旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 ー 第51回 あなたのアドベンチャーを楽しもう

ライキー・ウー
フィリップモリスインターナショナル社(PMI)
東アジア・オーストラリア地域(日本を含む)担当バイスプレジデント・アソシエイトジェネラルカウンセル

Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2021年6月1日増大号に掲載された記事をご紹介します。

私は好きな仕事にめぐり合い、今、激変するタバコ業界の第一線で喫煙者により良い代替品を提供するために努力している企業に身を置いています。自分の道のりに思いをはせることがよくあります。


私はマレーシアの小さな町に生まれました。思い出に残っているのは、祖母と市場に出かけると、老若男女を問わず誰もが祖母を敬い、友人のように温かく出迎えたこと、そして仕事で留守がちな父に代わり、母が私たち姉妹を守って(と同時に、厳しく躾けて)くれたことです。


19歳のとき、法律を学ぶために単身イギリスに旅立ちました。飛行機に乗り込んだときの気持ちは今でも忘れません。家を離れる不安に涙しながらも、一方では待ち受ける新たな冒険に胸を膨らませていました。実際、私が入った大学には、イギリス人の学生と同じくらいの数の留学生が学んでいたのです。人種、文化、音楽、言葉――その多彩さに目もくらむ思いでした。


大学卒業後はマレーシアの法律事務所に就職しました。その後、数十年にわたり、さまざまな業界で仕事をしてきました。そして、どの職場においても私は普通とは少し違う存在でした。会議では女性・アジア人は私だけということもよくありました。そんな職場では、この最初に受けたショックをすぐにでも克服し、チームの一員として「その場にいる」存在感を出さなくてはなりませんでした。自分の意見をしっかり言えるよう、会議や発表、討議では常に準備を怠りませんでした。男女を問わず、私を受け入れ、支えてくれる人たちの方が多かったのは幸いでした。もちろん、私の発言を聞かなかったふりをして、その後に私と同じ発言をした男性を褒めたりする人たちもいましたが。


祖母の思いやりと共感の気持ちが私の原体験でした。祖母の家は、私にとっては困窮する人々に温かい食事を提供する「スープキッチン」のような場所でした。また祖母は、教育こそが男女を平等にすると固く信じていました。裕福でない家庭に育ち、教育を受けるのもままならなかった母も、良い暮らしをするためには教育が欠かせないと考えていました。母がいつも私に言っていた諺、「魚を与えれば一日の飢えをしのげるが、魚の釣り方を教えれば一生の食を満たせる」。おかげで、私は周りにあるものほぼすべてに好奇心を抱くようになりました。祖母と母の内に秘めた粘り強さ、信念のおかげで、どんな困難にも立ち向かうことができるようになったのです。成長してからも、ときにはミスをして叱られることもありましたが、常に愛され、許され、その経験は私に、つらくても失敗を乗り越えて二度と繰り返さないようにしようということを教えてくれました。


大きな一歩を踏み出す自信と勇気を持つこと、怖さを知ること、ときには旅をすること、自分を休ませること、好奇心を持つこと、自分を誇りに思うこと、そして次の大きな冒険を待ち遠しく思うこと――これが私の人生における信条といえるでしょう。

ライキー・ウー


ライキー・ウー(らいきー・うー)
フィリップモリスインターナショナル社(PMI)
東アジア・オーストラリア地域(日本を含む)担当バイスプレジデント・アソシエイトジェネラルカウンセル

略歴
現在フィリップモリスインターナショナル社(PMI)の東アジア・オーストラリア地域(日本を含む)担当バイスプレジデント・アソシエイトジェネラルカウンセル。マレーシア出身、その後、シンガポール、英国、スイスを経て、現在は香港在住。8都市で勤務する弁護士や専門家のチームをリードし、同時にPMIのグローバルな法務部門の戦略策定するリーダーシップチームのメンバー。PMI入社前は、マレーシアのトップ法律事務所において5年間の弁護士業務を経験。その後、民間企業において、2社の法務部門設立を含め幅広い業界の民間企業の法務部門勤務。