2018.11.16
freight ship with cargo containers

世界貿易の混乱によって、サプライチェーンや業務モデルの課税はどうなりますか。

執筆者

Gijsbert Bulk

EY Global Director of Indirect Tax

Seasoned indirect Tax Partner. Serving clients in Amsterdam and beyond. Litigator. Husband. Father of four boys. Chess player. Runner.

Franky De pril

EY EMEIA Global Trade Leader

Helping clients navigate global trade.

大平 洋一

EY Asia-Pacific Indirect Tax Leader

企業がすぐに実行できる、実用的な結果志向のソリューションを提供。

2018.11.16

税務担当役員は、米国の貿易政策やブレグジット(英国のEU離脱)がビジネスの世界に不確実性をもたらし、サプライチェーンを経営幹部レベルの議題にまで押し上げたと語っています。

世界貿易は2016年に転換しました。その年に英国民はEU離脱に賛成票を投じ、ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領になりました。

不確実性を測定するニュースや政策サイトを追跡調査している「Global Economic Policy Index」によると、この二つのイベントが引き起こした政治・経済的な不確実性は、2008~09年の世界金融破綻時の不安定性を上回っています。一連の不吉な貿易戦争の高まりの中で、各国は互いに競い合っています。ある統計によると、 米国の貿易政策がますます重要性を増すのに伴って、世界経済政策の不確実性は、2018年初から急速に高まっていると指摘しています。

トランプ大統領は、2017年に「アメリカ・ファースト」戦略を宣言し、「公正な二国間貿易取引が米国全土に雇用と産業を取り戻す」と唱えました。これは、米国のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの脱退、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、さらに、中国、メキシコ、カナダ、EUとの輸入関税引き上げなど、一連の国際貿易協定の変更につながっています。 

ブレグジットをめぐる取引は、2018年11月25日にEUによって承認されましたが、 最終合意には、さらに越えなければならない高いハードルがあり、依然として深刻な不確実性が残ったままです。その取引は、12月に英国議会、2019年初に欧州議会の承認を得る必要があります。

このような貿易摩擦は、米国の歴史的な税制改革に並行しており、ほぼ40年ぶりに法人税率が引き下げられました。

現在、多国籍企業の間では、国境を越えたビジネスをどうするかの議論がなされています。関税や諸改革などによって、これまでにない複雑性がもたらされましたが、その複雑性は、長年、なかったことです。
Ute Benzel
EY EMEIA Tax Leader
(Chapter breaker)
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第1章

サプライチェーンのインパクト

最高経営責任者、最高財務責任者は、製品とサービスのフローに関心を持っています。

複雑なグローバルサプライチェーンに依存するビジネスの世界に対し、この曖昧さは綿密にモニターされています。WTO(世界貿易機関)は、「貿易摩擦の段階的な拡大によって、企業経営判断や投資決定はすでに影響を受けている」とした上で、世界貿易量が昨年4.7%、今年4.4%、来年4%に減少する予測だと警告しています。一方、IMF(国際通貨基金)は、世界のGDP成長率予測を3.9%から3.7%へと下方修正しました。

この状況を企業が先を争って理解しようとするのに伴って、いまや企業内の貿易担当本部長、サプライチェーン管理本部長、規制・法令遵守担当幹部および税理士たちに、スポットライトが浴びせられています。

カナダのEY Global Trade LeaderであるDalton Albrechtは、「NAFTAが非関税貿易を行ったり、EUが一つの経済圏で機能したりする世界では、世界貿易の機能は、しばしば見逃されてきました。ブレグジットの問題点もNAFTA/USMCAの問題点もありませんでした。支払われた関税は多くなく、関税法遵守の問題点もあったにせよ、大いに注目されることはありませんでした。しかし、現在、より多くの法規制(関税ルールの)や支払うべき通関法の施行が必要になり、企業は見逃すわけにはいきません」と述べています。

その状況によって、サプライチェーン経営幹部の重要性や関連する組織機能の重要性が、企業の経営幹部レベルに注目させるまでになっています。

私たちは、日常業務をこなす営業の中堅幹部、サプライチェーンやロジスティクスおよび貿易担当部長の組織機能の方向転換を見てきました。入力データは最高経営責任者や最高財務責任者から入ってきます。彼らは企業に与える影響は何かということをもっと可視化させ、しっかり理解できるようにしたいと望んでいます。また、彼らはますます前向きになり、これから取って代わるものは何か、新しい市場に進出している他社の戦略や取り組みと連携する方法を理解しようとしています。
Michael Leightman
EY Global Trade Leader, US Southwest Region

EY UK Global Trade LeaderのMarc Bunchは、次のように付け加えています。「2018年夏以来、上級管理者たちはこう言っていました。『もはや問題を先送りすることはできません。その結果を学ぶために待つのではなく、断行しなければなりません』と。政治家は日常業務にかまけずに方針を変えることができますが、経営トップたちは、異なる規制に従うための送り状の書式を変えるような、ごく単純なものでも数カ月かかってしまうことが分かっています」

(Chapter breaker)
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第2章

自らの安定性を創り出すこと

「パラダイム・シフト」とは、貿易の混乱がすっかり定着しているということです。

貿易の混乱はあたかも定着したかの観がありますが、企業経営としては、この不安定な世界で自らの安定性を創り出さなければなりません。「その不安定性が一時的ではないことを、人々は気付き始めています。それはパラダイム・シフトであり、貿易の混乱は今後も続くことが分かっているということです」と。

2018年10月のEYによる600人の税務担当役員の世論調査によると、52%の人が米国の貿易行動はビジネスに「穏やか」ないし「重大な」影響力を与えていると言います。また41%は、この状況が6~12カ月続くと予測し、18%は2年以上続くと言います。さらに20%の人は「不安定性は度を超えている」と言います。

EYによる税務担当役員の調査 2018年10月

52%

の回答者は、米国の貿易行動はビジネスに「穏やか」ないし「重大な」影響を与えていると感じています。

「大きな課題は、この貿易戦争がどれほど長く続くかということを知ることです」と、EY JapanのIndirect Tax Leaderである大平洋一は話し、こう続けました。「貿易戦争は本来、政治的なものであり、選挙(2018年11月、米国の中間選挙)によって、6~12カ月後に変化があるでしょうか?もしもそうであれば、たとえ25%の関税率が課されても、貿易戦争を乗り切る覚悟をするかもしれません。しかし、もしも3年、5年、あるいはさらに長期に続くとすれば、現在の製造設備について、やるべきことを決める必要があります」

Albrechtはこう付け加えています。「多くの人々は、不安定性と変化のレベルによっては、ヘッドライトに照らされた鹿のように、立ちすくんでしまいます。しかし、世界中の経営トップが、製品・サービスの活動を維持するように行動すべきことを受け入れ、政治家たちの策謀にかまけずに、すぐさま行動すれば、事態はゆっくり変化します」と。

「いつ、何が起こるかはっきりしない状況に、企業はどう対応すべきか」とBunchは問います。「分からないことを憶測するのではなく、はっきり分かっていることや、かなり確かなことに照準を合わせるべきです」と。

ワシントンにベースを置くEYの計量経済・統計グループのJames Mackieは、異なるシナリオでの取り組みを勧めています。「輸入業者ないし輸出業者として最近の関税に強く影響を受けている企業は、その影響について、その範囲の拡大や度合いの上昇などを図表にしておくべきです」

「いつ、何が起こるかはっきりしない状況に、企業はどう対応すべきか」「分からないことを憶測するのではなく、はっきり分かっていることや、かなり確かなことに照準を合わせるべきです」と。
Marc Bunch
EY UK Global Trade Leader
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第3章

何に焦点を合わせますか

ブレグジットへの準備と、物資を動かし続ける方法

ブレグジットに対する準備をしている企業が合わせるべき焦点は、三つに集約されます。

  • 規制: どのようなライセンスを持っていますか?それらはブレグジット後にも使うことができますか?
  • サプライチェーン: 要請される厄介な国境・関税宣告に対して、どういう準備ができますか?
  • 人: 国民は面倒を見てもらえますか?

Bunchは次のように述べます。「必ずしも経営管理や関税などのコストに焦点を合わせる必要はありません。

その準備には、いくつかの非常に実践的な課題が含まれています。英国のフェリックスストウ港は、多くの税関職員が雇われ、EU域外からの物資を扱うのに使用されています。その港より繁忙なドーバー海峡の港がほとんどEU域内通関物資を扱い、税関職員も少ないのに比べると、厄介な国境の取り扱いをしているフェリックスストウ港は、もっと規模拡大をしてもいいかもしれません。

米国/カナダ国境の両サイドでは、関税の影響を緩和することに注意が向けられてきました。これには、自由貿易ゾーンないし保税倉庫を使って、課税猶予の選択を考えることによって、税込み価格を引き下げられるかどうか、また、すでに支払った関税をいくらか返済要求できるかどうかという点も含まれます。ライトマンはこう説明します。免税を頼りにはできませんが、米国は鉄鋼・アルミ業界からの1年間の関税を免税する要求の55%を認めています、その一方で、中国からの関税を免税する要求には、わずか10%の免税を認めています。

米商務省、2018年7月

55%

鉄鋼・アルミ業界からの1年間の関税の免税要求の55%が認められました。

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第4章

関税分類がますます急務となります

あなたの事業を部分的に再配置する時かもしれません。

Albrechtはこう言います。これまで関税分類には誰も注目しませんでした。しかし、特定の品目にさまざまな関税が課せられる以上、その分類を正しく理解することは重要なことです。全てが非関税の時には重要でなかったでしょうが、25%の追加関税があるかないかの違いがあるとなれば、分類をはっきりさせておかなければなりません」と話します。

長期的には、注目すべき範囲は広がり、事業の部分的再配置を真剣に考慮する必要があります。Latin American Business CenterのEY Global Trade ServiceのリーダーであるArmando F. Betetaは、こう述べます。「ブレグジットの不安定性に関連して、私たちが最近、見聞きしているのは、クライアントの数社が製造部門や組み立て部門を他国へ移転することを計画していることです。例えば、彼らは、これまで英国からラテンアメリカに輸出していたのを、メキシコ向けに代替させる考えです」

「私たちはクライアントが広範囲なシナリオを評価するのを手助けするとか、彼らが他の場所にある製造業者のところへ移動してもいいという柔軟性があるかどうか注目しています。その場所はクライアントにとって影響がそれほど深刻でなく、先行き見通しもよさそうなところです。私たちは、また彼ら自身のグローバルな拠点間の移動を査察する手助けもしています。そうすることによって、たとえその業務に段階的なコスト上昇があったとしても、関税の影響は緩和されるかもしれません」

彼は、ある電子機器メーカーの例を挙げています。その企業は米国から中国に製品を供給しているので関税を課されています。その企業はメキシコに工場があり、ラテンアメリカに製品を供給していますが、まだ米国には供給できていません。また欧州市場に供給している欧州工場もあります。 新しい解決法は、生産シフトを行うことによって、欧州工場は米国に製品を供給し、中国は欧州に供給する。その一方でメキシコの業務は、米国製の製品を供給するという長期目標の下で品質向上が図られます。

「それは業務見通しからすると効率が低く、コスト高になる可能性がありますが、中国製品に課せられる米国の関税よりは安くて済みます。すなわち、多くのシナリオを含む計画があり、その会社が他の事業機会を探すことと同じように、国際的な税制改正の見通しから会社をどう設立するかなど、重複し始める多くのシナリオを含む計画があります」とLeightmanは説明しています。

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第5章

解決策を見つけることはグローバルパズルです。

業務および機能組織における戦略的価値を見つけましょう。

サプライチェーンの地図作製や選択肢の観察と同じプロセスは、太平洋の反対側でも起こっています。「次に何が起こるかということや、企業によって異なる対応能力についての心配など、多くの不安があります」と、Bryan Tang、中国担当のEY Global Trade Leaderは話します。 

ハイテクを利用すれば、素早くできるでしょうが、それを使う能力は誰にもあるわけではありません。製品の部品は米国で生産されますが、その製品の需要は中国にあるとすると、その企業にとって解決策を見つけるには限界があります。
Bryan Tang
中国担当のEY Global Trade Leader

選択肢の分析、業務の移転には時間がかかります。そこで、中間的な解決策として、いくつかの企業は貿易会社の設立を考えています。例えば、米国にあるカナダ営業所、あるいはドイツにある英国子会社です。

企業はもはや政治家に期待していないことは明らかです。彼らは自らの確実性を創り出しています。「企業は政治に頼ることはできません」とBunchは言います。

在庫を積み増すことができる業界は、在庫を積み増すでしょうから、港は忙しくなり始めます。彼らはEUからの輸入を増やしますから、関税が課される国境があれば、港の繁忙は緩和されます。政治家がどのような決定をしようと、港は2019年1月初めにもコンテナ満載の船で非常に忙しくなるでしょう。
Marc Bunch
EY UK Global Trade Leader

企業は強制的に変化を強いられても、彼らが実行した変化は、かつてバックオフィス機能の中にあった業務を、企業戦略の心臓部にまで投げ入れた、サプライチェーンに繰り返し焦点を合わせることによって、年月を経て、その成果を享受することができます。

Leightmanはこう語ります。「このことは、何が運営できるのか、あるいは職員でも本当は何らかの戦略的価値を持っているのではないかということを、経営幹部クラスの役員たちに気付かせる手助けになりました。私たちは、企業がもっと前向きになる方法を進んで利用していることが分かり始めています。私たちは、彼らが、それら貿易戦略のいくつかの利用方法や、長年の間、放置され、取り残されてきた考えを計画に取り入れようとしていることを承知しています。いまや、関税、その他の貿易混乱によるコスト上昇の影響があるため、彼らは機敏な行動と競争力維持のために、すぐさまやらなければならないと実感しています。

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第6章

主なアクションポイント

今日できる四つのこと

1. 知っていることに基づいて十分な評価をすることです。 関税の分類と、それを構成する文書の出どころにしっかり目を通すことです。税負担の軽減や繰り延べに関する包括的な戦略を開発することです。それは、長期戦略に取り組む一方で、たった今起こっている税制改正による影響に対処するのに役立ちます。

2.全てのサプライチェーンついて、隅から隅までをベースに綿密に計画を立てることです。 直接コントロールしていることに目を向けるだけでなく、一つ一つの始まりと終わりにも目を向けることです。はっきりしていることのありかを理解する必要があります。その唯一の方法は、全ての異なるサプライチェーンの計画を綿密に立てることです。大きなサプライチェーンだけに焦点を合わせてはいけません。小さいほうが問題を起こす恐れがあるからです。

3.ビジネスに与える影響について多種多様に考えることです。Bunchはこう説明しています。「英国における製品の製造業だとします。生産を許可されている工場で機械をきれいにする、レア・ケミカルを使用していますが、そのケミカルはどこから来るのか、また、その供給を混乱させているところはどこなのかを知ることです。

4.事業運営の中で貿易部門についてだけ考えるのではなく、他の会社機能を含めて考えることです。 Leightmanが言うように、「世界中で税務申告に関するデータや情報についての、査察や要請が増えていますから、規制や法令遵守に関わることを推奨しています。

世界的な貿易混乱に関するより多くの情報は以下のとおりです。 
https://ey-uk.instantmagazine.com/csg/global-trade-disruptors/home/

サマリー

長年、不明だった複雑性のレベルが明らかになったおかげで、多国籍企業は国境を越えたビジネスをどう行うかについて、新たな議論に直面しています。その解決策を見つけることは緊急を要します。この新しい環境の中で繁栄していくには、異なるシナリオに取り組み、その影響をモデル化する必要があります。

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執筆者

Gijsbert Bulk

EY Global Director of Indirect Tax

Seasoned indirect Tax Partner. Serving clients in Amsterdam and beyond. Litigator. Husband. Father of four boys. Chess player. Runner.

Franky De pril

EY EMEIA Global Trade Leader

Helping clients navigate global trade.

大平 洋一

EY Asia-Pacific Indirect Tax Leader

企業がすぐに実行できる、実用的な結果志向のソリューションを提供。