2022年7月15日
Hands growing a young plant

デジタルプロダクトパスポート導入 循環経済実現に向けたマイルストーン

執筆者 高村 比呂典

EY Japan Assurance Climate Change and Sustainability Services (CCaSS) Senior Manager

環境安全衛生とプロダクトスチュワードシップの分野で事業者を支援。ランニングと食べ歩き愛好家。

2022年7月15日

欧州では製品や部品のサステナビリティ情報を提供するデジタルプロダクトパスポートという仕組みの導入が検討されています。サプライヤーからの情報も必要となり、日本企業も対応が求められます。

要点
  • 循環経済実現に向け、欧州に上市される製品のサステナビリティ情報を提供するデジタルプロダクトパスポート制度が検討されています。
  • 適切な対応にはサプライチェーンを通じた情報収集や、社内でのシステム・体制構築が必要となります。
  • 日本企業にも影響が想定されており、必要な場合には早めに対応することが推奨されます。

欧州では人だけでなく、モノにもパスポートが必要になるかもしれません。ただ、国籍を示す通常のパスポートではなく、モノのパスポートはサステナブルであることを示すものになります。

欧州ではグリーンとデジタルを柱としてサステナブルな社会に移行することを掲げており、グリーンに関する最も上位の政策として欧州グリーンディールが2019年に公開されています。また、循環経済を推し進めるための政策として2020年にはサーキュラーエコノミーアクションプランが公開されました。

サーキュラーエコノミーアクションプランでは以下のような方針が示されています。

  • サステナブルな製品の設計
    製品の環境影響のうち、80%は設計段階で決まるとして、サステナブルな製品設計を推進するものです。
  • 消費者および公共購買のエンパワーメント
    製品について消費者などが購買時に信頼できる情報を得て、サーキュラーエコノミーに貢献できるような機会を増やしていくものです。また、グリーンウォッシュから消費者などを保護することも含まれています。
  • 製造過程での循環性の向上
    バリューチェーンを通じてサーキュラーエコノミーに貢献するような製造プロセスを推進することとしており、例えば持続可能なバイオベース材料の推進や資源調達の透明性の向上などが挙げられます。

図 欧州のサステナビリティに関する政策構造の概要

図 欧州のサステナビリティに関する政策構造の概要

上記方針のうち、特にサステナブルな製品の設計と消費者および公共購買のエンパワーメントの2項目に関する具体的な取り組みとして、「持続可能な製品のためのエコデザイン要求に関する枠組みの規則」(以下エコデザイン規則)の案が2022年3月に公開されています。これは既に施行されているエコデザイン指令(2009/125/EC)を置き換えるものとして提案されており、従来はエネルギーに関連する製品を対象としていたところ、より広い製品を対象とするとともに、新しい要件の導入も検討されています。

エコデザイン規則の特徴的な要件の一つとしてデジタルプロダクトパスポートが挙げられます。これはバーコードやQRコードなどの二次元バーコードなど(これをデータキャリアと呼びます)をデバイスで読み取ることで確認できる情報を指すものであり、製品の上市のためにはこれらの情報要求を満たすことが必要なため、デジタルプロダクトパスポートと呼ばれるものとなっています。なお、必要な情報は製品の種類ごとに別途規則により定められますが、以下のような項目が想定されています。

(a)耐久性

(b)信頼性

(c)再使用可能性

(d)アップグレード可能性

(e)修理可能性

(f)保守・改修の可能性

(g)懸念物質

(h)エネルギー使用量またはエネルギー効率

(i)資源利用または資源効率

(j)再生材の含有量

(k)再製造および再利用性

(l)材料の回収性

(m)カーボンフットプリントや環境フットプリントを含む環境への影響(大気放出や排水、土壌への排出など)

(n)予想される廃棄物の発生量

上記のうち、懸念物質は日本でもよく知られているREACH規則のSVHC(Substances of very high concern、認可対象物質の候補物質)よりも広いものが提示されており、製品によってはサプライチェーンを通じて再度含有物質を確認することが必要になる可能性があります。また、カーボンフットプリントなども自社の情報だけではなく、サプライチェーン上の情報が必要になる可能性があります。

また、製品種類ごとにこのような情報を整理することが求められることから、情報入手などについては手順を作成した上で、製品情報とこれらの情報を関連付けてシステムなどで管理することが重要になると考えられます。

これに加え、デジタルプロダクトパスポートは分散型データシステムを想定していることから、ブロックチェーンなどにこれらの情報を提供する仕組みも求められると考えられます。

一般的にサプライチェーンコミュニケーションを通じたデータ取得や、また、社内のシステムなどの構築には長期間を要するものと考えられます。欧州にバリューチェーンを有している事業者は本規則案の成り行きを注視するとともに、必要な場合にはサプライヤーコミュニケーションや社内体制の構築を早期に進めることが推奨されます。

EYで支援できること

EYでは製品に関するサステナビリティや事業者におけるコンプライアンス活動に豊富な知見を有しており、対応が必要な事項の分析、現在のオペレーションとのギャップ分析、手順策定や教育、システム検討などまで広く支援することが可能です。

サマリー

欧州では政策として掲げている循環経済を実現するため、製品のサステナビリティ関連情報を容易に確認することができるデジタルプロダクトパスポートの導入を検討しています。これに対応するために事業者はGHG排出量、化学物質などサプライチェーン上での情報収集なども必要となるほか、社内体制の構築も求められるため、早期の準備が強く推奨されます。

この記事について

執筆者 高村 比呂典

EY Japan Assurance Climate Change and Sustainability Services (CCaSS) Senior Manager

環境安全衛生とプロダクトスチュワードシップの分野で事業者を支援。ランニングと食べ歩き愛好家。

  • Facebook
  • LinkedIn
  • Twitter