電力の小売りの現場で、どうやって「転換点の見定め」をするか、このことで私の頭の中はいっぱいになりつつあります。つまり、デマンドレスポンスという電力ソリューション(および、それを可能にする採算性のあるテクノロジー)を提供するマーケットが成立するタイミングを正確に当てたいのです。
頭がいっぱいになってしまう理由の一端としては、実証済みのテクノロジーを使った製品がどれだけ早くディスラプトされた市場——特に電力大手が値上げを行う中で台頭するプロシューマーが自分たちの気概を見せつけようとしている市場——の期待に応えられるかということに対する知的好奇心もあります。
今まさに大きな嵐が起きようとしているのです。ディスラプション、ブロックチェーンの次なるサクセスストーリー、そして電力事業の終息という現象が、デジタル化の容赦ない浸透、そして個別の電力ソリューションの追求という現象と時を同じくして全ての市場において起こっています。
デマンドレスポンスの需要がある理由
好奇心を持っているのは私だけではないようです。さらに関心を持って状況の推移を見つめている人々がいます。2016年に全世界の統合デマンドサイドマネジメント(Global Integrated Demand-Side Management , IDSM)の市場規模は4,000万米ドルでした。2025年には12億米ドルまで拡大する見込みです。ギガワット(GW)で表すと、この間に39GWから144GWまで増加することになります。
これらの統計数字から分かることは、デマンドレスポンス・テクノロジーやそれを保有している会社に投資する企業が、以前より増加しているということです。これらの企業が投資を行う理由は以下のとおりです。
- 顧客が求めるエネルギーの効率化に対応したイノベーションを行うことによって、陳腐化のリスクを回避するため
- 企業としての存在感を維持し、新市場にしっかりした足場または優越的な地位を築き顧客基盤を拡大するため
- または将来の変化を見越して企業力を強化するため
新しい電力事業の開拓者はどこにいるのでしょうか
買収が次々に行われている一方で、奇妙なことに新しい電力市場には一匹おおかみのディスラプターが見当たりません。
このセクターにはユニコーン企業がほとんど存在しないのです。私たちが電力を購入する上で非常に重要なマスマーケットの住宅向けソリューションないしはプラットフォームもありません。本質的には何も変わっていないのです。昨年、あるいは一昨年に話題となったことが今年ようやく実現している状況です。新しい電力事業者にとって、出資者を見つけるのは困難であり、市場の有力企業との契約はそれほど多くなく、また市場に足掛かりを作ることも依然として困難です。資金提供者がお金を投資するようなプロジェクト案件がありません。投資対象となるのは企業だけです。
ただ、このような状況であっても、資金を呼び込む要素は残っています。蓄電やピーク時対策向けの市場の未来は以前より明るくなってきました。電力供給システムの間欠性は増加する一方で、業界の集まりで必ず話題になります。
例えば、大きな価値をもたらしそうな新しいテクノロジーをランク付けすると、上位には以下のようなものがリストアップされます。
- ネットワーク上でのピーク時の電力消費抑制
- システムオペレータにとってのシステムの安定性
- 電力プール制における価格調停および小売業者にとって顧客の取り掛かりをつかむこと