建物附属設備・構築物に係る減価償却の改正と企業会計上の対応その他実務上の対応 ~平成28年度税制改正による定額法への1本化の実務に与える影響~

公認会計士 太田 達也

平成28年度税制改正の内容

平成28年度税制改正により、建物附属設備および構築物ならびに鉱業用の建物等の償却限度額の算定方法について、定率法が廃止されることとなりました。すなわち、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物については定額法のみが認められ、平成28年4月1日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る)については定額法又は生産高比例法によることになります(法令48条の2第1項1号から3号)。

改正後の償却方法(平成28年4月1日以後取得分から)

改正後の償却方法(平成28年4月1日以後取得分から)

建物附属設備・構築物に対する資本的支出の取扱い

既存の建物附属設備・構築物に対して平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、新規資産の取得とみなして償却することが原則となります(法令55条1項)。従って、既存の建物附属設備・構築物が定率法適用であっても、それらに対して平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、定額法が適用されます。

建物附属設備・構築物に対する資本的支出の取扱い 図1

一方、平成19年3月31日以前に取得された建物附属設備・構築物(旧定額法又は旧定率法適用)に対して行われた資本的支出については、それが平成28年4月1日以後に行われたものであっても、既存の建物附属設備・構築物の取得価額に資本的支出の金額を加算して、一体として旧償却方法で償却計算する特例(法令55条2項)の適用は認められます。もちろん原則どおり、資本的支出について新規資産の取得とみなして定額法を適用することも認められます。

建物附属設備・構築物に対する資本的支出の取扱い 図2

しかし、定率法適用の建物附属設備・構築物に対して、平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、資本的支出を行った事業年度の翌事業年度の期首に既存資産の帳簿価額と資本的支出の帳簿価額を合算した金額を取得価額とする一つの資産を取得したとみなして償却する特例(法令55条4項)の適用は認められません。それは、既存資産は定率法適用、資本的支出は定額法適用であり、定率法同士でないとこの特例は認められないからです。


建物附属設備・構築物に対して平成28年4月1日以後に行われた資本的支出

原則
(法令55条1項)

新規資産の取得とみなして定額法適用

特例1
(同条2項)

旧定額法又は旧定率法適用の建物附属設備・構築物に対して行われた資本的支出については、既存の建物附属設備・構築物の取得価額に資本的支出の金額を加算して、以後一体として償却計算することができる。

特例2
(同条4項)

定率法適用の建物附属設備・構築物に対して、平成28年4月1日以後に行われた資本的支出については、資本的支出を行った事業年度の翌事業年度の期首に既存資産の帳簿価額と資本的支出の帳簿価額を合算した金額を取得価額とする一つの資産を取得したとみなして償却することはできない。

企業会計上の取扱い

本年4月12日に、企業会計基準委員会において臨時委員会が開催され、平成28年度税制改正に対応して、必要と考えられる企業会計上の取扱いを示すことが議論され、4月22日に公開草案「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」が公表されました。

従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業において、建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法について定率法を採用しているときに、平成28年4月1日以後に取得する当該資産に係る減価償却方法を定額法に変更する場合、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとされました。この場合は、会計と税務で償却方法を一致できますので、二重計算の問題を避けることができます。

また、上記の会計方針の変更以外の減価償却方法の変更については、自発的に行う会計方針の変更として取り扱うものとされました。自発的に行う会計方針の変更として取り扱う場合は、変更の適時性と変更の適切性を個々に判断しなければなりません。

本取扱いは、原則として、公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用されます。公開草案の公表を経て、実務対応報告という形で公表される予定です。今後、企業会計基準委員会において、減価償却に関する会計基準の開発に着手することの合意形成に向けた取り組みを速やかに行うことを前提として、本実務対応報告は緊急的な対応として出されるものであり、今回に限られた対応であるとされています。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。



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