企業はディスラプションを経験しながらどのように成長するのでしょうか。

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Economist Intelligence Unit

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The Economist Intelligence Unit (EIU) is the research and analysis division of The Economist Group.

1 分 2018.04.04

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EYがスポンサーをしているエコノミスト・インテリジェンス・ユニットのレポートによれば、企業が成長していくためにはディスラプションを積極的に受け入れなければなりません。

20年前にハーバードビジネススクールのClayton Christensen教授が初めて提唱し反響を呼んだディスラプティブ・イノベーションの理論が最近注目を集めています。

  • 真に破壊的で創造的なイノベーションとはどのようなものでしょうか
  • 既存のビジネスモデルをひっくり返す条件は低コストだけなのでしょうか
  • アウトサイダーにしか成し得ないものでしょうか

学者たちは、ディスラプティブ・イノベーションという言葉や、それによって実際に起きている事象に対する理論付けを認めたくないかもしれません。しかし企業のリーダーたちはセクターを問わず、技術革新による変化が既存のビジネスモデルにもたらす脅威の高まりをひしひしと感じているのです。

Christensen教授による元々の定義では、ディスラプティブ・イノベーションとは、普及している商品やサービスに対して、チャレンジャーとしての起業家がテクノロジーを駆使しながらより低価格の代替品を提供することです。また商品やサービスをより簡便に享受できる方法が出現することによってもディスラプションが起こり得ます。業種を問わず、ディスラプトする側とされる側がいます。

通常、ディスラプトする側は新規参入企業であり、ディスラプトされる側は一流の大企業であることが多く、マーケットリーダーである場合もあります(例えばビデオ業界のブロックバスター社)。

しかし 今回の調査結果からも明らかとなったように、必ずしも大企業が犠牲者になるというわけではありません。新しいテクノロジーを推進力としたビジネスモデルが素早く浸透し、リーダーであってもその地位を奪われることに気づいた企業は、規模の大小を問わず、ディスラプティブなトレンドを発見しようと常に目を光らせています。そして、その多くが自らディスラプションを起こそうとしています。

チョークの粉を手にまぶし登る準備をしているロッククライマー
(Chapter breaker)
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第1章

ディスラプションの一歩先を行く

外側から、内側から、そしてパートナーシップを通じてディスラプトする

ディスラプションを志向する一流企業の経営陣は、管理職や従業員に対して、商品や業務プロセスの見直しや、従来の企業の壁を越えて革新的なアプローチを探すよう求めています。

  • 金融サービスの例として、スペインの銀行BBVAは、キャッシュマネジメントから銀行間決済業務に至るまで、欧米のフィンテック領域のスタートアップ企業とパートナーシップ締結や買収を行っています
  • 自動車セクターでは、ボルボ、ルノー・日産、アウディなどの自社製品製造会社はみなテクノロジー企業と事業提携しながらコネクテッドカー開発に向けてさまざまな試みを行っています

照明、家電、医療テクノロジーにおいては、GEもフィリップスもオープンイノベーション構想を前面に立てて新商品開発や既存商品の改善を行っています。

M&Aやパートナーシップを通じたディスラプション

合併・買収(M&A)は、ディスラプターになりそうな企業やそのテクノロジーにアクセスするために大企業が用いてきた手段の一つです。

BBVAは2015年に英国のオンラインバンキング業界において台頭しつつあったアトム(Atom)に出資し、また2016年初頭にはヘルシンキに本社を置くホルビ(Holvi)に出資を行いました。

GEは向こう3年間に小規模なデジタル会社を買収するための資金として100億米ドルを準備したと伝えられています。

その他の例としては、すでに激しい変化にさらされたホテルセクターでは、マリオット(Marriot)がスターウッド(Starwood)を買収したように、著名な企業が規模の拡大を求めてライバルを買収したり、アコー(Accor)によるワンファインステイ(Onefinestay)の買収のように、ニッチな市場セグメントにおいてオンライン企業としての地位を確立するために買収が行われたりしています。

動きの速いデジタル企業からの挑戦に対して常に一歩先を行くために、大企業側も業界の内外を問わずさまざまな企業とパートナーシップを結ぶことについてこれまでよりもオープンになってきています。

カーシェアリングはその好例です。例えばフォード(Ford)は、アプリ開発企業、駐車場オーナー、保険会社、金融会社、地方自治体などと提携し、ロンドン周辺でフォードの車が借りられるような仕組みを作りました。ライバルであるBMW、ダイムラー(Daimler)、ホンダなどは似たようなカーシェアリングのプログラムを欧州や他の地域で実施しようとしています。

同様に、上級幹部が買収やパートナーシップを利用して手本とすべきビジネス慣行や経営姿勢を採り入れ、会社の内部にゆさぶりをかけることがあります。

しかしながら、買収や提携で獲得した事業はコア事業とは切り離されたままでいることが多く、会社が直面する危機を回避するには有効ですが、根付いてしまった社内文化を変えることにはほとんど役に立っていません。

内側からのディスラプション

自らのビジネスモデルを破壊するという過激なやり方でディスラプションに対応する企業もあります。

その例として、イタリアの電力会社エネル(Enel)は、今後は石炭火力発電への投資をやめ、将来的な投資は風力や太陽光発電などの再生可能エネルギー源に振り向けることにしました。

一方中国の家電企業であるハイアール(Haier)は、階層的なマネジメント構造をいくつかのより小さな「マイクロエンタープライズ」にすることによって、それぞれが会社の商品のデザイン、生産、販売のみならず人材や投資資金においても競争するような組織再編を行っています。

このような社内ディスラプションによって企業が試練をくぐり抜けられたかどうかは時間がたてばわかるでしょう。

海へ駆け込む泳者たち
(Chapter breaker)
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第2章

ディスラプションの時代に成長するための四つの質問

最大の敵は自己満足かもしれません

質問1:ディスラプションを予期できますか。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが調査した企業幹部の大多数が、自分たちの会社はディスラプションに関しては積極的というよりはむしろ受け身であると感じています。しかし幸いなことは、ディスラプションはあらゆる形で起きること、そしてそれに対して備えなければならないことを認識しつつ多くの企業が試練を乗り越えようとしていることです。

ディスラプションのプラス面をうまくとらえるために何をしなければならないでしょうか。

ディスラプションが素晴らしい未来をもたらすかもしれないにもかかわらず、多くの企業が依然として恐れを抱いてます。レポートによれば、企業幹部10人のうち6人が、自社の上級幹部はディスラプションはつかまえるべきチャンスではなくむしろ脅威であると考えていると答えています。同じ割合の幹部が、自社はディスラプションを自ら進めたり一歩先を行こうとしたりするよりは、ディスラプションをもたらす力に受け身で反応しているだけだと答えています。

変化のペースが速いことを考えれば、様子見をすることは命取りになりかねません。企業はディスラプションをチャンスととらえて、あえて前向きに受け入れなければならないのです。幸いなことに、多くの企業がそうしています。60%を超える企業がディスラプション戦略に財務的な投資を行っており、また同数の企業がディスラプション専門の新しい部署を設置した、または設置を検討中であると答えています。

テクノロジーがディスラプションをもたらす最大の要因ではないことを知っておきましょう

テクノロジーがディスラプションを起こす主な要因であると多くの人が常識のように考えていますが、実はテクノロジーそのものが、最大要因となるわけではありません。EIUレポートによれば、企業幹部の29.3%が規制の変更がディスラプションをもたらす最大の単独要因だと考えており、特に規制が厳しい金融セクターでその傾向が大きくなっています。

要因の2番目として、26.4%の幹部が変化する消費者行動を挙げており、ヘルスケア部門においては最大要因として挙げられています。3番目として21.8%が官僚主義や煩雑な手続きを挙げています。

テクノロジーは21.4%でディスラプションの要因としては4番目に過ぎませんが、規制の見直しに大きな影響を与えたり、消費者の新しい行動パターンを喚起したりします。

上の世代を忘れてはいけません

今後のトレンドの兆候を知りたいがために、企業は恐らくリスクを承知で若い世代の顧客に過大な注意を払っています。しかしながら、60歳以上のいわゆる「シルバー市場」の方がディスラプションを起こす可能性を秘めていることがEIUレポートに報告されています。特にヘルスケア業界の幹部はこれを認識していて、IoTやデータアナリティクスのような新興テクノロジーよりも年上世代の方がディスラプションの要因になり得ると86%が答えています。

質問2:自分の業界の外に目が向いていますか。

ディスラプションが組織の現状に課題を突き付ける中で、業界間のコンバージェンスが始まっており、ビジネスモデルにも影響が及んでいます。

コンバージェンスに備えるために何をしなければならないでしょうか。

パートナーシップモデルを採用することでディスラプションに備えることが可能

ビジネスの世界でディスラプションが急速な変化をもたらす中で、戦略提携、コンソーシアム、そして大企業とチャレンジャー企業との間のコラボレーションなどを含め、他企業とパートナーシップを結ぶ企業が増えています。EIUによれば、31.9%の企業が業界内の別企業と戦略提携を結び、また25.8%が他の業界の企業とパートナーシップを結んでいます。さらに21.1%は企業公認のベンチャープログラムの一環としてディスラプティブな技術を持つスタートアップ企業と提携を行うなど、ディスラプションを容認し採り入れていく意思を表明しています。

自社のビジネスモデルの変更に備え、積極的に実行する

ビジネスの指導者たちが業界を超えてパートナーシップを強く求めるようになる中で、既存のビジネスモデルは変化せざるを得なくなるでしょう。このようなトレンドの下、金融業界ではすでにフィンテックというディスラプティブ・イノベーションによるディスラプションが始まっています。ヘルスケア業界においても、既存の有力企業からスタートアップ企業に至るまでビッグデータや消費者向けテクノロジーを活用して患者の治療法の改善や医療上の課題解決を図ろうとしています。

このようなコンバージェンスが、これまで影響が少なかった電力業界においても、小規模な配電ビジネスや再生可能エネルギー製品などの新しいビジネスモデルによるディスラプションを引き起こすでしょう。

花火に火をつけて立ち去る人

上級幹部の10人中6人はディスラプションを脅威と考えている

質問3:企業理念をきちんと伝えていますか。

共鳴してもらえるような企業理念を明確に打ち出すことは、ディスラプティブ・イノベーションを核とする組織文化の醸成に重要な役割を果たします。

イノベーティブな企業の従業員であれば、職務上の規定や義務に強制されなくても、継続的かつ前向きにイノベーションに関わっていたいと思うはずです。ゆるぎない確信に満ちた企業理念を明確に語っていくことによって、純粋に経済的な目標よりも強い参加者意識を生み、彼らの情熱が育まれるのです。お金だけで従業員のモチベーションを高めることには限界があります。

社内競争、「ディープワーク」が可能なオフィススペース、物質的インセンティブなどはすべてディスラプティブ・イノベーションの文化の醸成に貢献しますが、経営陣が明確な目標を打ち出すことの方が貢献度は大きいと言えます。ほとんどの幹部は、イノベーションの醸成において企業理念が持つ潜在能力を評価しており、61.4%が経済的・社会的ゴールの両方を含んだ企業理念を持つことによって組織がよりイノベーティブになると信じています。

質問4:自己満足に陥らないよう努力していますか。

企業幹部は自己の認知バイアスを克服し、あらゆる産業はすべて何らかの形でディスラプトされてしまうのだということを認識しなければなりません。ディスラプションに備え適応することの必要性を理解している企業であっても、万能の対応策などは無いということを知らなければなりません。

テクノロジーをベースとし、成功確実で、ライバルを完璧にたたきのめすことが可能なビジネスモデルや製品など無いのです。また現在市場のリーダーである企業が追撃する企業を撃退することを保証する方法もありません。

今すぐビジネスで成功したとしても、将来の成功は保証されていないのですから、自己満足に陥ってはいけません。ディスラプションは、たとえ成功した企業であっても気がゆるんだり自己満足に陥ったりすることを容赦しません。ディスラプションは現実であり、どんなに守られている組織や産業であっても備えを怠らず、それに適応する準備をしなければならないのです。

レースの後でホイルシートにくるまりほほ笑む走者
(Chapter breaker)
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第3章

ディスラプションで成功を収めるための四つの重要な要素

ディスラプションに適応するためには、それに抵抗するのではなく、積極的に受け入れる視野を経営者が持つことが必要です。

過去20年ビジネスが急激に変化する中で、デジタルビジネスの挑戦者として成功した企業はほんの少数でしたし、挑戦を受けた大企業の中で衰退を余儀なくされた者もほとんどありませんでした。

EIUは特に重要な四つの要素を特定しています。

  • リーダーシップ
    大きな変革を行うときは、たとえそれが現場から上がって来たものであっても、必ずトップ自らが説明を行わなければなりません。取締役会、各業務の最高責任者、その他の上級幹部全員が異口同音に語らなければなりません。ディスラプションへの適応が改革戦略を伴うのであれば、上級幹部の1人ないしは最高指導者が責任を負わなければなりません。
  • 組織文化と企業理念
    従業員は命令されてやるのではなく、積極的に試行し、イノベーションを生まなければなりません。従業員の姿勢を変えるのには非常に長い時間がかかります。しかし経営者は、インセンティブを設けたり、チーム内のコラボレーションを阻害する要因を取り除いたりして変化のプロセスを加速させることができるのです。同様に大切なことは、目的意識–従業員が喜んで受け入れ、イノベーションを進めたくなるような価値観-をはっきり打ち出すことです。
  • 顧客
    企業は競合会社がディスラプションの根源であると考えてしまいがちです。しかし顧客の力によってディスラプションが進むことが多く、特にデジタルテクノロジーが関わる場合、その傾向が強くなります。企業は顧客の行動に起こりつつある変化に気づき、その潜在的影響を想定したモデルを準備し、それに合わせて商品そのものや収益モデルを変えられるようにしておかなければなりません。
  • トレンド
    同様に、企業は業界内を見通し、さまざまな情報の中から顧客に確実に受け入れられそうなテクノロジーを見つけなければなりません。それは勘であるとか、他のテクノロジーで保険をかけるといった簡単なことではありません。

対応の仕方として買収、パートナーシップ、組織改編、あるいはそれらの中間のものが有るにせよ、ディスラプションに適応するためには、それに抵抗するのではなく、積極的に受け入れる経営者の視野が必要なのです。

サマリー

真に持続可能な成長を実現するためには、企業はディスラプションに抵抗するのではなく、積極的に受け入れなければなりません。

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