平成25年3月期の計算書類の注記表に係る検討事項

2013年3月1日
カテゴリー 太田達也の視点

公認会計士 太田 達也

会社計算規則の改正状況

平成25年3月期の年度決算を迎える時期が近づいており、会社法の計算書類の作成に向けての準備が必要になりますが、会社計算規則については平成23年11月16日付の改正を最後に、その後の改正はありません。昨年3月期のときの規則と同一の規則が適用されます。従って、経済団体連合会が公表している「経団連ひな型」は、これまで毎年のように改訂していましたが、今回は改訂を予定していないようです(平成24年1月11日に公表されたものが最新になります)。

規則の改正がないため、一見すると新たな検討課題がないように思われますが、実は検討事項がある点に留意する必要があります。本稿では、計算書類の注記表に関して二つの検討事項を解説します。

控除対象外消費税等に係る会計処理方法の注記の要否の検討

消費税法の改正による95%ルールの見直しにより、控除対象外消費税等が初めて発生する企業が多いと考えられます。「重要な会計方針に係る事項に関する注記」の記載について、一定の検討が必要となります。
日本公認会計士協会の消費税の会計処理に関するプロジェクトチームが平成元年1月18日付で公表した「消費税の会計処理について(中間報告)」では、税抜方式による場合には、資産に係る控除対象外消費税の処理についても併せ重要な会計方針として記載することとされています。ただし、控除対象外消費税の処理についての記載は、その金額が重要でない場合には省略できるものとされています。

資産に係る控除対象外消費税等の会計処理については、3通りの会計処理方法が考えられますが、企業はこの中から一つの方法を選択し、以後は継続適用することになると考えられます。次に、会計処理方法に応じた3通りの文例を示すこととします。

① 資産に係る控除対象外消費税等を発生事業年度の期間費用としている場合

消費税等の会計処理
消費税および地方消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、資産に係る控除対象外消費税等は発生事業年度の期間費用としている。

② 資産に係る控除対象外消費税を資産の取得原価に算入することとしている場合

消費税等の会計処理
消費税および地方消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、資産に係る控除対象外消費税等は個々の資産の取得原価に算入している。

③ 資産に係る控除対象外消費税を一括して長期前払消費税に計上することとしている場合

消費税等の会計処理
消費税および地方消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、資産に係る控除対象外消費税等は長期前払費用に計上し、○年間で均等償却を行っている。

なお、すでに説明したように、資産に係る控除対象外消費税等の金額が重要でない場合には、上記ただし書きの記載を省略することができます。

減価償却方法の変更に係る注記の検討

平成23年12月2日付で公布された改正法人税法により、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産について定率法を適用する場合は、税務上、250%定率法ではなく200%定率法を適用して償却限度額を計算するものとされました。この税制改正に対する企業会計上の取扱いが問題となります。それについては、日本公認会計士協会から、平成24年2月14日付で監査・保証実務委員会報告第81 号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正が公表され、実務上の指針が示されています。

今回の減価償却方法に係る改正は、あくまでも税制改正にすぎないから、会計上直ちに償却方法を変更しなければならないということはなく、今後の新規取得資産についても250%定率法を継続していくこと自体には問題はないものと考えられます。ただし、このまま新規取得資産について250%定率法を継続すると、償却超過額が発生し申告調整が必要になるので、変更を行う企業がほとんどであると予想されます。

第一に、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産について旧定率法を採用し、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した減価償却資産について250%定率法を採用している企業が、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産(新規取得資産)について200%定率法を採用する場合は、同一種類で同一用途の資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取り扱われます。税制改正以外の理由は必要ないと考えられます。

第二に、250%定率法で償却している減価償却資産(既存資産)について途中から200%定率法に変更する場合は、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更には該当しません。自発的な会計方針の変更に該当するので、税制改正のみを理由とした変更は認められません。変更理由の合理性と変更の適時性に留意し、単に法人税法の改正を理由とするだけでは正当な理由に該当しないことに留意する必要があります。

先の平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産について旧定率法を採用し、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した減価償却資産について250%定率法を採用している企業が、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産(新規取得資産)について200%定率法を採用する企業が多くなることが予想されますが、会計方針の変更に該当しますので、原則として「会計方針の変更に関する注記」が必要となります。その文例を示すと、次のとおりです。

文例1

【会計方針の変更】
(減価償却方法の変更)
法人税法の改正に伴い、当期より平成24年4月1日以後に取得した有形固定資産について、改正後の法人税法に基づく減価償却の方法に変更しております。これにより営業損益、および経常利益は○○百万円減少し、税引前当期純利益は同額増加しております。

文例2

【会計方針の変更】
(減価償却方法の変更)
法人税法の改正に伴い、当期より平成24年4月1日以後に取得した有形固定資産について、改正後の法人税法に基づく減価償却の方法に変更しております。これによる損益に与える影響は、軽微であります。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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