2021年12月27日
地方創生は属人的な成功の塊か?~EY知恵のプラットフォーム第1回 先駆者会議(香川県三豊市の地方創生事例)

地方創生は属人的な成功の塊か?~EY知恵のプラットフォーム第1回 先駆者会議(香川県三豊市の地方創生事例)

執筆者 EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

2021年12月27日

EY知恵のプラットフォーム 第1回 先駆者会議「地方創生」(2021年11月12日開催)

要点

  • 三豊市事例:ファンディングと他付加価値の追求
  • 地方創生における一番の敵は依存心
  • 地域の関係性資本の蓄積とファイナンス

1.産学官の知を結集し社会的課題解決を目指す

EY知恵のプラットフォームは困難な社会的課題に立ち向かう挑戦者たちを応援すべく、行政と民間が連携し、戦略から実践まで、先端的な社会的事業を仕組み化・システム化に導くことにより、複数の領域における効果的な課題解決やその取り組みの産業化を目指す活動です。

「先駆者会議」 「専門部会」  「コトづくり部会」と3つの会議・部会から構成されます。先駆者会議では、テーマに応じて、さまざまなバックグラウンドと専門性を持つ先駆者たちが、高度なノウハウを駆使し、具体と抽象を自由に行き交うことで生み出される新たな言語空間により、議論を展開します。EYのプロフェッショナルたちはこれをとりまとめ次世代の課題を解決する重要なヒントを解き明かします。

詳細はこちらをご覧ください。

2.第1回先駆者会議の開催

去る2021年11月12日、東京ミッドタウン日比谷のEYオフィスにて、「知恵のプラットフォーム」の主催により、「地方創生」をテーマにした第一回先駆者会議が開催されました。

第一回は、古田秘馬氏による香川県三豊市での「UDON HOUSE」を起点とした取り組みにフォーカス。ファシリテーターの堀氏と宮瀬氏が現場のキーパーソンの生の声を現地で取材した映像を交えつつ、7名の「地方創生」先駆者たちが、古田秘馬氏の紹介した事例について、熱い議論を交わしました。

EY知恵のプラットフォーム

豊かさを実感できる社会の実現に取り組む挑戦者を応援する

第一回先駆者会議 会場 画像

3.三豊市の地方創生事例

三豊市は四国の香川県西部に位置する人口六万人余りの小さな町。しかし、わずか四年間で、年間一万人程度だった観光客を50万人ちかくにまで増加させました。何故ここまで急激に成功したのか。ニューヨークタイムスが、世界の訪問するべき観光地世界第7位(日本の中では第一位)に選ぶまでになったのか。干潮時の夕暮れに「ウユニ湖」のような美しい夕景を見せる父母ヶ浜(ちちぶがはま)だけではなく、そこには、UDON HOUSEにはじまりURASHIMA VILLAGEに至る、よそ者と地元の人が積み上げた、必死の努力がありました。

堀潤氏と宮瀬 茉祐子氏 画像

MCを務めた堀潤氏と宮瀬茉祐子氏 (株)わたしをことばにする研究所

4.古田氏によるプレゼンテーション

昔、グローカルという言葉がはやりました。しかし、グローバルとローカルを対比するのは間違っていると思います。何故なら、グローバルで成功するためには数の論理が必要ですが、ローカルのビジネスモデルは数の要素を必要としない。なので、そのままではグローバルに通用しないのです。グローバルにも通用する普遍性を持つのは、むしろ、地域におけるコミュニティです。少数のコミュニティを特定し、そこにフィットするものに活動を特化させたらどうか。そしてそこで力を得たコミュニティが、グローバルとつながりを持ってはどうか。この発想の転換こそが活動のスタートでした。そこでポイントとなったのは、ファンディングと他付加価値の追求です。

株式会社Umari 代表取締役社長 古田秘馬 氏 画像

三豊市の事例をプレゼンされた古田秘馬氏 株式会社umari 代表取締役社長

最初の取り組みは、地域の食文化を学ぶ体験型宿泊施設「UDON HOUSE」でした。宿泊者は全員、1泊2日の滞在期間中に6時間のプログラムに参加し、まずは粉からうどんを打ちます。粉から作ったうどんと、だしから取ったつゆ、畑から取ってきた新鮮な旬の野菜で作った天ぷら。それら同宿した仲間と共有する古民家のUDON HOUSE。当初、3万円もするコースに、地元の方は目を疑いましたが、結果的には成功。また、当初は「うどんを売らないUDON HOUSE」などと揶揄された体験施設型宿泊施設でしたが、次には、UDONづくり体験キットを約7000円で販売。孫と一緒にうどんづくり体験の時間を共有したいと思う高齢者に、飛ぶように売れていきました。美味しいうどんそのものだけではなく、うどんづくりを通じて孫と過ごす楽しい時間、という新たな別の付加価値(古田氏は「他付加価値」と呼びます)を生み出し、高い収益を上げることに成功。以来、古田氏は常に、「他付加価値」を意識している、と言っています。

またUDON HOUSEで可能性に目覚めた三豊市民の間には、その後、クラウドファンディングが急速に広がり、全国でクラウドファンド率第一位にまでなりました。そして、「地域食文化継承レストラン」や「おむすび座」など約15社30プロジェクトが立ち上がり、そのメンバーがまた、インスタ映えする美しい父母ヶ浜でワークショップを開いたり、店舗を出店できるという仕組みが作られました。

すると、次に問題になったのが、人手不足と宿泊キャパ不足です。そこで、古田氏らは、滞在型コワーキングスペース「GATE」を建設。仕事と住まいとコミュニティの提供をキーワードに、人材の獲得に悩む地元企業やプロジェクトと都心の人とをつなげ、更に新たな人材を供給する場として機能し始めています。

こうして成功が見えてくると、案の定、大企業による宿泊施設開発話もふってきます。しかしそれでは、地元の事業者が大手企業の下請的存在に組み入れられてしまう。そんなことであれば、客の数よりも、自分たちの手でゲストハウスを作ろうじゃないか。そうして誕生したのが、「URASHIMA VILLAGE」でした。

古田氏は語ります。「地方創生において、一番の敵は依存心です。当事者が自分の意志で取り組み、それを継続していける仕組みと、周りを巻き込むモデルを構築していく必要があります。取り組みが面白いと可能性が生まれる。過去を見せる観光から、未来の可能性にかかわる関係性を作ったことが成功につながったと思います。」

5.先駆者たちの議論

その後の先駆者たちの議論は、わずかな休憩をはさみ1時間以上にわたる白熱したものとなりました。下記はその一部の紹介となりますが、会議内での議論の全体詳細については、別途詳細ページ(ユーザ登録が必要になります)よりご覧いただけます。ご興味のある方は是非こちらからご登録ください。

先駆者方々のコメント

とにかく「煽る」ことにつきる。地元の取り組みに携わる人たちを「煽る」。三豊はそれが見事にできている。そこから生まれる関係性を活かして、新たな「関係人口」も呼び込みつつ、地方・ソーシャル向けのストラクチャードファイナンスをどうやって組んでいくかが鍵だ(安部氏)

株式会社Ridilover 代表 安部 敏樹 氏 画像

三豊には「スーパー本気度」の人達がいる。自分の関わっている地域では、自分がいれば動くか、いなくなるとすぐ止まる。どうやって「スーパー本気度」の人を生み出すか。ヒントを探りたい(藤沢氏)

シンクタンク・ソフィアバンク 代表 藤沢久美 氏 画像

一次産業をテーマにした地域では、ここまで熱い民間サイドの取り組みはなかなか出てこない。古田氏の取り組みは、民間側の「自助」が「共助」に発展していった成功例だと思うが、自分はむしろ、重たい役所を動かし、「公助」から「共助」に近づく真逆のアプローチをとっている。(竹本氏)

株式会社トビムシ  代表取締役社長 竹本吉輝 氏 画像

外国からの観光客を呼んだのは正解だ。東京の人が地方を褒めても、どこか嘘っぽいが、外国の人が呼べると、それは素直に地元の方の自信になる。(上山氏)

株式会社百戦錬磨 代表取締役社長 上山康博 氏 画像

今日見たヒトのアプローチに加え、カネの仕組みをしっかり設計すれば、地方創生を属人的な現象から開放し、成功をパターン化することもできるのではないか。(村上氏)

デジタル庁 統括官 村上敬亮 氏 画像

「アーキテクチャを描いて進められる人材」であることはもとより、加えて「自分を消せる人材」であることも必要だと考えている。そして、その過程でどうやってカネを回す仕組み、考えかたを構築し、それを持続できるかが鍵ですね。(加戸氏)

株式会社まちづくり松山 代表取締役社長 加戸慎太郎 氏 画像

議論を終え、古⽥氏は「次の試みとして、パブリックサービスを地域の⼈達⾃⾝で担い、そこで得た利益を新規事業へ⽣かす新しいベーシックインフラを考えています。」と述べました。

 

次回は株式会社トビムシ代表取締役社長、竹本吉輝氏のプレゼンテーションを予定しています。

今回の先駆者会議の詳細については、下記より登録いただくことで参照いただけます。

EY知恵のプラットフォーム  第1回 先駆者会議

知恵のプラットフォームは、社会変革期に我々がどう貢献できるかを真摯に向き合う取り組みです。先駆者会議はその名に相応しい議論となりました。今回は関係性資本を”コミュニティから”アプローチした議論でしたが、次回は”行政から”アプローチした議論へと進めて参ります。(菅田)

菅田 画像

また、今後の先駆者会議の検討内容や専門部会の調査結果など知恵のプラットフォームの情報は、メールマガジン「知恵のプラットフォーム通信」にて配信します。ご興味のある方は是非以下のページからご登録ください。

先駆者一覧(50音順)  
安部 敏樹 氏 株式会社Ridilover 代表取締役
加戸 慎太郎 氏 株式会社まちづくり松山 代表取締役社長
上山 康博 氏 株式会社百戦錬磨 代表取締役社長
竹本 吉輝 氏 株式会社トビムシ 代表取締役社長
藤沢 久美 氏 シンクタンク・ソフィアバンク 代表
古田 秘馬 氏 株式会社umari 代表取締役社長
村上 敬亮 氏 デジタル庁 統括官
MC  
堀潤 氏 わたしをことばにする研究所 社長
宮瀬 茉祐子 氏 わたしをことばにする研究所 所長
登壇者 集合写真

写真左より、安部氏、加戸氏、村上氏、古田氏、藤沢氏、上山氏、竹本氏、宮瀬氏、堀氏

当日の議論の詳細については、以下のページにサマリー動画と議事要旨を掲載しております。今後、地方創生を進めるにあたってのヒントになる先駆者からの知見を、ぜひご覧ください。

2021年11月12日開催
EY知恵のプラットフォーム
第一回 先駆者会議 詳細ページ

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サマリー

第1回 先駆者会議は、株式会社umari 代表取締役社長 古田秘馬氏による香川県三豊市での「UDON HOUSE」を起点とした取り組みにフォーカス。ファシリテーターの堀氏と宮瀬氏が現場のキーパーソンの生の声を現地で取材した映像を交えつつ、7名の「地方創生」先駆者たちが、古田秘馬氏の紹介した事例について、熱い議論を交わしました。

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執筆者 EY Japan

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