経済協力開発機構(OECD)税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトに係る最終レポート

経済協力開発機構(OECD)税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトに係る最終レポート

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2015年10月20日
カテゴリー その他

Japan tax alert 2015年10月20日号

行動計画1~15の概要について

経済開発協力機構(OECD)は、2015年10月5日、税源侵食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)に対する行動計画における15の重点分野について、最終レポート(エグゼクティブ・サマリーはこちら)を公表しました。本アラートでは、行動計画1~15の概要について解説いたします。

行動計画 最終レポート
行動1: 電子経済についての課税上の課題 最終レポートは、2014年レポートと同様に、電子経済についての結論を述べ、進化する電子経済がもたらす課税上の課題に取り組むために推奨される今後のステップを提案しています。
行動2: ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントの効果の無効化 最終レポートは2つのパートから構成されており、ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメントに対処するための詳細な推奨事項が記載され、これらの課題について合意に達した内容が反映されています。
行動3: 外国子会社合算税制(CFC税制)の強化 最終レポートでは、有効なCFC税制に必要な構成要素について、CFC税制の「基本構成要素(ビルディング・ブロック)」を示す形で推奨されています。
行動4: 利子損金算入や他の金融取引の支払いを通じた税源浸食の制限 最終レポートは、特定の事業体(entity)(又は同じ国の中で事業を行う事業体のグループ)による純支払利子の損金算入を、利払い、税金、減価償却控除前利益(EBITDA)に特定の率を乗じて算出された金額に制限する「固定比率」ルールの導入を推奨しています。
行動5: 有害な租税慣行への対応 最終レポートは、主に以下の2つの分野を扱っています: (i) 当該税制が有害か否かの判断において適用する、「実質的な活動」の判断基準の定義付け(ii) 透明性の向上。
行動6: 不適切な状況での条約の特典付与の防止 最終レポートは、2014年9月発行の中間報告版に代わるもので、不適切な租税条約の特典の供与、及び、他にあり得る租税条約の濫用のケースに対処するために策定されたOECDモデル租税条約及びOECDモデル・コメンタリー改正案が含まれています。
行動7: PE認定の人為的回避の防止 最終レポートにおいては、外国企業が他国でPEを構成せずに事業を遂行可能にすると思われている、以下のアレンジメントや戦略の使用を防止するため、OECDモデル租税条約第5条におけるPEの定義の変更を提案しています。
行動8-10: 移転価格の側面 OECDは、行動8-10をまとめた1つのレポートで、次のような移転価格ガイダンスの改訂を取り上げています: 独立企業原則の適用に関する改訂ガイダンス、移転価格における比較可能性の要素に関するガイダンス、コモディティ取引の移転価格に関する新ガイダンス、コモディティ取引の移転価格に関する新ガイダンス、OECD移転価格ガイドライン第6章の改訂版、低付加価値グループ内役務提供に関する新ガイダンス、OECD移転価格ガイドライン第8章の全面改訂版。
行動11: BEPSのデータ収集・分析 行動11は、BEPSの対処策ではなく、BEPS行動評価に係るもので、他のBEPS行動とは異なります。BEPSの規模の推測、その測定指標の特定、及びBEPS評価の向上に向けた推奨事項の提供を意図したものです。
行動12: 濫用的なタックス・プラニングの開示 最終レポートには、義務的情報開示制度の設計について数々の推奨事項が挙げられています。義務的情報開示制度の導入の否応については、各国の選択に委ねられており、行動12の最終レポートに記される推奨事項は、最低基準(ミニマム・スタンダード)にあたるものではありません。
行動13: 移転価格文書化及び国別報告書に係るガイダンス 最終レポートは、2014年9月発行のレポートの内容に沿い、三層構造(「マスターファイル」、「ローカルファイル」、「国別報告書様式」)から成る移転価格文書化及び国別報告書の方式を提案しています。
行動14: 紛争解決メカニズムの有効性向上 最終レポートは、紛争解決のアプローチの大幅な変更を実施するという参加国のコミットメントを反映しています。最終レポートは、相互協議手続き(MAP)のメカニズムの実効性と効率性を高めることを目指した措置を含んでいます。これは、各国が取るべき具体的な行動や、法令や税務行政の執行に係る改変の提案、及びOECDモデル租税条約及びコメンタリーの変更等といったものです。
行動15: 二国間租税条約改定のための多国間協定の策定 行動15はBEPSプロジェクトにおいて展開されることになる租税条約関係の措置の実施やニ国間租税条約の改定に向けて、多国間協定のテクニカル上の可能性を検討しています。行動15の最終レポート「二国間租税条約改定のための多国間協定の策定」はこの多国間協定の現況の概観を示しており、2014年9月に発行されたレポート(2014年レポート)を概ね再校したものです。

今後に向けて

これらの最終レポートはこれまでのBEPSプロジェクトの作業の集大成となるものです。最終レポートには国際税務の枠組みの重要な要素について大幅な変更をもたらす内容の推奨事項が含まれています。OECD最終レポートが公表された今、各国が様々な推奨事項を受け入れるのか否か、受け入れるとしたらいつどのように実施するのかという点に関心が向けられています。

今後、企業は自己のビジネスモデルと事業形態に対し、最終レポートに盛り込まれた推奨事項がどう影響するか検討しなければなりません。また、事業をしている国やこれから投資を検討している国での法令や税務行政の展開を注意深くモニターすることが必要です。加えて、企業は、国別報告書の要件も含めて新しい文書提出で求められる内容に注意を向ける必要があります。必要な情報を入手できるか、係る情報が定められた様式を満たすように入手するには何をしなければならないか、報告した情報を税務当局がどう解釈するかなどについて検討しなければなりません。今まさに、企業は、国際税務における大きな変革の波への対応について、準備をする時期にあります。

※本アラートの全文はPDFでご覧いただけます。

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