4 分 2018.07.03
boy celebrating victory

電力会社はなぜデマンドレスポンス・テクノロジーに投資するのでしょうか

執筆者

Matt Rennie

EY Oceania Power & Utilities Leader

Transactions partner in utilities and infrastructure. Focused on the wave of disruptive technologies and influences entering the sectors.

4 分 2018.07.03

リソースを表示

電力市場において、デマンドレスポンスが現実のものとなる「転換点の見定め」は推論で行うしかありません。しかし正しく予想できた者が勝者なのでしょうか。

電力の小売りの現場で、どうやって「転換点の見定め」をするか、このことで私の頭の中はいっぱいになりつつあります。つまり、デマンドレスポンスという電力ソリューション(および、それを可能にする採算性のあるテクノロジー)を提供するマーケットが成立するタイミングを正確に当てたいのです。

頭がいっぱいになってしまう理由の一端としては、実証済みのテクノロジーを使った製品がどれだけ早くディスラプトされた市場——特に電力大手が値上げを行う中で台頭するプロシューマーが自分たちの気概を見せつけようとしている市場——の期待に応えられるかということに対する知的好奇心もあります。

今まさに大きな嵐が起きようとしているのです。ディスラプション、ブロックチェーンの次なるサクセスストーリー、そして電力事業の終息という現象が、デジタル化の容赦ない浸透、そして個別の電力ソリューションの追求という現象と時を同じくして全ての市場において起こっています。

デマンドレスポンスの需要がある理由

好奇心を持っているのは私だけではないようです。さらに関心を持って状況の推移を見つめている人々がいます。2016年に全世界の統合デマンドサイドマネジメント(Global Integrated Demand-Side Management , IDSM)の市場規模は4,000万米ドルでした。2025年には12億米ドルまで拡大する見込みです。ギガワット(GW)で表すと、この間に39GWから144GWまで増加することになります。

これらの統計数字から分かることは、デマンドレスポンス・テクノロジーやそれを保有している会社に投資する企業が、以前より増加しているということです。これらの企業が投資を行う理由は以下のとおりです。

  • 顧客が求めるエネルギーの効率化に対応したイノベーションを行うことによって、陳腐化のリスクを回避するため
  • 企業としての存在感を維持し、新市場にしっかりした足場または優越的な地位を築き顧客基盤を拡大するため
  • または将来の変化を見越して企業力を強化するため

新しい電力事業の開拓者はどこにいるのでしょうか

買収が次々に行われている一方で、奇妙なことに新しい電力市場には一匹おおかみのディスラプターが見当たりません。

このセクターにはユニコーン企業がほとんど存在しないのです。私たちが電力を購入する上で非常に重要なマスマーケットの住宅向けソリューションないしはプラットフォームもありません。本質的には何も変わっていないのです。昨年、あるいは一昨年に話題となったことが今年ようやく実現している状況です。新しい電力事業者にとって、出資者を見つけるのは困難であり、市場の有力企業との契約はそれほど多くなく、また市場に足掛かりを作ることも依然として困難です。資金提供者がお金を投資するようなプロジェクト案件がありません。投資対象となるのは企業だけです。

ただ、このような状況であっても、資金を呼び込む要素は残っています。蓄電やピーク時対策向けの市場の未来は以前より明るくなってきました。電力供給システムの間欠性は増加する一方で、業界の集まりで必ず話題になります。

例えば、大きな価値をもたらしそうな新しいテクノロジーをランク付けすると、上位には以下のようなものがリストアップされます。

  • ネットワーク上でのピーク時の電力消費抑制
  • システムオペレータにとってのシステムの安定性
  • 電力プール制における価格調停および小売業者にとって顧客の取り掛かりをつかむこと

送配電ネットワークサービスを行う電力会社にとっては綱渡りの作業

アービトラージを行う最大のチャンスは、ネットワークの電力消費ピークを抑制するように設計されたテクノロジーにあります。現在ネットワーク会社の資本的支出の約半分は年間87時間の「ピークの中のピーク」に対応するために行われており、ピーク時の需要を平準化できれば使用者にとっては価格低下につながります。

ところがピークを無くしてしまうと、ネットワーク会社にとっては不都合が生じます。ピーク対応のために資本的支出を行えば資産ベースが強化され、資産ベースが企業価値につながるからです。ネットワーク会社が損益計算を行う際には、送配電ネットワークのために支出が可能な資本の最大額と、使用者が電力会社を変更したり自家発電に切り替えたりせずに許容できる電力料金の限界との間でバランスを取らなければなりません。

料金と企業価値が上昇していく中で、ピーク管理テクノロジーを旗印にした熱心な市場関係者が市場に殺到しているのです。

電力ビジネスの先が見えない中でとにかくやってみる

蓄電や送配電のさまざまな新しいテクノロジーを開発し販売しているあまたの企業にとって、そこにチャンスがあることは明確であるにも関わらず、明らかな勝者が出てこないのはなぜでしょうか。

どんなビジネスであれ、今までにはなかったようなソリューションの提供をゼロベースから始めていくのは昔からの課題でした。まず、課題を解決すること自体を誰かに評価してもらわねばならず、次に、実際に解決するために、資金提供を行ってくれる人を見つけなければなりません。新しいテクノロジーがこれらを一括して行うことさえできれば、デマンドレスポンス・マネジメントと新しいタイプのエネルギーに関連するテクノロジーを一挙に解決してくれるでしょう。しかしそれぞれ別個では駄目なのです。それ故に、市場の「転換点を見定める」ことが一層難しくなるのです。

転換点を見定めるということは、極めて推論的なグラフの上において、二つの正反対に働く力がぶつかり合う決定的なポイントを特定することに他なりません。X軸は現金燃焼率、つまり新しいテクノロジーをベースにした商品を開発し市場に出すために使われる資本を表します。そしてその資本は、新しいソリューションが利益を生むことを信じても良いと思ってくれる忍耐強い投資家によって提供されたものです。Y軸は、契約に定められた収益の流れが実現できる確率を示したものです。(a)は大きな電力容量を必ずしも必要としないシステムコントローラー、(b)はピーク時の消費量抑制に関心がない、または抑制する動機がないネットワーク会社、そして(c)は潤沢な資金を持っており、顧客予備軍を教育すると同時に、顧客化するためのコールセンターを立ち上げることができる小売業者を表します。

このようにして見てみると、想定される需要と使用可能なテクノロジーの交点を正確に特定することは、当てずっぽうで数百万ドルの賞金を得ようとするようなものです。

これに賭けてみたい人はいますか。

サマリー

電力市場においてデマンドレスポンスは採算が取れるソリューションですが、今のところ、この新しいチャンスをものにした勝者はいません。送配電のネットワークサービスを行う企業にとってはまだチャンスがあるのです。

この記事について

執筆者

Matt Rennie

EY Oceania Power & Utilities Leader

Transactions partner in utilities and infrastructure. Focused on the wave of disruptive technologies and influences entering the sectors.