
インド、間接税改革に向け前進 物品サービス税(GST)2017年4月導入
Japan tax alert 2016年6月20日号
間接税改革が世界的に進む中、インドも遅れていた制度改正に向け一歩前進しました。物品サービス税(GST)は、現行の間接税制を抜本的に変更するもので、最も将来性のあるインドの税制改革として期待されています。GST導入の目的は、複雑な間接税制を統一し、経済活動の足かせとなっている税を排除することにあります。
現実味を帯びてきたGST憲法修正法案(CAB)の採択
GST法の実施には、州政府と中央政府の租税権限の再調整が必要となり、そのためにはインドの憲法の修正も併せて必要となります。この種の憲法の修正は、次の手続きを伴います。
- CABがインド議会の下院(ロック・サバー)及び上院(ラージャ・サバー)で当該会期に参加している議員の3分の2の多数決、又は関連する院の50%の支持のうち、どちらか高い方による可決
- CABは少なくとも50%の州で、州議会の単純多数決による批准が必要
CABは昨年下院に上程され可決しましたが、与党政府は上院に上程又は上院で可決ができず、導入が遅れてしまいました。しかし今月になって上院の構成は大きく変わり、政府は2016年7月15日から始まる次の議会の会期中にCABの可決を確保するに足る議員数を獲得したと報道で示唆されています。その後の州議会の50%の多数決による比準は、弊社の見解では、単に形式的なもので、問題なく実現すると思われます。
モデルGST法の一般公開
州政府の財務大臣の審議委員会は、6月14日の会合でモデルGST法を承認しました。これにより、財務省はステークホルダーと連携を取ることを念頭にモデルGST法を公開し、提案やフィードバックを求めています。中央政府のGST(CGST)の枠組みはモデルGST法に基づきますが、州は州ごとにGST法(SGST)を定め、これはモデルGST法の草案に基づきますが、州ごとの免税項目を含め僅かな変更を加えることができます。
モデルGST法が発表され、ほぼすべての州政府が支持しているということはGSTの導入のプロセスにおいて大きな第一歩となり、長期間滞っていた上院での憲法修正案の可決に拍車をかけると期待されています。GSTの導入の前にすべての懸念が解消できるよう、ステークホルダーはこの機会を利用し、何かあればモデルGST法に対する提案を提出すべきだと考えられます。
GSTは2017年4月1日より実施予定
インド政府は、GSTは2017年4月から実施されると発表しています。実施にあたっては法令の作成に加え、税務行政側ではITのインフラやシステム(GSTネットワークなど)を構築する必要があります。この契約はインフォシスが獲得し、EYはこのプロジェクトのナレッジパートナーとなります。
今後の見通し
今回提案された変更を検証すると、その内容は広範囲に及び、インドで事業を展開する企業は対応が必須となります。特にサプライチェーン、価格設定、運転資本、ITシステム等は直接的、間接的な影響を受けることが予想され、GSTの導入がますます確実になってきている中、必要なGST実施策をできるだけ早く開始することが求められます。具体的には、GSTの導入がインド子会社のサプライチェーンおよび調達・販売戦略にもたらす影響の検証が急務となります。さらに、他国とは異なり、インドのGSTは企業側に高いレベルのIT準備体制を必要とします。一方で、GSTは費用の最適化、戦略的な競争優位性の獲得などの絶好の機会となり、GST対策で先手を打つ企業は制度改革をチャンスとすることも可能です。