
中国、クロスボーダー取引に係る初の事前税務裁定
Japan tax alert 2016年3月1日号
最近、中国江蘇省の国家税務局はある多国籍企業の組織再編について事前税務裁定を行いました。この再編は、双方とも中国非居住者企業であるグループ内の持株会社二社間の吸収合併により、被合併会社が直接保有していた中国子会社二社の持分が譲渡されたケースです。江蘇省国家税務局は当該再編計画を審査した後、本クロスボーダー再編は財税[2009]59号通達に基づく課税繰延の適用対象となる旨を確認し、書面にて当該納税者に通知しました。
近年、中国の国家税務総局(SAT)では、地方レベルの税務当局に対して事前税務裁定業務への取組みを奨励しています。報告によると、今まで中国の地方レベルの税務当局によっていくつかの事前税務裁定がありましたが、それらは全て国内の取引に対するものであり、今回のようなクロスボーダー取引に関する事前税務裁定は初めてとなります。
SATは2013年に公布した税総発[2013]145号通達において、特定の大企業に対して試験的に事前税務裁定を行うとしています。これに続いて、昨年パブリック・コメントを収集するために公布した租税徴収管理法の改定案では、事前税務裁定に係る一般的指針に関して言及されています。
これらの動向は、SATが中国において事前税務裁定制度を確立しようとしていることを示唆しています。現段階においては、中国の税務当局は、事前裁定の経験を積み、裁定目的に適した対象取引を特定し、一般的な指針とプロセスを構築するために、実例を収集しているように見えます。
事前裁定は、税務上の取扱いに関する確実性を高め、納税者の税務リスクを軽減することができると思われるので、特定の税務事項について、現地での事前税務裁定の可能性を議論するため、現地税務当局へのアプローチを検討することが考えられます。