監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正ポイント

2011年4月22日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 福山伊吹

日本公認会計士協会が平成23年4月12日に公表

平成23年4月12日付で日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)より、『監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正について』(以下、本指針)が、公表されました。

本指針は、企業会計基準委員会(ASBJ)から平成21年12月に公表された企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(以下、「過年度遡及会計基準等」という。)において、減価償却方法や耐用年数の見積りの変更及び臨時償却等に関する取扱いの整理が行われたことに対応するため、監査第一委員会報告第32号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」を統合し、所要の改正を行っています。

平成23年2月24日付で公表されていました本指針の公開草案については、上記のほか、「平成23年度税制改正大綱」(平成22年12月16日閣議決定)において減価償却資産に係る定率法の償却率の見直しが行われたことへの対応も含めて検討されていましたが、現在において、平成23年度税制改正法案が成立していないため、過年度遡及会計基準等の適用及び監査第一委員会報告第32号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」の統合のみ対応したものが公表されています。

1. 過年度遡及会計基準等の適用に対応した見直し

(1)臨時償却の記載を削除

過年度遡及会計基準第57項において臨時償却は廃止し、固定資産の耐用年数の変更等については、当期以降の費用配分に影響させる方法(プロスペクティブ方式)のみを認める取扱いとされたため、臨時償却の記載が削除されています。

(2)減価償却方法の変更や耐用年数の見積りの変更の取扱いの記載を追加

過年度遡及会計基準等において、減価償却方法の変更や耐用年数の見積りの変更の取扱いが定められたことから、当該取扱いが留意的に記載されています。

具体的な内容は以下の通りです。

① 減価償却方法は会計方針に該当し、その変更は「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」として取扱い、遡及適用は行わないことに留意することとされています(第10項)。

② 耐用年数の変更について過去に定めた耐用年数がこれを定めた時点での合理的な見積りに基づくものであり、それ以降の変更も合理的な見積りによるものであれば、過去の誤謬の訂正には該当せず、会計上の見積りの変更に該当し、変更の影響は当期及びその資産の残存耐用年数にわたる将来の期間の損益で認識する(第15項、第16項)。 一方、過去に定めた耐用年数がその時点での合理的な見積りに基づくものでなく、事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、過去の誤謬の訂正に該当し、修正再表示することに留意することとされています(第17項、第18項)。

③ 残存価額の変更が会計上の見積りの変更に該当する場合、変更の影響は当期及びその資産の残存耐用年数にわたる将来の期間の損益で認識する。一方、残存価額の変更が過去の誤謬の訂正に該当する場合、修正再表示することに留意するとされています(第20項、第21項)。

2. 適用時期等

(1)平成23年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用し、適用初年度より前の事業年度に行われている会計上の変更及び過去の誤謬の訂正については遡及修正しないこととされています。

(2)平成23年改正の本指針の適用をもって、監査第一委員会報告第32号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」は廃止されています。

3. 公開草案からの変更点

本指針の公開草案においては、「平成23年度税制改正大綱」(平成22年12月16日閣議決定)において平成23年4月1日以後取得する減価償却資産の定率法の償却率を定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍した数(いわゆる250%定率法)から、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(200%定率法)への改正が予定されていたことに伴い、監査上の取扱いについても平成19年度税制改正時の基本的な考え方を踏襲する形で、見直しが検討されていました。

しかし、現時点では、平成23年度税制改正法案が成立していないため、当該平成23年度税制改正に係る監査上の取扱いについては、記載が削除されております。

適用時期についても、平成23年度税制改正に係る監査上の取扱いに関しては、平成23年4月1日以後終了する事業年度、四半期会計期間及び中間会計期間から適用することとされていましたが、当該取扱いも削除されています。

なお、本稿は改正実務指針の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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