と低い負債水準の傾向

ほぼすべての高級品企業の時価総額は増えています。2017年と比較して平均伸び率は8%、化粧品企業は18%となっています。 

5. 2016年に低調であった合併・買収活動が2017年に増加

2017年は、(2016年比で)M&A取引が20%上昇し、高級品市場の可能性に対して高まる投資家の期待を確実なものとしました。実際、M&A活動は過去最高の140件に達し、装飾品とeコマースは最も活気のあるセクターとなりました。大部分の取引はプライベート・エクイティ・ファンドが主導し(取引の30%:2016年は25%)、投資家のeコマースセクターへの関心が高まっていることがわかります。 

6. 成長しているのは、プレミアムと中上流セグメント

プレミアムと中上流市場は、CAGR7.5%の成長が見込まれる一方、高級品市場は、過去好調であったペースに減速が見られます(CAGR3.0%)。当社は、市場の多様化と、デジタル化による市場の開拓が進んでいるためであると考えます。 

7. 新たな行動により発展する化粧品産業

成分と原産地への関心、アンチエイジングへの関心、流行に敏感な新たな男性層、オンライン・プラットフォーム、デジタル志向の顧客、新興市場の成長はすべて化粧品市場に影響を及ぼしています。 化粧品企業は向こう3年で大きな成長を記録すると予測されています(2017年実績-2020年推定の平均CAGRは7.5%vs.6.2%)。

8. 高級品で求められる「オートクチュール」のデジタルアプローチ

デジタルは選択肢でなく、生き抜くために不可欠な要素です。デジタル流通チャンネルは高級品ブランドの主戦場を拡大し、ブランドが店舗を持たない地域ではオンラインで顧客と関わり顧客ベースを広げることができます。デジタルでは感情面で高級品の実店舗と同じ反応を引き出せないのではないかという恐れは、実店舗とデジタル店舗の融合、カスタマイズやパーソナライズ、バーチャルリアリティーの向上、消費者にブランド経験で飽きさせないマルチブランド・プラットフォームといった展開が進むにつれ、軽減されつつあります。デジタルは、データ収集、採用、在庫管理、財政状態を通じて顧客関係管理(CRM)を改善しています。

デジタルは選択肢でなく、生き抜くために不可欠な要素です。

9. 高級品ブランドはスタートアップを手本にしてイノベーションを導入する必要があります。

イノベーションは成長を加速させる原動力ですが、世界的な高級品ブランドにとって速やかにイノベーションを起こすことは容易ではありません。競争的な強みという面で世界規模かつ高水準の職人技術は、現代の消費者が求めるアジリティ(機敏さ)ほどではありません。消費者は、ニーズに合った幅広いトレンドの製品、テクノロジーが実現するマルチチャンネルのブランドとの関わり合いや相互関係を求めています。

10. ファッション業界ではサステナビリティが重要

近年、投資家は、潜在的な投資機会を評価し、リスクを管理するために、社会的・環境的影響を含む非財務情報に強い関心を示しています。そして株式は、ますますESG(環境、社会、ガバナンス)指標を織り込んで売買されるようになっています。

11. 高級品がデジタルを受け入れる時代

機械学習、AI、ビッグデータ、予測解析、eコマース、そしてブロックチェーンによるデジタル・ディスラプションがこの業界に影響を与えていますが、歴史的に高級品市場は腰が重いのです。データのより良い使用、コネクテッド・プランニング、革新的な業務、eコマースの採用が役立つでしょう。

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サマリー

プレミアムと中上流市場は、カジュアル化の高まり、スタイリングの「ミックスアンドマッチ」アプローチ、店舗形態からマーケティングに至るまでデジタル志向の成長によって、成長を加速しました。顧客は、新興市場でも増えつつありますが、最適な経験を期待しています。そして、企業はこのニーズへのアプローチを多様化しています。この進化の波に乗る方法を知っているブランドが将来も成功を続けます。

この記事について

執筆者 EY Global

Ernst & Young Global Ltd.