CEOがとるべき対応策
将来に備えて業務運営に柔軟性を持たせてくれるオペレーティングモデルを実行するにあたり、不可欠な対応策が主に3つあります。
1. 組織内の障壁を取り除くリーダーシップのビジョンを定める
変革に向けてすでに動き出しているところかもしれませんが、組織全体がついて来ているでしょうか。伝統的な慣行に疑問を呈し、行動を起こすきっかけを作ることもCEOの仕事です。ところが本調査によると、リーダーの63%は、企業文化が抵抗を生む土壌になるとみていました。また、変革ロードマップを取りまとめられないことも障壁を生む要因となる恐れがあるとの回答が55%に上っています。
今回の調査で取材したCEOの一人が述べていたように、「(変革を成功させるには)組織構造とリーダーシップを、独創性を育み、従来の企業のマインドセットで物事を考えないよう従業員を促すものに変える必要があるでしょう」
2. ケイパビリティの構築にどれくらいの時間がかかるかを現実的に見極める
今回の調査の対象となったリーダーは、企業⽬標の達成に必要なケイパビリティの構築に取り組んでおり、⾮常に野⼼的な期限を設けていました。例えば、61%が2年以内に柔軟性のある⼈材プールを構築することが極めて重要だと回答しています。しかし、EYのレポートにも登場している教授は次のように述べています。「これまでにケーススタディにまとめたどのオペレーショナルイノベーションも、全員を参画させ、インセンティブをイノベーションに沿ったものにし、賛同を得るだけで3年から7年の歳⽉を要しました」
3. 現在のケイパビリティではなく、将来必要となることから始める
社会は急激に変化しており、強みとみなされている分野にも変革が求められます。今回の調査では、オペレーティングモデルの変⾰に必要な最新のテクノロジーと解析能⼒があると回答したリーダーが77%に上りました。その⼀⽅で、70%がテクノロジーインフラを改修する必要があり、それが変⾰の⼤きな障壁になっていると回答しています。このように回答は⽭盾しており、現在必要なものを備えることと、将来必要となるものを備えることのギャップが浮き彫りとなりました。だからこそ、変⾰計画を策定し、実⾏する必要があるのです。
エコシステムを基本とする考え⽅を取り⼊れることは、この問題への有効な対応策となります。変⾰⽬標の達成に不可⽋なケイパビリティを補完し、場合によってはそのケイパビリティに取って代わることができます。それにより、⾼い価値を創造できる分野に能⼒を集中させることができるはずです。取材対象となったリーダーの間からは、消費財メーカーは事業の各領域にエコシステムを分散させる必要があると指摘する声が聞かれました。