日本の日常生活は、緊急事態宣言の解除、そして、日本政府の専門者会議が提言した「新しい生活様式」を受け入れるに従い、「正常化」に戻りつつあります。
今後の消費者行動として生まれた5つのセグメントにおいても、日本は「正常化」セグメントが38%と最も多く見られました。中国では「選択して贅沢」、グローバルでは「質素な生活」が最も多いセグメントです。

つまり、コロナ危機に対する日本市場は、中国やグローバルと異なり、生活様式が変化しているものの「通常通り支出を続ける」から「正常化」に向かう消費者が大半であると言えます。
中国の消費者行動は、COVID-19の収束段階を踏まえた先行指標の可能性があると考えられてきましたが、日本市場は、収束後も中国やグローバルと異なる消費者行動となり、経済的な回復シナリオも異なる可能性も出てきました。
ビジネスリーダーは、日本の消費者行動の変化と感染症の収束段階を追跡し、消費行動の回復の強さや時期、感染症の第2波・第3波を考慮したビジネスシナリオ策定を行うことが重要です。そのビジネスシナリオを継続的に見直しすることで、今後の重要な経営判断に資する洞察提供、対応策の影響予測およびステークホルダーへの説明が可能となるでしょう。
COVID-19の影響により、商品の在庫や品質を購買基準として重視
日本の消費者は、COVID-19により、マスクやトイレットペーパーなどの品薄、マスクの粗悪品の流通など、購買活動での混乱を経験しており、必需品を購⼊できるか、さらには商品の品質に対して不安を感じています。
日本市場の購買基準は、グローバルと比較して、商品の在庫や品質をより重視しています。

消費財・流通企業にとっては、サプライチェーンの強化により商品の在庫を確保し、主力商品の品質・信頼性を訴求できるようにマーケティングを最適化することが重要です。また、消費者の購買基準の変化に伴い、商品ポートフォリオや価格設定の見直しも必要になるでしょう。
COVID-19収束後は、オンライン購入の意向は高まる
パンデミックの初期段階において、日本での 「オンラインでより多くの商品を買う」割合は、グローバルと比較しても、高くありませんでした。
COVID-19収束後は、食料品、日用品をオンライン購入する高い意向を示しており、グローバルとほぼ同じ割合です。一方、店舗で「注意を払い購入(67%)」、「店舗でまとめ買い(58%)」のように、店舗で購入する意向も引き続き高い傾向を示しています。

消費財・小売り企業は、 COVID-19収束後を見据えて、既存のチャネルとの整合性を取りつつ、新たなオンライン販売のビジネスモデルを構築し、収益性を確保することが重要です。特に消費財企業は、D2Cプラットフォームにより、消費者にモバイルアプリを通じた非対面販売の機会を提供し、自社の商品を中心としたエコシステムを構築することを検討すべきでしょう。
新たな働き方を受け入れる一方で、ワークライフバランスに懸念
日本の回答者の半数以上は、在宅勤務が増加したと答えており、グローバルと比較しても高い割合を示しています。
日本における懸念事項は、「支出をより増加」は働き方の変化に積極的なセグメントでありますが、「ワークライフバランスが悪化する」と考える割合が「改善した」と考える割合より高い傾向を示しています。

企業は働き方改革として在宅勤務を継続するとともに、従業員のワークライフバランスや生産性をモニターし改善していく仕組みを構築することが重要です。リモートワークの定着化に向けては、Web会議のツール導入にとどまらず、チーム内のルール作りや組織での信頼関係を醸成し、社員の不安感を減らすことが求められていくでしょう。
サマリー
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、日本の消費者の日常生活は影響を受け、その価値観が変化しています。企業は、日本の消費者行動の変化をビジネスモデル再構築の機会と捉え、消費者の不安を解消するべく、サプライチェーン強化、オンライン販売チャネル再構築、リモートワーク定着化といったデジタルシフトを加速させることで、この状況へ適応できるでしょう。