トランプ米大統領の税制改革計画が15%の法人税率と源泉地国課税制度を要請

トランプ米大統領の税制改革計画が15%の法人税率と源泉地国課税制度を要請

Japan tax alert 2017年5月9日号

2017年4月26日、トランプ政権は税制改革計画の概要を提示しました。計画では15%の法人税率と米国企業の既存海外留保利益の本国還流に対する一回限りの課税(税率は明言されていません)が要請されており、スティーブン・ムニューシン財務長官は、海外留保利益課税の税率についてはその他の詳細と共に議会で協議されると述べました。

トランプ政権は海外利益の課税に関して、源泉地国課税制度への転換を初めて求めました。トランプ大統領は、選挙戦期間中の2015年に繰延課税廃止と全世界所得課税を求めていましたが、この件に関する自身の立場についてはしばらく言明していませんでした。また、ムニューシン財務長官とゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長が記者会見で概要を説明した通り、トランプ大統領の計画は下院の国境税調整案には言及していません。

個人に対する所得税税率は10%、25%、35%としており、トランプ大統領が選挙戦期間中に提案していた12%、25%、33%とは異なります。選挙戦期間中の提案は、下院共和党税制改革案であるブループリントとの整合性がありました。計画では、個人に対しては住宅ローンの支払利息と慈善寄付の控除を除き、全ての控除の廃止のほか、代替ミニマム税(AMT)と遺産税の廃止も求めています。ムニューシン財務長官は、「我々は個人に対する課税に関して、住宅ローンの支払利息と慈善寄付の控除を除く、全ての税控除を廃止する方針であり、これは抜本的な改革になると考えています」と述べています。計画では、標準控除額の倍増も求めています。

キャピタルゲインと配当に対する最高税率は20%に据え置かれ、医療保険制度改革法(Affordable Care Act)の下で施行された3.8%の純投資所得税は廃止されるとしています。

トランプ政権は記者会見で公表した資料の中で次のように述べています。「5月中を通して、トランプ政権はステークホルダーの意見を聞くための会議を開催し、下院・上院との継続的な連携を通じて、大幅な減税、雇用の創出、米国の競争力向上、そして両院での法案可決の出来る計画の詳細を策定します」

トランプ政権の発表を受けて、ポール・ライアン下院議長、ミッチ・マコーネル上院多数派院内総務、ケビン・ブレイディ下院歳入委員会委員長、オリン・ハッチ上院財政委員会委員長は次のような共同声明を発表しました。「トランプ政権が本日概要を示した原則は、連邦議会とトランプ政権が協力して米国の税制度を抜本的に見直すとともに、中流家庭と雇用創出者を21世紀の経済においてより良い立場にあるようにするための極めて重要な指針となります。個人と家族に対する税率引き下げは、彼らが苦労して手にしたお金をより多く手元に残すことを可能にし、将来に向けてより多くの投資を行えるようにします。大手企業から小規模企業に至る米国企業に対する税率引き下げは新規雇用を生み出し、米国を事業展開においてより魅力的な場所にします。我々は公平性と簡潔性に目を向けつつ、自国経済を成長させ、貯蓄と投資をさらに促進し、雇用創出者に競争上の優位性を提供し、全ての米国人に繁栄をもたらすように税法を再構築できると確信しています」

上院財政委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員は次のような声明を発表しました。「これは、1%の人々にとっては減税、大統領にとっては利益相反、米国にとっては深刻な債務、労働者にとってはパンくずのような微々たるものを与えることにつながる原則なき税制計画です。現政権は公約通りに真の税制改革計画を提示する代わりに、幸運な少数の人々にお菓子をふるまおうとしています」

ザ・ヒル紙が主催したイベントで、ムニューシン財務長官はトランプ政権が国境税調整案の要素を選好し、他の提案を嫌っている旨を繰り返し述べました。同長官は、トランプ政権が議員らに対して、現行の形でうまく行くとは考えていないが、この問題に関して議員らと協力したいと考えていると伝えたと述べました。これとは別のイベントで、ライアン下院議長は、混乱を回避するために国境税調整案を修正しなければならないことを自身が認識しており、税制改革の約80%については政府との合意があると述べました。

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