10 分 2020年8月7日
マスクを着けてスーパーで買い物をする女性

Future Consumer Index:価格優先の時代に成長する方法とは

執筆者

Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Consumer Knowledge Leader & Lead Analyst

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.

EY Japanの窓口

EY Japan Advisory Consumer Products & Retail Sector, Senior Manager

グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。

10 分 2020年8月7日

EY Future Consumer Indexでは、消費者の⾏動と心理動向を調査し、ナショナルブランド商品からプライベートブランド商品への根本的な関心の変化を追っています。

 EY Japanの視点

本記事では、消費者の価格感度の高まりに伴うプライベートブランド商品への関心に対し、消費財メーカーが取るべきアクションを提言しています。

プライベートブランド商品への関心の増加については、日本の消費者においても同様の傾向が見られます。

日本の消費者の多くは経済不況による影響を心配しており、消費者の48%は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束するまで、自動車、家具、家電製品などの大きな金額の商品の購入を延期したいと考えています。
また、消費者の54%は、価格がより重要な購買基準となったと考えています。
日本でのプライベートブランド商品の市場シェアはグローバルと比較して高くありませんが、さまざまな商品カテゴリにおいて、多くの消費者がプライベートブランドを検討し始めています。

  • 食品:8%の市場シェアに対し、42%の消費者がプライベートブランドの購入を検討
  • アルコール飲料: 1%の市場シェアに対し、29%の消費者がプライベートブランドの購入を検討
  • 美容とパーソナルケア: 1%の市場シェアに対し、37%の消費者がプライベートブランドの購入を検討
  • 日用品: 1%の市場シェアに対し、26%の消費者がプライベートブランドの購入を検討

一方で、消費者は価格が全てではありません。社会に貢献する企業であれば、値段が高くてもその企業の商品はサービスの購入を増やすつもりだと回答した日本の消費者は23%います。

企業は、消費者の購買基準の変化に対応するべく、ターゲットとする消費者へ価格以上の価値となる商品・サービスを提供するとともに、企業としての運営方法、バリューチェーン・サプライチェーンを消費者の変化に適合させつつ、社会的責任を再認識した活動を行っていくことが求められるでしょう。

EY Japan の窓口

ゲスト編集者

安藤 宏晃

EY Japan Advisory Consumer Products & Retail Sector, Senior Manager

グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。

要点
  • パンデミックが続く中、世界的に消費者は支出に慎重になっている。
  • プライベートラベル製品を検討する意欲が急速な高まりを見せ、現在の市場浸透率をはるかに上回っている。
  • 5つのアクションにより、ブランドオーナーは消費者の価値と優先順位の変化に対応した優れた商品を提供できる。

EYは4カ月間にわたり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が全世界の消費者に与える影響を調査してきました。パンデミック収束後の日常がどのようなものであれ、その日常を取り戻すまでには長い紆余曲折を余儀なくされると考えられます。前進を続ける国もありますが、その一歩は小さく、足取りもおぼつきません。その上、堅調な⾼まりをみせていた消費者の購買意欲も、多くの地域でその勢いが鈍化し、ストップし、逆に冷え込んでいます。

今回のEY Future Consumer Indexでは、EYはこのような消費者の購買意欲の低迷が消費財メーカーに与える影響に注⽬しています。特に強調したい点は、価格感度が保守化する傾向の⾼まりと、その結果としてプライベートブランド(⼩売業者の⾃社ブランド)への⼀⼤転機が訪れる可能性です。

経済が苦境に陥っているときには、プライベートブランドの⼈気が⾼まることが予測されます。今回のIndexの結果から、この状況が実際に起きていることが明らかになったことに加え、プライベートブランドに対する消費者の反応と購買習慣がパンデミックによって根本的に変化していることも分かりました。プライベートブランド商品を検討すると回答した消費者の割合は全世界で著しく⾼く、その市場浸透率から想定される割合をはるかに上回っています。

⾦銭的な価値に対する消費者心理

60%

の消費者が、これまでよりも金銭的な価値を重視すると回答しています。

必要に迫られて購買習慣を変えた消費者も存在します。単にいつも購⼊しているブランドが⼿に⼊らず、普段であれば⼿に取らなかったような商品を試すことになった⼈々です。こうした消費者層が、今ではプライベートブランドを幅広く検討したいと回答しています(詳細については以下をご覧ください)。他にも、これまでのお金の使い方を振り返り、高級ブランドはその価格に見合う価値があるのか改めて考える消費者もいれば、不況に陥ることが予想され、家計を心配して節約方法を考える消費者もいます。こうした消費者心理は、価値志向の強い消費者だけでなく、EYが調査している全消費者セグメントで⾒られました。

これらのインサイトから考えると、プライベートブランドが転機を迎えようとしているのではないかという問いが⽣じます。すでに、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、世界中の消費者がオンラインでの買い物を好むようになっています。同じようなことがプライベートブランドにも起きるのでしょうか? そうであれば、ブランドオーナーはどのように対応すればいいのでしょうか?

消費者の楽観姿勢は崩れやすい

Index第3版を7⽉に発表した時点では、消費者の楽観的な見通しは世界的に⾼まっていました。ちょうど多くの地域でロックダウン措置が緩和され始めた時期です。家族の健康をとても心配している、あるいは非常に心配していると回答した消費者の割合など、懸念度を示す指標の数値が低下していました。

全体的に見て、これらの割合は引き続き下がっていますが、減少率はごくわずかです。現地の感染拡大状況、新たな行動制限措置、感染者数の増加、失業率、経済の悪化などの話題が、連日トップニュースを飾っています。家計の状況についてどう思うかという質問に対して、とても心配している、あるいは非常に心配していると回答した消費者の割合は依然として減少しているとはいえ、減少率は鈍化しています。健康面と金銭面の懸念が再び高まっている市場もあります。

消費支出に対する意識が保守化

一部の消費者の間では、店舗での試着など普段の活動を再開することへの不安感が徐々に薄れています。とはいえ、その動きは遅く、また世界で共通ではありません。例えば米国では、公共交通機関の利用や子供の通学に対する不安は、5月の時点と同じです。

美容院に行くなど必要な活動は慎重に再開していますが、これは消費支出の増加を示唆するものではありません。実際、消費者の61%が支出への意識を高め、さらに慎重になると回答しています。自動車、家具、家電など高額商品の購入や買い替えをパンデミックが終わるまで先延ばししたいと回答したのは48%でした。

誰もが待ち望んでいる日常生活に戻るまでには、思っているより一層時間がかかります。そのため、大多数の人々は不況が及ぼす影響に強い懸念を抱いており、世界の消費者のうち54%が、1カ月前と比べて価格がより重要な購買基準になっていると回答しています。

価格の重要性

54%

の消費者が、1カ月前と比べて価格がより重要な購買基準になっていると回答しています。

このような懸念はEYの各消費者セグメントにも現れ、消費支出に対する意識が保守化する傾向が見られます。「冷静に行動」セグメントの消費者の割合は全世界で5月から6月にかけて倍増したものの、現在は横ばいで推移しています。同様に「大幅に節約」セグメントの割合は急激に低下しましたが、現在は安定しています。

多くの政府が外出してお金を使うことを消費者に強く促していますが、そうしない、あるいは当面はそうしないと決めている消費者は少なくありません。今後の意向について質問を行ったところ、「節約を継続」または「質素な生活」を心がけるとした消費者に大きな変化はありませんでした。全体的に見て消費者の64%が、たとえ最新のトレンドに乗り損ねることになったとしても、必要と感じない商品は購入しないと回答しています。また45%が、今後は欲しいと思うものを購入するのではなく、必需品だけを購入することになるとしています。この回答は、今回の危機が続く間、多くの消費者が自己防衛に走ることを示唆しています。

PB商品の検討率が市場浸透率をはるかに上回る

このように価格感度が高まる傾向は、消費財メーカーにとってどのような意味を持つのでしょうか︖ ここで注⽬すべき重要なポイントは、プライベートブランドがナショナルブランド商品から市場シェアを勝ち取る余地が、調査対象のカテゴリーと地域の全てにおいて豊富にあるという点です。

プライベートブランドの浸透率が⾼い市場であっても、シェアを拡⼤する余地はあります。例えば、英国では消費者の67%が加⼯⾷品カテゴリーでプライベートブランドの購⼊を検討すると回答していますが、Euromonitorによると英国でのプライベートブランドの市場シェアは現在37%です。

検討している人の割合と浸透率の差が、これよりも大きい地域やカテゴリーもあります。例えば、⽶国では消費者の41%が美容・パーソナルケア⽤品でプライベートブランド商品の購⼊を検討するとしていますが、同カテゴリーのプライベートブランドの市場シェアは4%にすぎません。

ここで重要なのは、今回のパンデミックの影響を懸念してプライベートブランドに多⼤な関⼼を⽰しているのが、価値志向の強い消費者だけではないという点です。体験を重視したいと考える消費者、または環境優先あるいは社会優先の消費者でさえ、プライベートブランド商品に強い関⼼を⽰しています。

プライベートブランドへの転換は思いのほか切実

今回のIndexの結果はプライベートブランド商品への転換を指摘していますが、通常の不況時より切実で、⻑く続く可能性が⾼いと思われます。

調査によると、消費者の41%がいまだに外食に不安を感じ、45%が洗剤、紙商品、日常的な食料品などの生活必需品を買いだめするとしており、巣ごもり消費の急増は当面続くと見られます。

Indexの結果から、高額設定を維持することは今まで以上に難しくなることが分かりました。価格重視に転じる消費者が増加しており、倫理的または持続可能な方法で調達されているかどうかなどの特長にプレミアム価格を支払うことに対して、消費者は消極的になっています。

企業はどのように対応すべきか?

多くの消費財メーカーは過去10年間、ブランド構築とプロダクトイノベーションの投資優先順位を下げていました。この間、小売業者が大きな力を注いでいたのは、プライベートブランド商品の品質向上と品ぞろえの充実です。こうした状況を背景に、プライベートブランド商品を検討する消費者の意欲の高まりと現在の経済の脆弱性が、一大転機をもたらす可能性があります。このような市場の転機は、ブランドオーナーに受け身の対応を余儀なくするのでしょうか? それとも、自分たちに有利になるような形へと転換させるチャンスをもたらすのでしょうか?

プライベートブランド商品を検討すると回答した消費者全員が必ずしも実際に購入するとは限りません。また、プライベートブランドだけを購入する消費者はごく一部でしょう。しかし、ターゲットとする消費者を適切に設定して適切なマーケティングを行い、ふさわしいパッケージを施した適正価格の商品を適切にラインナップし、適切なチャネルを通して販売することがかつてないほど重要になっていると考えられます。消費財メーカーが取るべきアクションは以下の5つです。

 
  1. 消費者の意思決定層がどのように変化しているか、その推移を追い、商品の売上実績を、従来の競合他社とプライベートブランドの両⽅と⽐較する。

    これまでの経験から、ブランドオーナーは価格弾⼒性がどの程度変化したかを過⼩評価する⼀⽅で、⾃社商品とプライベートブランドとの消費者好感度の⽐較結果を過⼤評価する傾向にあります。プライベートブランドへの転換が進んだ場合、最も影響を受けやすいのはどのブランドであるかを把握するには、カテゴリーと市場の枠を超えてデータを整理、統合し、部⾨の枠を超えてそれを可視化することが不可⽋です。


  2. 差別化ポイントに投資を⾏い、価格体系と商品ミックス戦略を⾒直して、地域ごとに取り扱う商品の組み合わせと利益率を最適化する。

    部門間の縄張り意識でうまく連携を取ることができず、イノベーションを達成できないケースが多々あります。営業とマーケティングはサプライチェーンと緊密に連携し、現状に合わせて価値提案を修正し、商品とパッケージのイノベーションを進め、消費者に選ばれるブランドづくりにつながるマーケティング手法と価格体系を構築しなければなりません。


  3. 商品ポートフォリオ全体の需要予測を⾒直すとともに、サプライチェーンの機動⼒を⾼め、さまざまなシナリオにダイナミックに対応できる体制を整える。

    パンデミックが起きる前の古いデータでは十分に対応できません。需要の変化のうち、どれが永続的なものであり、どれが一時的なものなのでしょうか? さまざまなシナリオに合わせて計画を立て、現状を追跡し、迅速な対応を図ることで、適切な商品を適切な買い物客・消費者に確実に届けることができます。これにより、売上高と収益を最大化し、消費者離れのリスクを最小限に抑えられるでしょう。


  4. リソースと投資資⾦を再配分して優先すべき⼩売業者とチャネルを支援し、相互に有益な成果を上げる。

    流通環境は変化しており、今後も変化を続けるでしょう。企業に求められるのは、販路開拓の再構築と、それが供給コストにどのような影響を与えるのかを把握することです。顧客やチャネルに適切な投資を⾏い支援することで、サプライチェーンと在庫の効率化を図り、⼩売業者が⾃社のプライベートブランド商品の開発を加速させる必要性を抑えることができます。


  5. 顧客エンゲージメントを再設計し、新たな購⼊チャネル全体でブランド認知度を可能な限り向上させる。

    自社ブランドのうち、価格以外で差別化できるのはどのブランドなのか、いつ、どのように買い物客に訴求すべきなのかを企業は把握する必要があります。消費者がデジタルチャネルと実店舗を併⽤する動きが進む中、これは難しい課題です。マーケティング⼿法は似ていますが、企業と消費者の関わり⽅が異なり、新たなマーケティング手法が求められます。的を絞った、インサイト主導型のプロモーション計画を策定することで、収益機会の損失を抑え、投資利益率を向上させることができるはずです。

 

プライベートブランド商品を検討する消費者の意欲の⾼まりと現在の経済の脆弱性が、大きな転機をもたらす可能性があります。このような市場の転機は、ブランドオーナーに受け身の対応を余儀なくするのでしょうか、それとも、自分たちに有利になるような形へと転換させるチャンスをもたらすのでしょうか?

パンデミックによる影響への対応には多くのリソースを必要とし、多大な注意を払わなければなりません。消費財メーカーは、これまでにないほどのスピード感を持ってバリューチェーン全体をくまなく見直すことを余儀なくされています。チャネルシフトに伴う実店舗離れへの対応は急務です。一部大手メーカーのeコマースの売り上げは、今年上半期に50%以上増加しました。この他にも、巣ごもり消費の急増、ヘルスケアや家庭用除菌関連の支出増加にも対応しています。

消費選好のプライベートブランドへの転換もまた、消費財メーカーのリーダーが注意すべきディスラプションの1つです。今回のIndexでは、消費者の60%がこれまでよりも金銭的な価値を重視すると回答し、また32%が生活必需品についてはプライベートラベルの購入を増やすつもりだと答えており、こうした傾向が明確に裏付けられました。とはいえ、果たして全員が回答通りの行動をするのでしょうか?

消費者にとって価格の重要性は増していますが、新型コロナウイルス感染症を乗り越えた各消費者セグメントの結果から明らかなように、価格だけが重要というわけではありません。社会に貢献する企業であれば、値段が⾼くてもその企業の商品やサービスの購⼊を増やすつもりだと回答した消費者も39%います。消費者の価値と優先順位の変化に対応した優れた商品を届けることで、プライベートブランドへの転換をある程度⾷い⽌めることができるはずです。今回のパンデミックの影響による消費者の優先順位の見直しは、現状に安住するブランドにとっては逆風となるでしょうが、価格以上の価値を提供するブランドにとっては追い風です。

  • 調査方法

    EYは2020年7月20日の週に、米国、カナダ、ブラジル、英国、フランス、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、中国、インドネシア、日本、オーストラリア、ニュージーランドの消費者14,074名を対象に調査を実施しました。アンケートの質問内容は、現在の行動、心理、意図にわたっています。

サマリー

EY Future Consumer Indexでは、楽観姿勢が再び高まっていく推移を追ってきました。しかし、その勢いがここにきて鈍化し、一部の主要市場では逆に後退しています。消費者は家計を懸念し、PB商品を志向する傾向を強めています。PB商品への転換は切実で、⻑く続く可能性があります。こうした状況に対応するには、消費者の価値観と優先順位の変化に対応した優れた商品を届けることが必要です。

この記事について

執筆者

Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Consumer Knowledge Leader & Lead Analyst

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.

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グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。