政策・規制が刻々と変化する中、軸足を据えて柔軟に対応できていますか

執筆者

Cathy Koch

EY Global Tax Policy Network and Americas Tax Policy Leader

Leader in US and global tax policy with an informed perspective on public and private sectors and a deep knowledge of the US legislative environment.

EY Japanの窓口

EY Japan Market Segment Leader, Government & Public Sector , Ernst & Young ShinNihon LLC, Partner

プロフェッショナルとしての知見と情熱をクライアントに届けます。

4 分 2020年9月4日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって政府の関与が⾒直される中、スピーディーに変化していく政策・規制環境において、ビジネスリーダーには決断⼒を持って⾏動する姿勢が求められます。

本記事は、COVID-19 エンタープライズ・レジリエンスに関するシリーズ記事です。

Local Perspective IconEY Japanの視点

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延を受け、中央省庁や地方自治体は、直接的には補助金や貸付などにより企業の継続に影響を与え、間接的には規制の変更などにより企業活動の内容に影響を与えています。
確かに企業にとってその影響を把握することは重要ですが、受け身で対応するだけでは不十分です。なぜなら、企業がサービスを提供するのは中央省庁や地方自治体ではなく、その向こうにいる市民であり、市民が望んでいることをよく把握できるからです。市民のニーズをもとに新しい政策や規制を中央省庁や自治体に積極的に提案しコミュニケーションすることが、ニューノーマルの中で新しい世界を作っていくためには必要です。

EY Japanの窓口

伊澤 賢司
EY Japan Market Segment Leader, Government & Public Sector , Ernst & Young ShinNihon LLC, Partner

パンデミックへの対応を進める中、政府は人々の命と生活を守るため市民に対して外出を極力控えるよう要請し、民間セクターに対しては賃金補助を行うなどの特別な措置を講じてきました。

回復の焦点が社会生活と経済活動に移行してきた現在、政府は経済にどのように関与するのでしょうか。経済対策に割り当てられる金額はどの程度の規模になり、この対策のプロセスが一段落したとき、企業はどのようなアクションが取れるのでしょうか。

現状にオペレーションを適応させる

パンデミックの渦中で、世界各国の政府は、⼈命を守り経済を守るための政策実施を極めて迅速に実施してきました。

そして今、政府の多くは社会活動に対する規制を緩めつつあります。ただ、緩和によって感染率が急増することになれば、再び規制を余儀なくされるかもしれません。規制の内容は国によって異なるだけでなく、国内であっても地域によって異なることがあります。この状況は消費者の行動に影響を及ぼします。また、全般的な不確実性と規制は今後も需要を冷え込ませるでしょう。

職場における従業員の安全を確保するため、出社人数の制限やソーシャルディスタンスの確保といった行政によるガイダンスや規制の見直しが続いています。ガイダンスや規制の変更は国によって異なり、国内でも地域差があるため、複数の法域で事業を展開する企業にとっては困難が生じています。

危機のさなか、多くの政府はかつてないほどの⻑期にわたって企業や家庭に財政的な⽀援を行っています。EYが130を超える法域において経済対策の実施状況を追跡したところ、全体で2,000を上回る財政・金融政策が施行されていることが分かりました。世界全体で見ると、これらの経済対策の規模はGDPの3%~39%に及んでいます¹。しかし、こうした支援もそう長く続けられるものではなく、危機が完全に収束する前に段階的に廃止されるとみた方がいいでしょう。

新型コロナウイルス感染症の影響

39%

政府が新型コロナウイルス感染症の支援策に割り当てている額は、最大でGDPの39%に及んでいます。

この危機の下、ビジネス主導で政府の関与が変化していく中、この変遷を注視し現状に合わせてオペレーションを変えるための戦略的アプローチが求められるでしょう。企業が取るべき主なアクションは以下の通りです。


  • 政策立案者との情報交換を実施する。現在の環境で企業が直面している課題、またこうした課題を軽減するための政策について、対話を開始する。
  • 事業を展開する法域ごとに、政治的圧⼒、健康データ、ソーシャルディスタンスに関するガイドラインをめぐる科学的助⾔への⽬配りを積極的に⾏う。規制の緩和・再発動を予測することは、政府のガイドラインを先取りする上で役⽴つ。
  • 社内向けの職場安全基準を制定し、法域内で当局が義務付けている基準より厳密であったとしても、組織全体で順守するよう徹底させる。業界団体と協⼒関係を結ぶことによって、新しい政策や規制が導⼊された際に、企業はより迅速かつ効果的に対応できる。
  • 経済対策の進捗状況を追跡・評価し、以下を行う。⽀援を継続的に受ける資格があるか理解すること、こうした対策が⼀段落したときに現⾏の返済・報告義務を履⾏できるか確認すること、サステナビリティを推進するための措置を講じるなど⽀援を受ける際の条件についてモニタリングすること。

 

レジリエンスを構築する

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、さまざまな物事の優先度がリセットされました。行政にとっては、人々の安全を守ること、公的経済・民間経済における主要セクターのレジリエンスを構築すること、雇用および必要不可欠な公共サービスを回復させることが最優先のタスクとされました。さまざまな教訓を得て将来のリスクへの備えを整えていることを市民に示すためには、政府には迅速な対応が求められるでしょう。それが民間セクターにとっては新たな規制であってもです。

今回の危機によって、医療機器や医薬品など生活必需品のサプライチェーンの長大化がもたらすリスクが露呈し、供給強化を求める圧力が政府にのしかかっています。供給不足となった際に最終的に責任を負うのは政府であることから、製造とサプライチェーンの国内回帰を推進または義務化して、特定セクターのレジリエンス強化を図ることになるでしょう。

企業側は海外⽣産拠点への依存度を低下させるため、無駄のないサプライチェーンマネジメントから臨機応変に対応できるサプライチェーンマネジメントへと軸⾜を移していくことを検討しています。

ほとんどの政府にとって、財政の立て直しは回復段階およびその後にわたって最も喫緊かつ困難な課題の1つとなるでしょう。政府が対策を講じる中、企業側もパンデミック収束後の、変化した税務・経済環境における不測の事態に備えなければなりません。

不確実な状況に直面して、政府はこれまで以上にレジリエンスの高い社会や経済の構築を進めています。ビジネスリーダーもまた、自らの役割を果たすべく準備を整え、以下について検討する必要があります。


  • 政策⽴案者との情報交換を継続する。危機が過ぎ去った段階で、次のような企業努⼒⽀援に関する政策について話し合う。従業員を守ること、雇用機会の創出、市場と顧客へのサービス提供、未来のためのイノベーションなど。
  • 迅速に行動する態勢を整える。政府は法規制の導入を、かつてないほどの速さで、また議論の余地なく推進するとみられる。刻々と変化する規制環境においては、従来にも増して社内全体の良好なチームワークが求められる。例えば、調達部門と営業部門が緊密に情報交換を行えば、在庫不足や過剰在庫といった問題は回避できる。
  • サプライチェーンのレジリエンスを構築して、より迅速に対応できるアジャイル・サプライチェーン・マネジメントに移行する。
  • より積極的な産業政策をとる政府によってもたらされるリスクとチャンスを評価する。
  • 財政強化を目的とした増税に備え、事業の長期的健全性を支えるに足る税務戦略を策定する。
  • パンデミック収束後の、変化した税務・経済環境における不測の事態に対する計画を実⾏する。

政策環境への理解がより一層スピーディーな適応を可能に

危機が続く限り、政府は今後も迅速な判断を下し、議論の余地なく数々の法規制を制定していくことでしょう。企業は今後出てくるであろう異なる法規制シナリオに備えるべく、新型コロナウイルス感染症の動向を注視する専任チームを社内の中枢に設置し、取締役会レベルで対策について議論し、これらの対策の責任者として執⾏役レベルの役員を据える必要があります。

新型コロナウイルス感染症危機を乗り越えるために

EYは、重要な問題提起を通じ、効果的な事業の継続とレジリエンス(回復力/復元力)を実現します。

詳しい内容を知る

迅速に対応し、力強く回復し、未来を再構築する。

EYは、企業が新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、「その先」の未来へと進むための支えとなるグローバルネットワークを擁しています。パンデミック下において政府の対策が刻々と変化する中、それらに対応するためのレジリエンス構築を支援します。EYのウェブキャストを通じて政府指導者たちの知見が視聴できます。

 

登録して視聴する

サマリー

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界中で人々の生活が一変しました。危機の性質上、政府は公共政策のありとあらゆる手段を駆使して事態に対応することが求められてきました。人命や生活に対する差し迫った脅威は去ったとしても、行政の関与区域がパンデミック以前の状態に戻るには時間がかかるでしょう。政府の施策や計画を深く理解することは、ビジネスリーダーがより先見的な形で政府に対するプレゼンスを高める上で有効です。政策立案者と対話することで、相互の理解・評価の向上につながります。

この記事について

執筆者

Cathy Koch

EY Global Tax Policy Network and Americas Tax Policy Leader

Leader in US and global tax policy with an informed perspective on public and private sectors and a deep knowledge of the US legislative environment.

EY Japanの窓口

EY Japan Market Segment Leader, Government & Public Sector , Ernst & Young ShinNihon LLC, Partner

プロフェッショナルとしての知見と情熱をクライアントに届けます。