いち早くテクノロジーを導入した国々は、いち早く成果を得ています。
1. 成長と機会にフォーカス
成長機会に目を向け、デジタルを既存ビジネスに対する脅威ではなく新しい世界における効率化手段として捉えることは容易ではなく、私たちのクライアントや経営陣が克服するべき課題でもあります。
イノベーションや新しいビジネスモデルに対して現実に即した先回り的な投資を行う企業、デジタル変化を受け入れられる企業は、自らを変革し、斬新で画期的な高機能製品、サービス、体験を提供することによって地理的、業種的垣根を越えた拡大が可能になります。
ですが、CEOや取締役会は単にデジタル戦略を掲げるだけでは不十分であることをまず理解する必要があります。実際のところ、それは選択肢ですらありません。企業には、「デジタルを取り入れる」のではなく、「自らがデジタル化」する姿勢が求められます。
デジタルの主導者になるには、カスタマーエクスペリエンスを改善するための新しいツールやプラットフォームについて幅広い投資と開発 機会を受け入れます。また、既存ビジネスモデルを積極的にディスラプトするために、更に的を絞ったポートフォリオ管理とイノベーションを通して、テクノロジー投資に対する従来のROIの考え方に異を唱えることもあります。
実際に研究開発部門の領域を超えてイノベーションに取り組み、組織の全階層にイノベーションを組み込んでいる企業は、競争他社から大きく引き離して進歩しています。こうした企業は、イノベーションは製品・プロセス開発だけでなく、ブランドやカスタマーエクスペリエンス、サプライチェーン、新しいビジネスモデルの構築をも推進すると認識しています。イノベーションを研究開発の領域だけに独占的に閉じ込めてしまうのではなく、CFOを含むリーダーシップのあるメンバーにより、それら全ての部門を担当し、イノベーションを推進する必要があります。
EYは、グローバル組織としてすべての企業にデジタルディスラプションを活用してもらうことを提唱します。ただしこれは、企業という大海原でデジタルの波に乗るためにも、適切な戦略と実用的手段を持って初めて実現します。
2. 連携ネットワークの構築
デジタル主導者としての役割には、技術による負債を相殺し、パートナーシップやコラボレーションによって新しいケイパビリティを構築するための新たな手法に資金を注ぐことも含まれます。新しいデジタルエコノミーにおいては、リスクを負って競合他社よりも効果的に新しいケイパビリティを構築できる柔軟性を身につけられた企業が勝利を手に入れることとなります。
親しい友人ネットワークと同様、企業も真のデジタルエンタープライズ戦略の実現を支え、新次元への進化を可能にする外部パートナーとの強固なネットワークを築く必要があります。投資資本のある企業は、 買収によってこれが可能でしょう。ですが、どの企業もデジタルディスラプションという海の中の孤島ではありません。
例えば、どの企業もたいていはある程度のデジタル知識やアセットを社内に抱えているものですが、多くは、最新モバイルテクノロジーや人工知能、最先端アナリティクス、クラウドコンピューティングその他の新しいテクノロジーを活用するとなれば 他社との協力 が必要になるはずです。
3. データアナリティクスの力を活用
デジタルディスラプションを積極的に取り入れるもう一つの実際的方法は、高度なアナリティクスソフトウェアを使って、往々にして有効活用されていなかったり、お蔵入りになっていたりする大量の社内データ、顧客データを活用することです。
EMC社とIDC社が行った2005年から2020年を期間とする調査によると、1年に構築、複製、消費されたデジタルデータ量はこの間に300倍、つまり130エクサバイトから40,000エクサバイト(40兆ギガバイト、2020年には男性、女性、子供1人あたり5,200ギガバイト)に増加すると予測されています。その一方で、アナリティクス目的で使用されているのはこのうちごくわずかな割合にすぎません。
さまざまなグローバル企業との協働経験から、私たちEYは データアナリティクスを継続的に活用している組織は多くの場合、詳細な分析をイノベーションや目標、戦略的意思決定の情報源にすることによって、そうでない組織よりも高い成果を上げているという事実をわかっています。
パートナーシップと共同構築を軸とするこうした新しい協調的モデルへの移行は必ずしも容易ではありません。EYは先頃、こうした新しい様々な専門的世界にどう適応すべきか、クライアント企業での理解をサポートする「EY wavespace™」を立ち上げました。EY wavespace™は、成長・イノベーションを目指す拠点同士がつながるグローバルなネットワークです。このネットワークの下、トランスフォーメーションにおける根本的ブレークスルーの次の波を捉え、EYの活動領域、これまでの経験、産業セクターをまたいだ画期的な考え方を有効活用できます。
4. 将来を見越したデジタル投資戦略の構築
EY wavespace™は、変化、デジタル化、ディスラプションは、科学技術者、戦略スペシャリスト、設計者の正しいサポートを得れば企業にとって大きなチャンスであるという私たちの確信の表れです。私たちは、適切な組み合わせのケイパビリティを築き、新しいケイパビリティを手に入れるための戦略を立て、コラボレーションを形成できる企業が競争力を獲得できると考えています。
ですが、いずれのシナリオにおいても、デジタルケイパビリティについて何を目指すべきか、例えば、外から買うのか、中で構築するのかなどを明確にする必要があります。この場合、慎重に考え抜かれた体系的投資戦略が、画期的アイデアを捨て去ったり、見落としたりせず(自前で所有・運営するか、外部に委託するかによって)、最適なアセットと流通手段を確保し、規模を実現する支えとなります。
企業には、現在のビジネスで利益を得ながら、今後数年に行う将来の投資ポートフォリオを管理できる、変化に対する実利的投資方針も必要です。
全部門を対象とする統合ポートフォリオの一環として、適したデジタルテクノロジーやその人材に積極的投資を行えば、デジタルディスラプションによる企業が得られる報酬は無限大となります。
こうしたテクノロジーやディスラプティブなビジネスモデルの影響範囲は今や、コンシューマーエクスペリエンスにとどまりません。オートメーション、人工知能、機械学習、ビッグデータがミドルオフィスやバックオフィスに姿を現してからまだ日が浅く、企業にとっての実際の影響はまだ完全に実現されていません。EYでは、恐れをなすのではなく、機会を受け入れれば、メリットは膨大であると考えています。
サマリー
インクルーシブな成長には、デジタル主導者同士の連携、データアナリティクスの活用、将来のデジタル社会への投資が必要不可欠です。