EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
土本 晃世
Institution for a Global Society株式会社
執行役員HR事業部長
Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2023年5月10日・20日合併号に掲載された記事をご紹介します。
ITベンチャーである(株)Institution for a Global Societyに参画し、もうすぐ4年になります。最初の1年は人事責任者として経営陣と共に組織づくりを行い、2年目からはビジネスサイドに移り事業責任者となって上場を経験し、めまぐるしい変化と組織の成長を味わった4年間でした。25年前に社会人となった当時の私が今の私を見たら、驚愕して言葉もないでしょう。なぜなら私は、リーダー的ポジションに就くことはおろか、ビジネスパーソンとしてやっていけるかも怪しい状態でキャリアをスタートしたからです。今日に至る変遷を、簡単にお伝えしたいと思います。
10代の頃、私が描くキャリアはとても明確でした。文学をきっかけにロシアに関心を持ったことから、将来はロシアの専門家になると決めていました。その考えがひっくり返ったのは、モスクワに留学した22歳の時です。社会が大混乱する90年代のロシアで、人々がイヤイヤ働き、低品質の商品・サービスに我慢する、誰も幸せにならない社会システムの残滓を味わい、急に資本主義やビジネスに興味が湧きました。狭い興味で生きていたらダメだ、未知のビジネスの世界にこそ成長があると信じて、それまでの教育投資を全て無駄にし、電機メーカーに就職しました。
ただ、友人から「あなたを採用してくれる民間企業がよくあったね」と言われるほどマイペースな「変わり者」だった私は、まずは社会人として「普通の人」になるのがやっとでした。組織で求められる協調性や相手の意を理解すること、そんな基本が私にとっては大変なことで、劣等感が拭えたのはようやく30代に入ってからです。社会人になって10年ほど経った時、例の友人から「10年でこれほど変化した人は、見たことがない」と言われ、嬉しかったことを覚えています。
自分を変化させたキャリア上の転機は、3回ありました。最初は20代で、マーケティングから法人営業に異動したことです。相手のニーズを徹底理解するコミュニケーションを鍛えられました。次は30代前半で、人事のコンサルティング企業に転職したことで、人材マネジメントの知識や、お客様の課題解決の実践力が得られました。そして40代で、現在のベンチャー企業に入社しました。常に学び新しいことに挑戦する上司やお客様、メンバーから日々、多くの刺激をもらい、イノベーションの重要性と難しさを、真に体感できたことが財産です。メンバーのほぼ全員を自分が採用し、1から事業と組織を作るかけがえのない経験をさせて頂きました。この経験を糧に、信頼と成長を大切にしつつ、より社会のために貢献したい、との気持ちが強くなってきました。
22歳でのキャリアの変節は、私の生涯で最良の決断でした。自分の視野は狭く、認知は限られており、バイアスだらけである。常にそんな認識をもって、自分を変え、環境を変えていけば、私のような劣等生であっても、一歩ずつ自分らしいキャリアを構築できる。そんな風に今は考えています。
土本 晃世(つちもと・あきよ)
Institution for a Global Society株式会社 執行役員HR事業部長
略歴
1998年、シャープ株式会社に入社、海外マーケティング、法人営業を経て、2006年、富士ゼロックス総合教育研究所(現・パーソル総合研究所)に入社。大手企業の人材・組織開発コンサルティングに200件以上、携わる。2019年よりInstitution for a Global Society株式会社に人事責任者として参画。2020年4月よりHR事業の責任者として、人材能力測定ツール「GROW360」を中心とした事業を再構築し、2021年末の上場を達成。東京理科大学オープンカレッジ「人材マネジメント入門」講師。技術経営修士。