英国税務当局、金融口座の自動情報交換に関するガイダンスのドラフトを公表
Japan tax alert 2015年10月22日号
2015年9月14日、英国税務当局(HMRC)は、金融口座の自動情報交換に関するガイダンスノートのドラフト(ガイダンス)を公表し、英国の金融機関に対し共通報告基準(CRS)の実施にあたっての指針を示しました。
ガイダンスの公表は、インフォーマルなコンサルテーションと表現され、「利害関係者が特定した重要な問題に対する回答がコメンタリーにない場合、HMRCは未掲載の内容でも取り扱うべき問題があればぜひ要望を寄せて欲しい」としています。ガイダンスは、共通報告基準に関するOECDのコメンタリーを補足するものであるとしており、ガイダンスの主な目的は、CRSの実施にあたって英国特有の問題に対処するものだとしています。該当する英国の主要な法律は国際税務コンプライアンス規則 2015(SI 2015/878)です。
ガイダンスは、英国の金融機関や業界団体からHMRCに寄せられた多数の問題点をカバーしており、以下(次ページ)の内容が含まれています。
- 金融機関(FIs)が新規口座特定手続きにおいて、すべての税務上の居住地について特定すること、また既存口座の特定手続きの際に、英国以外のすべての居住地国情報を特定することにより、顧客のCRSステータスの区分方法が拡大します。HMRCは、HMRCへの報告は報告対象者のみに限定されるとしており、金融機関は口座保有者を検索し、対象国の報告対象者を特定することを要求しています。
- FIsに求められているのは、口座開設時に自己宣誓書類を徴求する手続きを実施することです。ガイダンスは、これが不可能な例外的な状況に関しては、自己宣誓書類は90日以内又は他の妥当な期間内に取得することも可能としています。FIsは、その後も自己宣誓書類を取得できない口座については閉鎖する必要はないとしていますが、未確認口座として報告する必要があるとしています。これにより、HMRCから問合せがある可能性が生じます。
- 米国市民又は他国の居住者ではない英国居住者に関しては納税者番号は求められないことを明確にしています。
- 金融口座として取り扱われる上場株式保有法人に関する規則として、電子株券取引登記簿(CREST)に登記された証券については、デューデリジェンスと報告義務はCREST会員とスポンサーにあるとしています。他の証券については、HMRCは新規の株券保有者に対し、定期的なレビューを行えば規則を遵守するのに十分だとしています。
- 国際的税務申告規則2015において通知義務の詳細が導入されました。通知は口座が報告対象口座と特定された年の翌年1月31日までに行わなければなりません。HMRCは英国の現行の納税者開示法令に関する通知義務についての取組みを継続するとしています。
ガイダンスの最終章には、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)及び王室属領及び英国海外領土(CDOT)のためにHMRCにより発行されたガイダンスノートと相違する場合の取扱いが記載されています。ガイダンスでは、これまで発行されたガイダンスノートの内容が新しいガイダンスに含まれていない場合は、従来通り有効であるとしています。新しいガイダンスの公表により、各金融機関は現在採用する手続きへの影響度を分析する必要があります。ガイダンスの全文はこちらを参照してください。