品質保証型とサービスを提供する保証との違い

2020年3月2日
カテゴリー 太田達也の視点

公認会計士 太田 達也

品質保証型とは

財またはサービスに対する保証が合意された仕様に従って機能することの保証である場合、従来と同様に、企業会計原則注解(注18)に定める引当金(製品保証引当金等)として処理することになります(収益認識適用指針34項)。当事者が意図したとおりに機能することについて保証するものであり、「品質保証型」といいます。例えば、家電製品を購入した場合、1年間のメーカー保証が付く場合がほとんどです。これは、メーカーが合意された仕様どおりの良品を提供することに対する保証といえます。財またはサービスに潜在的な瑕疵があった場合に、財またはサービスを提供する企業がそれを補完する意味合いがあると考えられます。

この品質保証型は、財またはサービスと一体のものであり、別個の履行義務とはみられないものを想定しています。取引価格を配分することはなく、将来の費用について、合理的に見積もった額を引当金に計上します。

サービスを提供する保証とは

顧客にサービスを提供する保証である場合は、追加のサービスを提供するものとして、別個の履行義務として識別することになります。例えば、通常の品質保証とは別に、顧客の責任による故障にも修理等で対応する保証とか、購入日から一定期間にわたり製品の操作方法について訓練を受ける権利を顧客に提供するといった保証は、追加的なサービスの提供として、財またはサービスの提供とは別個の履行義務であると考えられます。また、有料の保証サービスであり、顧客にその保証を受けるかどうかの選択権が与えられるような場合は、別個の履行義務に該当する可能性が高いと考えられます。

別個の履行義務と判断される場合は、取引価格を財またはサービスおよび当該保証サービスに独立販売価格の比率で配分することになります(収益認識適用指針35項)。当該保証サービス部分を契約負債として認識し、保証期間にわたって契約負債から売上に振り替えることが考えられます。

<財またはサービスに対する保証の2類型>

<財またはサービスに対する保証の2類型>

品質保証型とサービスを提供する保証の区別

このような追加的な保証サービスを含むかどうかを判断するに当たっては、例えば、次の①から③の要因を考慮するものとされています(収益認識適用指針37項)。

<追加的な保証サービスを含むかどうかを判断するに当たって考慮する3要因>

① 財またはサービスに対する保証が法律で要求されているかどうか

財またはサービスに対する保証が法律で要求されている場合には、財またはサービスが合意された仕様に従って機能することの保証であることが考えられます。当該法律は、通常、欠陥のある財またはサービスを購入するリスクから顧客を保護するために存在するものであるため、当該保証は履行義務でないことを示しています。

② 財またはサービスに対する保証の対象となる期間の長さ

財またはサービスに存在していた潜在的な瑕疵が明らかになるのは、財またはサービスを提供してから比較的短期間である場合が多いと考えられます。財またはサービスに対する保証の対象となる期間が長いほど、財またはサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて保証サービスを顧客に提供している場合が多く、この場合には、当該保証サービスは履行義務と考えられます。

③ 企業が履行を約束している作業の内容

財またはサービスが合意された仕様に従っているという保証を提供するために、欠陥のある商品または製品に係る返品の配送サービス等、特定の作業を行う必要がある場合には、当該作業は、通常、別個の履行義務とはみません。財またはサービスの引渡し時に存在していた潜在的な瑕疵に対応するための作業であると考えられるからです。

上記の要因を考慮しつつ、実態に基づいた判断が必要であると考えられます。

税務上の取扱い

法人税法上、品質保証型は別個の履行義務として取り扱わないとされており(法基通2-1-1の3)、会計と同様です。製品保証引当金については、従来どおり申告調整の対象になります。また、サービスを提供する保証についても、会計と同様に、別個の履行義務として取り扱うことが考えられます。

消費税法上、サービスを提供する保証について、資産の譲渡等の対価として収受されたまたは収受されるべき金額を課税標準として取り扱うことになると考えられます。取引価格を財またはサービスの対価と保証サービスの対価に配分するという考え方はありません。いったん売上を計上し仮受消費税等を認識し、修正仕訳により売上から契約負債に振り替えるような実務上の工夫が必要になると考えられます。

ただし、メーカー保証とは別に家電量販店が行う保証サービスの場合のように、保証料の対価の額が財またはサービスの対価の額と明確に区分して授受されるような場合は、区分して取り扱うことは問題ないと考えられます。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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