6 分 2019.02.19
コンピューターに囲まれレポートを手に電話をかける女性

レジリエンスは高いがボラティリティーも高い市場で変化しつつある未公開株式のエグジット戦略

執筆者

Andres Saenz

EY Global Private Equity Leader

Trusted advisor to leading private equity professionals and their portfolio companies. Ardent student of consumer behavior. Marathoner. Family man.

Andrew Wollaston

EY Global Reshaping Results, Restructuring and TAS Private Equity Leader

Seasoned financial advisor and restructuring professional who has been with EY for over 30 years. Proud father of three. Poor golfer. Lover of animals and the outdoors. Interested in family history.

William (Bill) Stoffel

EY US Private Equity Leader

Transformation leader in private equity at Ernst & Young LLP. Loving husband and father to four teenagers. Avid history reader. College basketball fan.

6 分 2019.02.19

市場のボラティリティーが上昇しセクターのコンバージェンス(収束)が続いているため、取引環境が良好な中でも、未公開株式(Private Equity、以下「PE」)ファームはエグジットの価格とスピードを重視しています。

関税や貿易戦争、一律でない成長速度、そして地政学的な懸念がもたらす不透明性にもかかわらず、市場は売り手にとってレジリエンスが高く、優位性のある環境となっています。PEファームは引き続きアクティブな売り手であり、業績目標を達成した事業をエグジットして、オポチュニスティック型のアプローチに対応しています。魅力的なバリュエーションを逃さないよう、保有期間とダイベストメント戦略を精査しているのです。

「EYによるPEのダイベストメントに関する意識調査(EY Global Private Equity Divestment Study)」では、市場データから、加熱していたPEのエグジット環境が、件数は横ばいで常態化されているが、活発なペースに移行していることが明らかになりました。2018年、PEファームは世界全体で1,175件のエグジットを実施しました。これは、2017年の合計件数1,149件をわずかに上回り、2014年のピークよりも減少しています。2018年の取引額は引き続き堅調で、3,852億米ドルに達し、2017年の3,858億米ドルと同水準となりました。

同時に、IPOへの関心が高まっています。14%の企業が、最近の大規模なダイベストメントが資産の上場を伴っていたと回答しており、前年の2%から増加しています。おそらく最も重要なポイントは、今後18~24カ月間でIPOによるエグジットを予定している企業が27%に上るということです。

現在のポジションから、今後18~24カ月でエグジットをどのような方向に進めようと考えていますか。チャートによると、66%が「トレード/戦略的バイヤー」と回答しています。

エグジットの次の波に影響を及ぼすのは何か

過去12カ月間、PEファームはエグジットに関して実用的なアプローチを取っています。直近のダイベストメントの主なきっかけについて、41%が「EBITDAの目標を達成したから」、20%が「ポートフォリオ企業の競争力が低かったから」と回答しています。しかし、その他の市場原理も機能しており、エグジットの次の波に影響する可能性があります。

地政学的な不透明性とマクロ経済のボラティリティーが、今後12カ月間のエグジットの決断に影響すると、PEファームの半数以上(54%)が考えています。意思決定においては、クロスボーダー貿易協定、ブレグジット、非関税障壁、税制の変更(今後実施されるOECD/G20税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトなど)が、全て織り込まれることになります。

企業の82%が、こうした地政学的な変化により、事業コストが押し上げられると予想しています。このためPEファームは、ダイベストメントの戦略とタイミングを決定するにあたり、コストの増加を考慮する必要に迫られます。

一方で、過半数の企業(59%)が、セクターのコンバージェンスがポートフォリオに影響を及ぼすと予想しています。技術の進歩により、ポートフォリオ企業の将来の成長に向けた技術をサポートするために必要な事業戦略と設備投資を、再定義する必要性が高まっています。

PEファームは、オポチュニズム(日和見主義)が今後もダイベストメントに影響を与えると考えており、74%が一方的な買収提案にもすぐに対応する準備ができていると回答しました。このことから、計画外のダイベストメントシナリオでエグジットの価格とスピードを最大化するために、事業の早期売却に備えておくことの重要性は明らかです。

全体的に見ると、今後12カ月以内に倍数単位でポートフォリオ事業が減少する見込みであると答えたPEファームは少数(23%)ですが、同じ期間内に市場が調整局面に入ることがあれば、すぐにエグジットする用意があると答えた企業は過半数(78%)に上ります。

直近のエグジットのきっかけとなったのは何ですか。グラフによると、41%が「EBITDAの目標を達成した」と回答しています。

エグジット戦略の変化

今年の調査では、多くのPEファームにおいて、重点事項が変化していることが明らかになっています。事業を買収する際のエグジットに関する検討事項のトップ2は、市場でのポジション(54%)と潜在的なエグジットのタイミング(36%)となりました。バリュエーションに優位性のある期間が長く続く間に、買い手の焦点は有機的な成長のポテンシャル(16%)から遠ざかっています。有機的な成長のポテンシャルは、1年前には43%のPEファームにとって最優先事項でした。

エグジットのタイミングは、買収時から重要な考慮事項となっていますが、42%が売却の1年前に適切な売却時期を決定したと回答しています(昨年の61%から減少)。一方、エグジットの時期がよりオポチュニスティックになっていると回答した企業は増えています(38%、昨年の21%から増加)。

このような状況の中、PEファームは主にポートフォリオ事業と協力して戦略を再構築し、所有期間中の価値創造に努めています。ポートフォリオ事業に最も大きく関与する分野が「戦略」であると答えた企業は半数以上(58%)に上り、続いてはM&A(42%)で、その他の分野を大きく上回っています。

買収する際に考慮する、エグジット戦略の最も重要な要素は何ですか。54%が「市場でのポジション」と回答しています。

価値創造の機会はどこに

PEファームは、実務に携わるオーナーになる傾向があり、81%が最低でも月に1回、価値向上に向けて、ポートフォリオ企業と対話を行っていると回答しています。また、コスト削減と運転資本の改善が、価値創造戦略の最優先事項とされる一方で、PEファームはチャネル拡大計画の支援や、製品・サービスのラインナップの変更、ボルトオン買収に積極的に取り組んでいます。

しかし、PEファームが資金を用意している分野は他にもあります。最も注目すべきなのは、62%のPEファームが、事業のデジタル化が直近のダイベストメントにおける価値創造ストーリーの重要な要素だったと回答した一方で、ポートフォリオ企業の戦略の最も重要な要素としてデジタル面の強化を挙げたのは、11%のみにとどまったことです。

その他の分野では、PEファームが多数の事業のオーナーとしての経験を生かしていることは明らかです。ポートフォリオ企業の持続可能な成長を推進するというPEの決意を反映するように、78%がイノベーションはポートフォリオ企業の事業戦略の最も重要な要素の1つであると回答しました。

ただし、PEファームが予想しているリターンを達成しようとする場合には、自社の価値創造計画が実践されていることを買い手に示す必要があります。

直近の大規模なエグジットにおいて、価値創造ストーリーとダイベストメントシナリオの作成において重要となったのは次のどれですか。78%が「商品のイノベーション」と回答しています。

アナリティクスはエグジットの成果向上にどのように役立っているのか

データとアナリティクスを利用することで、ポートフォリオ企業の管理からエグジットの意思決定の向上まで、プライベートエクイティ・バリューチェーンのあらゆる段階で優れた成果を促進できます。しかしながら、そのためにはテクノロジーと人材の両方への投資が必要です。

ファンドレベルのアナリティクス

PEファームは、ポートフォリオ投資への入り口と出口の両方に関して、極めて重要な洞察を獲得するためにアナリティクスツールを使用しています。大多数(87%)の企業が、直近のエグジットを決断するにあたり、アナリティクスを使用したと回答していますが、その一方で、最大の価値が発揮されたのは、買収前のデューデリジェンス中とエグジットの際の売却前準備期間であったとも指摘しています。

しかし、多くのPEファームはまだ、このプロセスに取り組んでいる最中であり、データ駆動型のアナリティクスをポートフォリオレビューに一貫して適用することは、PEファームの80%(昨年の64%から増加)にとって依然として大きな課題となっています。

データの標準化もまた、PEファームが抱えている課題です。複数の業界にわたる数十から、場合によっては数百のポートフォリオ企業(それぞれ独自のKPIとレポート作成プロトコルを持つ)を管理しようとすると、全体像の把握が困難になります。しかし、企業は進歩しています。今では75%のPEファームが、ポートフォリオ全体でレポートを標準化できるポートフォリオ管理ツールの利用を開始しており、3分の2(66%)が経営パフォーマンスにリアルタイムでアクセスできるテクノロジーを使用しています。

ポートフォリオ企業レベルで

データとアナリティクスを使用して、EBITDAと成長を推進し、資産を売却に備えるにはどうすればよいでしょうか。また、売り手が買い手に価値創造ストーリーを提案する上で、アナリティクスをどのように活用できるでしょうか。

多くの企業が、データの利用方法を改善しているものの、まだ改善の余地があることを暗黙のうちに認めています。ポートフォリオ事業をリアルタイムで極めて効果的に管理し、顧客とマージン獲得の機会を活用していると回答したのは3分の1未満(30%)でした。極めて効果的にデータツールを活用して、買い手候補に向けた事業のポジショニングと検証を行っていると回答したのは、4分の1未満(22%)でした。例えば、ソーシャルメディア分析をトランザクションシナリオに適用して、ポートフォリオ全体の傾向を発見・予測できます。ソーシャルメディアチャネルからのデータを収集してレビューする「ソーシャルリスニング」を利用することで、顧客の購買パターンや好みをモニタリングしたり、評判リスクや顧客の苦情を手遅れになる前に特定し解消することが可能です。

ポートフォリオ事業のデータを、買い手候補に提供することで、強い印象を残すことができます。PEファームの66%によると、ストレステストや予測モデリングなど、高度なアナリティクスの適用によるアウトプットを含む、より詳細な情報を提供することによって、バリュエーションを裏付けし、エグジット中に確かなエビデンスに基づいた価値創造ストーリーを提供できます。売り上げの規模、顧客離れの状況、パイプラインなども重要ですが、強みと弱みの両方が分かる重要指標である顧客サービスや満足度なども、経営陣が注目する項目となるはずです。

結論 

市場は引き続き魅力的なバリュエーションで資産を取引する機会を提供しており、PEファームは、ダイベストメントに関してよりオポチュニスティックなアプローチを取ることを検討しています。

しかし、価値を最大化するには、PEファームはこうした機会が到来した際に迅速に行動できるよう、備えを固めておかなくてはなりません。また、資産獲得を競い合う買い手については、戦略性の拡大を含む変化が予想されるため、適応性を高めておく必要があります。

PEファームは次のエグジットの波に備え、ポートフォリオのレビュープロセスにおける方針のさらに厳格な適用を定めた、エグジット戦略集の作成を進めています。

それぞれの資産について、より広範な価値創造戦略を構築、実行、監視する中で、PEファームは、買い手に対して詳細な価値創造ストーリーを明確に打ち出すことができます。

アナリティクスはPEファームに大きなチャンスをもたらしますが、その多くは、まだポテンシャルが開花し始めたばかりです。アナリティクスツールを利用することで、ポートフォリオ事業の長期的な成長戦略の特定から、ダイベストメントの価値のさらなる向上に至るまで、エグジットライフサイクル全体を通じて、豊富な情報に基づいた意志決定を下す手段が得られます。

サマリー

「EYによるPEのダイベストメントに関する意識調査(EY Global Private Equity Divestment Study)」 では、レジリエンスもボラティリティーも高い市場で、PEファームがエグジット戦略にどのようにアプローチすべきかに焦点を当てます。 

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執筆者

Andres Saenz

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Trusted advisor to leading private equity professionals and their portfolio companies. Ardent student of consumer behavior. Marathoner. Family man.

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Seasoned financial advisor and restructuring professional who has been with EY for over 30 years. Proud father of three. Poor golfer. Lover of animals and the outdoors. Interested in family history.

William (Bill) Stoffel

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Transformation leader in private equity at Ernst & Young LLP. Loving husband and father to four teenagers. Avid history reader. College basketball fan.