英国、2020年度予算

英国、2020年度予算

Japan tax alert 2020年3月13日号

英国、2020年度予算
2020年3月11日、英国の新政権における最初の予算が発表されました。本予算は"今日の安全(security today)"と"明日の繁栄(prosperity tomorrow)"を目指すものです。

COVID-19の発生がもたらした経済的課題が予算の中心課題となっています。首相は、50億ポンドの緊急対策基金に加え、自営業、企業、社会的弱者を支援するための70億ポンドに相当する特別措置を発表しました。これらは今年度の経済対策である180億ポンドの追加財政緩和に追加されるものです。3月の予算に続いて、支出見直し(7月)が行われ、2020年11月頃には秋季予算が組まれます。

税制上の救済措置
英国の中小企業支援を目的とした多くの救済措置が予定されていますが、日本の多国籍企業グループへの影響は限定的でしょう。なお、英国で事業を行う日本企業グループにとって、本予算における税制上の注目点は次のとおりです。

法人税率
2020年4月1日以降の法人税率は19%のままであることが確認されました。先に定められた17%への税率引き下げを取り消すこの措置は、予算決議によって行われます。そのため、決議が可決されると英国GAAPおよびIFRSの目的上は実質的に施行されますが、女王の裁可までUS GAAP上は有効となりません。次年度もこの税率は19%のままです。

デジタル課税
政府は、2020年4月から英国でデジタルサービス税(DST)を導入することを確認しています。また、英国は今後も国際法人税制の枠組み改革に関する議論に参加し、もし適切な国際的解決策が講じられればDSTを廃止するとしています。DSTは英国の収益に対し2%で課税され、英国のユーザーにソーシャルメディアサービス、検索エンジン、またはオンラインマーケットを提供する企業に適用されます。なお、対象となる事業活動による企業グループの全世界収益が5億ポンドを超え、かつ、英国ユーザーに起因する収益が2,500万ポンドを超える場合、その企業グループはDSTの課税対象となります。

研究開発費控除
研究開発費控除の割合は、2020年4月以降12%から13%に引き上げられます。政府は、データやクラウドコンピューティング関連支出をR&D税額控除の対象とするかについて検討するとしています。

大企業の告知義務
2021年4月以降、大企業は、HMRCが異議を申し立てる可能性のある税務ポジションを採る場合、これをHMRCに通知しなければなりません。この政策は国際会計基準に基づいています。通知プロセスの詳細については間もなく協議が開始されます。

無形固定資産
無形資産について、その取得前に法人税の課税対象とならないための法制が2020年度財政法案で導入されることから、今後は「2002年財政法以前」に取得した資産であるかどうかを考慮する必要はありません。ただし、2020年7月1日より前にすでに法人税の課税対象となっている2002年財政法以前に取得した資産の税務上の取り扱いは従前のとおりです。一定の経過措置が2020年3月11日から適用可能となります。

キャピタル・ロスの利用制限
政府は、キャピタル・ロスの繰越控除を年間のキャピタル・ゲインの50%に制限する新たな利用制限規定を導入します。これは2020年4月から施行されますが、譲渡損または所得の損失に対する繰越欠損金の控除限度額は従来通り500万ポンドのままです。2018年10月29日に導入された租税回避行為条項の法制とともに租税回避防止条項が制定されます。

キャピタル・アローワンス(税務上の減価償却)
構造物および建物の減価償却(SBA)の割合は、2020年4月から2%から3%に引き上げられます。このアローワンスは、2018年10月29日以降に発生した新しい非居住用構造物および建物の適格建設費を定額法で償却できるようにする救済策です。また、2020年3月11日から施行される規則上の変更があり、研究開発費控除が利用可能な場合に二重救済を避けることを目的としており、構造物または建物の使用が開始された初日に救済を許可し、正当かつ合理的な基準で費用を配分することができるというものです。

銀行へのサーチャージ
英国法人税の課税対象となる銀行(ビルディングソサエティを含む)に適用されるサーチャージとして利益に新たな調整を導入するための法案が公表されました。現在、非銀行会社から銀行に控除可能なキャピタルロスを移転するための措置については、将来の資本利得を減らすために使用される場合は無効にされています。本改正は、この無効とする措置を、年内の資本利得を減額するために使用される控除可能なキャピタルロスの移転に拡張します。本改正は、2020年3月11日以降に発生する資本利得から差し引かれる控除可能なキャピタルロスに適用されます。

ファンド規制
資産を保有するためにファンドが使用する会社の税務上の取り扱いの変更が、これらの企業にとって英国をより魅力的な場所にすることができるかどうかを検討するためのコンサルテーションが発足しました。これは、政府が2020年中に実施する英国のファンド規制の広範なレビューの最初の第一段となるものです。この広範なレビューでは、直接および間接税、および対象となる政策変更の事例を検討することを目的とした規制の関連分野が対象となります。また、ファンド管理手数料のVATの取り扱いや、英国のファンド規制のその他の側面についても検討します。

間接税
2021年1月1日からのEU及びEU以外の輸入品に係る輸入VATに対する会計処理の適用を延期
:政府は、2021年1月1日(英国のEU離脱移行期間の終わり)から、登録企業が、EUを含むすべての国から輸入する物品のVATを定期VAT申告で処理できることを確認しました。

コールオフストック法制導入の確認:企業が他の加盟国の顧客に商品を移送する場合、法令(すでに草案として公開されている)により、企業は商品が利用されるまでVATの会計処理を遅らせることができます。これにより、サプライヤーは仕向け地の加盟国に登録する必要がなくなります。この措置は、2020年1月1日から実施されます。

全体的な動向としては、COVID-19の流行がもたらす経済の不確実性について安心感を与えること、間接税の分野でEU離脱に備える一方で、英国を投資と研究開発にとって魅力的な場所に保つために財務省がどのような増税が可能かということに焦点を当ててきました。EYは、これらの提案された変更が業務に与える影響を評価するとともに、発表されたさまざまな協議に寄与することを望むクライアントをサポートし、日本企業の皆様に支援を提供いたします。