投資撤退に向けて歩調を早めますか、もしくは今の歩みを続けますか?

執筆者

Paul Hammes

EY Global Transaction Diligence and Divestiture Advisory Services Leader

Leader in transformational global divestitures. Catalyst for profitable growth. Innovator. Value driver. Passionate about diversity in business. Husband. Father.

5 分 2019.02.12

2019年の調査によると、ダイベストメントの水準が依然としてほぼ過去最高記録を維持しています。ダイベストメントの成功のためには、ポートフォリオ管理やディールの準備が不可欠です。

900名を超える経営幹部を対象にEYが毎年実施するグローバル調査「EYのダイベストメントに関する意識調査2019」から、ダイベストメントの水準が依然としてほぼ過去最高記録を維持していることがわかります。84%の企業が、今後2年以内のダイベストメントを計画しています。

過去最大規模のダイベストメント

84%

84%の企業が今後2年以内のダイベストメントを計画しています。

ダイベストメントの水準は、地政学的懸念や経済成長スピードの違いにもかかわらず上昇しています。企業はこういった外的要因への対処法を学びはじめており、将来の投資のために資本を確保するべく、ダイベストメントを採用し、成長に向けて事業を再編しています。

成果をもたらすポートフォリオの作成

企業はまた、ポートフォリオ管理のためにより厳密なアプローチを採用しています。「EYグローバル・キャピタル・コンフィデンス調査」によると、全体の3分の2の企業は、現在少なくとも半年に一度の頻度でポートフォリオの見直しを図っていると回答しています。

ポートフォリオ管理に対するこのようなしっかりとした取り組みは効果を生み出しています。最近では、ますます多くの企業が(事業の失敗を理由としてではなく)戦略的な理由でダイベストメントを始めています。直近のダイベストメントの理由として、売却事業の競争力の弱さを挙げた企業は85%から69%へと著しく減少しました。

とりわけ、消費者性向やサプライチェーンにテクノロジーがもたらす変化に照らし、企業はキャピタル(経営資源)の課題や将来的戦略を、競合他社と対比した上で継続的に見直しするべきです。今後12カ月の間にテクノロジー主導のダイベストメントの増加を見込んでいる企業は80%でした(2018年の調査では66%でした)。ダイベストメント計画は、新規投資に向けて必要資金を確保する助けともなり得ます。事実、60%の企業が直近のダイベストメントから得られた収益を、新たな製品、市場、土地に再投資したと回答しています。

さらに、自社のダイベストメント計画はテクノロジー環境における変化の影響を直接受けていると回答した企業が、売却事業からより高額な売却価格を受け取る傾向は、そうではない企業の場合の7倍を上回りました。その理由は、こういった企業は、そうではない企業と比べると市場や自社のポートフォリオに関心を向けており、自社の運営モデルがテクノロジーからもたらされる影響に対応する準備ができていることにあるのかもしれません。

より俊敏に行動する

81%

企業の81%が自社の運営モデルの合理化を、ダイベストメントを検討する理由として挙げています。

このように戦略的ポートフォリオを変更することによって、企業は、速やかにキャピタル(経営資源)の課題を実践することが可能な、合理化された運営モデルを確保することができるはずです。より明敏かつ俊敏な組織体系に向けて取り組むことで、企業は競争優位性を獲得できるでしょう。

81%もの企業が、今後12カ月の間にダイベストメント計画に運営モデルの改善を織り込む予定と回答している理由はそこにあります。また3分の2の企業は、運営モデルの改善は直近のダイベストメントの背景要因であったと述べています。

ダイベストメントをめぐるより優れた意思決定を行うための三つの方法
  • 定期的にポートフォリオを見直し、成長に向けた戦略的領域を特定する
  • 競合他社と比較した事業のパフォーマンスや、その他ポートフォリオに対するその事業の貢献度を理解する
  • 成長や技術的イノベーションに向けてキャピタルをどこに放出し、再配分すべきかを決定する

ダイベストメントを成功させるための準備

売却事業に対して適正な価格を得るために売却のタイミングは重要です。しかしながら、3分の2近く(63%)の企業が事業を長期間保有しすぎたと回答しており、2018年の56%から上昇しています。これとは対照的に、事業売却を先延ばしにしなかった売り手企業は、そうでない企業の倍の確率でトランザクションからより適正な価格を得えていたことがわかりました。 

この状況を改善するため、売り手企業は重点的にダイベストメントに向けて事業を準備するようになっています。32%の企業が直近のダイベストメントで売却事業の価値を高めるために最も重要な要因となったのは法的構造の最適化であったと回答しています。一方で、57%が、売却事業の体制に柔軟性が欠如していたため売却価格が目減りしたと述べています。

ディールの構造に十分な柔軟性があれば、企業は市場状況、節税効果、タイムライン、独占禁止法にかかわる検討事項、そして純収益目標に従い、最適化を図る機会を手にすることができます。同様に、売り手企業は、ディールの遅延や移行に伴う費用超過を軽減するため、規制上の障壁(営業許可やダイベストメントの初期段階で要求される労働要件への対応など)に対処しなければなりません。

同様に税務について検討することを怠れば、売却事業の価値が目減りするリスクを負うことになります。調査対象の3分の2の企業は、税務リスクに対応する準備が不十分であったために前回のダイベストメントで価値の目減りを経験したと回答しています。ディール上の税務エクスポージャーを最小限にとどめるために、企業は国別の要求事項も考慮する必要があります。企業の45%は、将来のダイベストメントの過程に伴う税金は引き上げられるだろうと予測しています。

  • いつでも対応できるように“ダイベストメントの準備”を。明確に定義されたポートフォリオ戦略に加えて、適切なリソースや専門知識があれば、時機が到来したときに自信をもって行動に移すことができるでしょう
  • 税務を最優先の考慮事項にすること。租税の複雑性は、売却プロセスの初期段階で十分に対処しておかなければさらに時間がかかり、価値は目減りすることになりかねません

行動に移すまでに時間がかかりすぎる

63%

63%の企業が事業を長く保有しすぎたと回答しています。

次に到来する買い手企業の波に備えて計画する

また、売り手企業は、自社が信じている事業の価値と、買い手企業の考える買収額には、大きな差があるという現実に直面しています。3分の2以上の企業が、両者の価格には20%以上の開きがあったと報告しています。昨年の調査で同様の回答をした企業は4分の1にすぎませんでした。

このことは、売り手企業が参考データや最新のアナリティクス技術を用いて、買い手企業のニーズに対応するために、十分に練られた信頼性の高い価値のストーリーを提案する必要性がますます高まっていることを示しています。このように、買い手企業と売り手企業の間にしばしば生じる価値のストーリーのギャップから、価格評価に格差が生まれてしまうのです。このようなダイベストメントにおいては、多くの場合、事業改善と予想収益力を組み合わせて資産価値が評価される一方、買い手企業は短期的なリスクを考慮せず過去の実績に照らして算定する場合があります。 

ダイベストメントの価値を高めるためのもう一つの方法として、企業のスタンドアロン型事業モデルの提示があります。この方法を用いる売り手企業は、そうでない企業と比べて、より高い価格を達成し、迅速に成約を獲得する可能性が2倍以上になることがわかっています。プライベートエクイティ(PE)である買い手は、事業分離がすぐに可能であることの確証が得られるスタンドアロン型の事業モデルをより好む傾向にあります。さらに、セクター間のコンバージェンスを実現するために、売り手企業は事業のシナジー効果を見極め、業界の垣根を越えて事業を展開する買い手企業に、事業の整合性を明確に示していく必要があります。

記録的レベルの資本金で展開するPEファームは、積極的に質の高い資産獲得を追及しており、売却プロセスにおける競争はますます激化しています。売り手企業の74%は、PEデューデリジェンスに必要とされる時間が増加していることが課題だと回答している一方、38%は買い手のPEと連携したことにより、より高額な買収価格を得られたとしています。

ダイベストメントの価値を最大化するための四つの方法
  • 常にダイベストメントの準備を整えておく。適切なリソースと専門知識に加え、明確に定義されたポートフォリオ戦略は、時期が到来したときに確実に実行に移すための自信をもたらしてくれます
  • 税対策を検討すべき最優先事項にする。売却プロセスの初期段階で、複雑な税制度への対応が不十分であれば、さらなる時間を要し、価値が損なわれる可能性があります
  • スタンドアロン型事業モデルを提示する。PEファームには特に有効
  • 明快な価値のストーリー。成長の機会、資本要件、マネジメントチーム、そして今後の事業全般に関する明快な価値のストーリーを明確に示す

異なる視点

68%

68%の企業は、買い手企業と売り手企業の期待値の間に20%以上の価格のギャップがあると回答しています。

異なる将来に向けたリポジショニング

世界的な地政学的・経済的な不確実性の継続といった特定の課題があるにもかかわらず、M&Aをめぐる環境は引き続き有望で、回復力と競争力を備えていることが示されています。

ダイベストメントに向け重要な準備措置を講じ、拡大する買い手企業からの懸念事項に適切に対応していくことによって、企業はダイベストメントの成果を向上させることができます。

ダイベストメントの成功に向けて取り組む中で、売り手企業はトランスフォーメーションを加速させ、将来の成長に向けて既存の事業をリポジショニングし、最終的に株主、従業員、そしてより幅広いコミュニティーへの価値創造を推進することができます。

サマリー

過去最高に近い数の企業がダイベストメントを意図しています。世界中の企業が成長を目的としたリポジショニングの戦略的ツールとしてダイベストメントを採用しています。不確実なマクロ経済学的・地政学的な状況にもかかわらず、企業は有利なディール市場を体験しています。適切な戦略と運営アプローチを備えた企業は、次に到来するプライベートエクイティやセクターの枠を超えた買い手企業の波を視野に入れ、競争力ある入札プロセスを維持し、ディールの価値を最大化することができるでしょう。「ダイベストメントに関する意識調査」の全文を読む(PDF)。

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Paul Hammes

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