シンガポールが2017年度予算案を公表

シンガポールが2017年度予算案を公表

Japan tax alert 2017年3月8日号

エグゼクティブサマリー

2017年2月20日に、シンガポールの2017年4月1日から2018年3月31日までの会計年度に係る2017年度予算案が公表されました。この2017年度予算案には、事業者に対する短期的な支援を行うこと、及び同国がますます複雑化し急速に変化しつつある世界を生き抜くためのさらなる耐性や適応力を獲得することを目的とする多数の税制改正が含まれています。本アラートでは、2017年度予算案における主要な税務上の取組みを要約しています。

解説

知的財産(IP)制度の導入

研究開発活動から生じるIPの利用を促すため、IP開発インセンティブ(IDI)という名のBEPSに適合した新たなIP制度の下で、IP所得にインセンティブが与えられます。2017年7月1日以降に承認される新規のインセンティブの付与と引換えに、IP所得は、既存のインセンティブ¹の範囲から除外されます。既存のインセンティブの受け手においては、かかる所得は、2021年6月30日まで引き続き既存のインセンティブの対象となります。IDIは、2017年7月1日に発効し、シンガポール経済開発庁(EDB)によって管理されます。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

研究開発プロジェクトにおける費用分担契約(CSA)に基づく支払いに係るセーフ・ハーバー・ルールの提案

納税者は、適格研究開発プロジェクトにおいて発生したCSAに基づく支払いについて、一般的な損金算入ルール²の適用に代えて、75%の損金算入を選択することができます。この改正は、2017年2月21日以降に行われるCSAの支払いに適用されます。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

金融財務センター(FTC)インセンティブの改良

認定されたFTCsの特定の取引に係る適格取引先の規定が整理されます。この改正は、2017年2月21日以降に承認される、新規又は更新インセンティブの付与に適用されます。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

グローバル・トレーダー・プログラム(GTP)インセンティブ

GTPの改正には、以下が含まれます。

a) 適格取引先との間で実施されるべき適格取引の要件が廃止される

b) シンガポール国内における消費のため又はシンガポール国内における航空機、もしくは船舶の燃料供給のために購入されるコモディティ取引から得られた現物取引の所得に対し、5%又は10%の軽減税率が適用される

c) シンガポール国内における保管、又はシンガポール国内において実施される、何らかの物理的改変、追加もしくは改良(精製、混合、処理もしくは小分けを含む)によりコモディティの付加価値を生み出すような何らかの活動に起因する現物取引の所得に対し、5%又は10%の軽減税率が適用される

d) GTPの適格性に係る実質要件が拡大される

項目(a)から(c)は、認定されたグローバル・トレーディング法人が2017年2月21日以降に適格取引から得た適格所得に適用されます。項目(d)は、2017年2月21日以降に承認される、新規又は更新インセンティブの付与に適用されます。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

金融機関(FI)が提供するストラクチャード商品に係る個人以外の非居住者に対して行われる支払いに対する源泉徴収税(WHT)の免除の延長

かかる支払いに対するWHTの免除の適用期間が、2021年3月31日まで延長されます。その他のすべての条件に変更はありません。

プロジェクト及びインフラ・ファイナンス(PIF)に係る税務インセンティブの延長

PIFに係る税務インセンティブの既存のパッケージは、(a)適格プロジェクト債券からの適格所得の免税、(b)シンガポール証券取引所(SGX)に上場している認定された事業体が受け取った適格インフラ・プロジェクトまたは資産からの適格所得の免税、及び(c)認定されたインフラ・トラスティ・マネジャー又はファンド運用会社が得た適格所得に対する10%の軽減税率を提供するものですが、これが2022年12月31日まで延長されます。当該インセンティブに係るその他のすべての条件に変更はありません。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

取消不能使用権(IRU)契約の下における国際通信海底ケーブル容量に係る支払いに対するWHTの免除の延長

IRU契約の下における国際通信海底ケーブル容量に係る支払いに対するWHTの免除が、2023年12月31日まで延長されます。

航空機リーシング・スキーム(ALS)の延長及び改良

ALSが、2022年12月31日まで延長され、かつ以下のとおり改良されます。

a) 適格付随活動の範囲が改定され、賃借人による航空機または航空機エンジンの取得における資金の提供により得られた臨時所得が含められる

b) 軽減税率が、(5%及び10%から)8%となる

項目(a)は、すべてのインセンティブの受け手において、2017年2月21日以降に得られた所得に適用されます。項目(b)は、2017年4月1日以降に承認される、新規または更新インセンティブの付与に適用されます。

加えて、航空機及び航空機エンジンの購入の資金として2017年3月31日までに締結された適格融資について行われる適格支払いに対するWHTの自動的な免除(条件あり)が、2022年12月31日までに締結された適格融資について行われる適格支払いに延長されます。より詳しい情報は、2017年5月までに公表される予定です。

総合投資控除(IIA)の延長及び改良

IIAは、認定されたプロジェクトのために海外法人に設置された適格生産設備について発生した固定資本支出に係る追加的な控除を適格法人に与えるものですが、これが2022年12月31日まで延長されます。さらに、海外法人は、適格生産設備を、主として認定されたプロジェクトの下における適格法人のための製品製造に使用することができます。上記の改正は、2017年2月21日以降に認定されるプロジェクトに適用されます。

法人所得税(CIT)リベートの引上げ及び延長

2017賦課年度³について、CITリベートの上限が20,000シンガポールドル(14,000米ドル)から25,000シンガポールドル(17,000米ドル)に引き上げられますが、還付率は納付税額の50%で変更はありません。さらに、CITリベートは2018賦課年度まで1年間延長されますが、還付率は納付税額の20%に引き下げられ、10,000シンガポールドル(7,000米ドル)が上限となります。

メディア及びデジタル・エンターテイメント(MDE)コンテンツの知的財産権(IPR)の取得に係る加速償却控除(WDA)の失効

MDEコンテンツに係る加速WDAが、2018賦課年度に係る基準期間の最終日より後(すなわち、2017年中に終了する事業年度より後)に取得したMDEコンテンツのIPRについて失効します。MDE法人又はパートナーシップは、適格IPRの取得のために発生した資本支出に対し、(2年の代わりに)5年、10年又は15年を償却期間とするWDAの適用を選択することができます。

BEPS及びデジタル経済

シンガポール政府は、デジタル取引及びクロスボーダー取引に関し、物品・サービス税(GST)上の登録を行っている国内事業者とこれを行っていない在外事業者の間における公平な競争の場を確保するため、GST制度の見直しを検討していることを発表しました。

  1. パイオニア・サービスまたは統括本部インセンティブ、および開発・拡張インセンティブ。
  2. 一般的な損金算入ルールの下で、特定のカテゴリーの支出(例えば、会計上の減価償却、ストック・オプション費用等)は否認される可能性があります。
  3. 「賦課年度」(YA)という用語は、法人に対する所得税が賦課される年を指します。ある法人の特定のYAに係る基準期間は、当該YAの前年中に終了する事業年度です。

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