機能特性がモデルの定義に該当するか(横軸)
まず第1の切り口として、対象の機能特性に基づいて、モデルの定義に該当するかどうかを見極めます。該当したものはモデルインベントリの管理対象候補となり、定期的に用途や利用状況、適用範囲などの情報を更新し、継続的に管理強度の見直しが行われることになります。
従来の金融工学のモデルのイメージから、モデルとは、確率モデルや機械学習を含む統計モデルを用いた比較的複雑なものに限られるという見方もありますが、本原則の適用に当たっては、計算の「複雑さ」にとらわれず、前述した二つの「不確実性」の評価を先入観なく行うことが鍵になると考えられます。そうすると、しばしば単純計算と見なされがちな条件一致や四則演算などのロジックだけを用いている機能においても、管理対象とすべきモデルは少なからず出てくる可能性があります。
例えば、AML(アンチマネーロンダリング)の「疑わしい取引」の検知の中で、一定のシナリオ条件に該当するか(例:直近海外向け振込数がX回以上)について口座のモニタリングを行い、該当すれば警告する、という機能があったとします。この場合、本機能は、設定したシナリオ条件に合致するかどうかの条件一致判別にすぎず、いわゆるモデルではない、と見なされがちかもしれません。しかしながら、本機能から得られるアウトプットは、最終的な真偽の確認ができない、疑わしい取引の推定結果であり、「アウトプットの性質による不確実性」を内在していると見なし得ます。また、出力される警告は、設定するシナリオ条件によって大きく異なり得るため、「モデリングによる不確実性」も存在していると言えるでしょう。
目的・用途の影響度・重要性を勘案した対応優先順位(縦軸)
対象が拡大するとはいえ、全てのモデルに対して一律の管理を一斉に始めようとすることは現実的ではありません。このため、優先順位を付け、段階を踏んで対応していく金融機関は多いとみられます。このために、第2の切り口として、調査対象の目的や用途から、モデルの不適切な利用が金融機関のビジネスに対して引き起こす影響ならびにその重要性を評価します。
具体的な評価の観点の例としては、以下が考えられます。
表2:モデルのビジネスにおける影響度・重要性判断の考え方の例