EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 太田 達也
適格請求書等保存方式の下では、登録を受けた課税事業者が交付する適格請求書および帳簿の保存が、仕入税額控除の要件とされます。課税事業者のみが適格請求書発行事業者として登録を受けることができ、免税事業者は登録を受けることはできません。登録は、所轄税務署長に申請書を提出し、適格請求書を交付することができる事業者として登録を受ける手続が必要です。登録申請は、適格請求書等保存方式の導入の2年前である平成33年10月1日から可能とされています。
平成31年10月1日から消費税について複数税率が導入され、当初の4年間については区分記載請求書等保存方式が適用される予定ですが、平成35年10月1日から適格請求書等保存方式が適用される予定です。適格請求書等保存方式では、現行とは異なった実務が求められる点に留意する必要があります。
適格請求書の記載事項は、次のとおりです(消法57条の4第1項1号から6号)。必要な記載事項を欠きますと、仕入税額控除ができなくなりますので、注意が必要です。
① 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
② 取引年月日(課税資産の譲渡等を行った年月日)
③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容、すなわち取引の内容(軽減対象品目の譲渡等であるときは、軽減対象品目の譲渡等である旨の記載を含む)
④ 税抜価額または税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額および適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(消費税額および地方消費税額の合計額)
⑥ 交付を受ける事業者(請求書受領者)の氏名または名称
上記の⑤消費税額等については、次のいずれかによって計算した金額とされます。
なお、1円未満の端数の処理については、一請求書当たり、税率ごとに一回ずつとされます。なぜこのようなルールが適用されるのかですが、適格請求書等保存方式の下では、売上税額および仕入税額の計算について現行と同じ総額計算方式だけでなく、積み上げ方式による計算も選択できるとされています。一品目ごとに端数処理(かつ切捨て処理)したものを積み上げて売上税額の計算をすることを認めますと、納税額が過少になってしまう点を考慮したものと考えられます。
この端数処理の問題については、後で解説します。
一の書類で全ての記載事項を満たす場合が多いと考えられますが、必ずしも一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば請求書に納品書番号を記載するなど)で交付されていれば、その複数の書類の全体により適格請求書の記載事項が満たされていれば、問題はないことになります(インボイス通達3-1、適格請求書Q&A問41)。
例えば、日々の取引については納品書を交付し、1カ月分の取引をまとめて請求書を交付することも考えられます。この場合は、請求書に納品書番号と金額を記載するなど、請求書と納品書との関連が明確になるようにすることが望ましいと考えられます。
適格請求書等保存方式の下では、消費税額等の1円未満の端数処理については、一請求書当たり、税率ごとに一回ずつとされます。また、端数処理の方法については、切捨て、四捨五入または切上げの中から任意の方法によることができるとされています。
ここで、先の例のように、1カ月分の取引をまとめて請求書を交付する場合に、納品書ごとに端数処理をしてよいのかどうかが問題になります。この点について、国税庁から本年11月8日付で適格請求書Q&Aの追加が公表されており、納品書に「税率ごとに区分した消費税額等」を記載する場合は、納品書につき税率ごとに1回の端数処理を行うこととなる旨が明らかにされました。納品書に「税率ごとに区分した消費税額等」が記載されていれば、1カ月分をまとめた請求書に「税率ごとに区分した消費税額等」を特に記載する必要はなく、納品書ごとの税込価額と税込価額の合計額を記載する方法によることができます。この点について、適格請求書Q&A問44の記載例などもご参照いただければと思います。
当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。