2020年9月7日
水素エネルギーの灯が照らす未来

Future Consumer Index:未来の消費者行動を見据えた企業の事業構造変革とは?

執筆者

安藤 宏晃

EY Japan Advisory Consumer Products & Retail Sector, Senior Manager

グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。

2020年9月7日
企業は、新たな日本の消費者の購買基準に即した事業ポートフォリオ見直しを行い、デジタル化により消費者の不安を解消し、長期的価値を提供していくことが求められます。

この調査は、EY Future Consumer Index第3版 の一環として、日本の消費者を対象に実施した調査の結果です。 

日本の消費者は「正常化」が大半で、「新しい生活様式」を受け入れつつある

日本では、5月25日の緊急事態宣言の解除を受けて、段階的な休業要請解除が行われてきました。また、5月4日に日本政府の専門家会議から「新しい生活様式」が提言され、日本の消費者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する安全対策を取りつつ、新たな日常を取り戻しつつあります。

今回の消費者動向調査(6月25日実施)においても、その傾向は見られます。

今後の消費者行動を表す5つのセグメントにおいても、日本は「正常化」セグメントが61%と前回調査の38%から増加しています。また、支出に前向きな「支出を増加」「選択して贅沢」も計26%と一定割合を占めています。支出に消極的な「質素な生活」「大幅に節約」が計12%に縮小していることから、支出が上向き傾向にあると言えるでしょう。

(図1) Next : 4つの新しい消費者セグメントの割合

図1 Now : 4つの新しい消費者セグメントの割合

今回の調査では、「新しい生活様式」(5分野)に対する消費者の受容度を調査しており、「働き方」「食事」の適応度は、「買い物」「公共機関の利用」「娯楽、スポーツ等」に比較して、やや賛成の割合が少なく、消費者の不安や戸惑いが見られますが、全ての分野で半数以上の賛成が得られています。

(図2) 日本の消費者の新しい生活様式への適応度

図2  Next : 5つの新しい消費者セグメントの割合

この結果から、日本の消費者は、「新しい生活様式」に適用しながら、消費意欲を取り戻しつつあると言えるでしょう。

新たな購買基準に即した事業ポートフォリオの見直し

日本の消費者は、COVID-19による外出自粛の最中、家族の健康に不安を感じながら、長期化する自宅での生活の質を向上させることに留意してきました。日本市場の購買基準は、前回と比較して、価格や健康的な商品をより重視する傾向が見られます。

(図3) 日本の消費者の新しい生活様式への適応度

図3 COVID-19収束後に重要と考える購買基準の割合

消費財・流通企業にとっては、自社の各事業が魅力的な価格で消費者の健康的な生活に貢献できる価値を満たす商品、サービス、顧客体験を提供できているかを再評価すべき時です。消費者の変化により自社での継続が合理的ではないと判断される商品やサービスの事業売却、新しい商品、サービスを取り込み消費者への提供価値を強化するための事業買収といった、より戦略的なM&Aが必要になるでしょう。

緊急事態宣言が解除されても消費者の不安は解消されていない
不安を抱く消費者へのデジタル顧客体験の提供

今回の調査結果では、緊急事態宣言が解除されても消費者の不安は解消されていないことがうかがえました。

どこに行く場合に不安を感じるかを尋ねると、「スーパーで買い物に行く」こと以外は、半数以上の消費者は不安を感じている結果になりました。また、日本の消費者の86%は「バーやクラブに行く」ことに不安を感じており、グローバルと比較して、23%高くなっています。

(図4) 公共の空間に行く場合に消費者が不安を感じる割合

図4  COVID-19収束後の1~2年後の買い物の仕方

緊急事態宣言が解除された後も、政府の感染症対策でバー・クラブが発生源として強調されたことなどが影響を及ぼしていると考えられます。こうした消費者の不安を払拭していくことが、消費者を呼び戻すためには欠かせません。

また、「人との接触を避けるために、非対面での対応やキャッシュレスを好む」消費者は半数に達します。

したがって、消費意欲が高く、不安を感じている消費者を呼び戻すためには、集客から支払いまでの従来のカスタマージャーニーを全面的に見直し、消費者との物理的な接触機会をデジタルに置き換えていくことが求められます。つまり、感染防止の観点からオペレーションを見直すことはもちろんのこと、COVID-19収束後の中長期的な消費者行動の変化を見据え、今から事業構造の変革とデジタル化への投資が重要といえるでしょう。

(図5) Next : 消費者が考える “ニューノーマル”

図5  COVID-19収束後の1~2年後の買い物の仕方

消費者の信頼を得るための企業行動とは?

COVID-19収束後に、消費者の価値観はどのように変化するのでしょうか?

今回の調査にて、COVID-19収束後の購買基準について尋ねたところ、その優先順位の傾向により、「価格」「健康」「社会」「環境」「顧客体験」を重視する5つのセグメントがあることが分かりました。

(図6) Beyond : 新しい消費者セグメントの階層構造

図5  COVID-19収束後の1~2年後の買い物の仕方

購入する商品・サービスの選択において、日本の消費者は価格重視がやや高いものの、社会・環境への影響について考慮する消費者が一定の割合を占めています。

今後は、企業は社会的責任を果たしているか信用できる情報を提供し、消費者からの信頼を得ていくことが重要になります。そして、消費者への提供価値を財務的パフォーマンス向上につながる経営指標に設定することが求められます。

このことは、企業は自らの目的(パーパス)に焦点をあて、消費者に対する長期的価値と実現方法を検討していくことになるでしょう。

サマリー

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、日本の消費者の価値観が変化しています。企業は、新たな購買基準に即した事業ポートフォリオの見直しを行い、デジタル化により消費者の不安を解消し、企業活動を長期的価値の提供に焦点をあてることで、COVID-19収束後の事業の回復・成長に向かうことができるでしょう 。

この記事について

執筆者

安藤 宏晃

EY Japan Advisory Consumer Products & Retail Sector, Senior Manager

グローバルコラボレーションを大事にする。家族も英国、ロシア、フィリピン在住とグローバルに活動中。