業界内の対立が将来への発想を生み出すか、それとも打ち砕くか 業界内の対立が将来への発想を生み出すか、それとも打ち砕くか

執筆者 Bryan Pearce

Former EY Global Entrepreneurship and Start-ups Leader

Helping entrepreneurs add value to businesses, connect with each other and make the world a better place. Passionate about traveling and building lasting relationships with people around the world.

7 分 2018年8月7日
関連トピック 起業家精神 成長

世界は想像し得るよりも速いスピードで変化を続けています。複雑な課題の解決には、セクター間の連携が鍵を握ります。

業界内の収斂(しゅうれん)はビジネスの在り方を急速に変え、それは予測できるものもあれば、全く予想のつかないものもあります。電気通信会社が銀行業に参入するケースもあれば、自動車メーカーが電気自動車とともにエネルギー産業にシフト、スポーツメーカーが医療保険に目を付けたりと、これらはほんの数例にすぎません。

EY World Entrepreneur Of The Year(WEOY)2018 Forumには、大手企業のCEO、EYのセクターソートリーダー、過去のEY Entrepreneur Of The Year(EOY)受賞者が世界中から集まり、各業界からの参加者も加わって、この新しい破壊的現実についてパネルディスカッションやセッションの中で意見を交わし、想定される将来を探求しました。

EY Global Industry Strategic Growth Leader兼EY Global Government and Public Sector Emerging Markets LeaderであるRohan Malikは、「私たちは自らの想像力に縛られているにすぎず、今考えている線引きは次第に曖昧になっている」と語り、企業の75%は(今すでにその状態でなくとも)近い将来、業界外からの新規参入者との競争に直面することになると指摘しています。

フォーラムでの議論の中心は、都市化、ヘルスケア、変化する消費者行動でした。起業家たちは、収斂からなんとか価値を引き出せそうな産業やセクターを取り上げ、今後、世界で勝ち続けられる可能性のあるビジネスモデルについて意見を出し合いました。

EY World Entrepreneur Of The Year(WEOY) 

EY World Entrepreneur Of The Year(WEOY)2018 Forumのハイライト 

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Highly interactive convergence sessions

Entrepreneurs, including EY Entrepreneur Of The Year™ alumni, gather in highly interactive convergence sessions to discuss the emerging business models that are more likely to thrive in the future.

変化を推進する都市化

今後15年には、世界人口の3分の2以上が都市に居住すると見込まれ、これに伴う都市化が多くのセクターで変化を引き起こすことになります。「成長し、繁栄する都市づくりには、人々が交通手段、教育、雇用にアクセスできる状態が必要」。100 Resilient Citiesのレジリエンスファイナンス担当バイスプレジデント、Elizabeth Yee氏はこう指摘します。「各都市は、グローバル化、都市化、気候変動の課題に目を向けなければなりません」

都市が成長するにつれて深刻化する大きな課題の一つが、アフォーダビリティーです。大勢の人々が住宅を購入できない事態が起きています。EY World Entrepreneur Of The Year 2018の受賞者、Rubens Menin氏はこうした不幸な現実をきっかけに、この必要性に対応するための会社を立ち上げました。その会社、MRV Engenhariaは、現在ではラテンアメリカ最大の住宅用不動産デベロッパーに成長し、ブラジルを代表する低所得者向け住宅建築会社として、国内の数え切れないほどの家族を支援し、「不動産のはしご」を登るための第一歩を手助けしています。

私は持ち家が見果てぬ夢であった人々に、自分の住まいを所有する尊厳を与えるという理念を掲げ、これまでの人生でそれを追求してきました。建築業界は、一般市民に前向きな影響を与える絶好の立場にあると思います。
Rubens Menin
MRV Engenharia会長、WEOY 2018受賞者

「私は持ち家が見果てぬ夢であった人々に、自分の住まいを所有する尊厳を与えるという理念を掲げ、これまでの人生でそれを追求してきました。建築業界は、一般市民に前向きな影響を与える絶好の立場にあると思います」とMRV Engenharia会長のRubens Menin氏は話しています。

フォーラムの中でコンバージェンスをテーマに行われたセッションでは、建築業界の可能性も取り上げられ、開発業者が現在取り組んでいるもっと環境に優しく、持続可能で強度の高い建物作りに役立つ手段として3Dプリンティング、人工知能(AI)、IoTが挙がりました。「建築資材の軽量化は、建築・インフラ業界にとって一大シフトになる。鋼鉄が淘汰され、コンクリートも淘汰される一方、プラスチックや化学製品、新しいテクノロジーの実用化に向けた新たな方法が生まれている」との指摘もありました。

各都市は、グローバル化、都市化、気候変動の課題に目を向けなければなりません

Elizabeth Yee

Vice President, Resilience Finance for 100 Resilient Cities

 

起業家たちは、建物の他にも住宅の手に入れやすさを改善する方法について意見を出し合い、その一つとして、銀行や投資家、不動産会社がマッチングファンドを基に助成金を提供する共有型アプローチの立ち上げが提案されました。そうすれば、共有型住宅を多数提供できます。

こうした創意工夫の探求に共鳴したのが、62%の住民が公営住宅で暮らすウィーンのMaria Vassilakou副市長兼副知事です。

「豊富な予算があるからといって、その都市が創意工夫に富んでいるということはありません。経済的持続可能性が欠けていれば、長期的には続きません」と話し、ウィーンでは市が土地を購入して市場価格以下で開発業者に売却していると説明。土地を入手した開発業者は、手頃な賃料での住宅供給が求められます。

柔軟な再利用が鍵

都市の変化に合わせて、資産やインフラも目的の変更が必要です。JCDecaux Franceの戦略・データ・ユーザーイノベーション担当エグゼクティブバイスプレジデント、Albert Asséraf氏は、「公共スペースの共有方法が変わり、人々が都市に新たなスペースを見いだすようになります」と指摘しています。

起業家たちはこうした課題にも考えを巡らせ、多くの人々がリモートで働き、オンラインで買い物をする世界で有効活用されていない建物にどう対処すべきか思案しています。そして提案されたアイデアが、チャータースクールのようにスペース内に官民連携で作られるコミュニティーです。企業が学校に資金を提供し、次世代の生徒たちが必要な技能を身に付けます。

当然のことながら、次第に進む都市化がもたらす変化は必ずしも予想できるものではなく、都市は実験の余地を設けておく必要があります。InMotion Venturesのマネージングディレクター、Sebastian Peck氏はこう話しています。「イノベーションが繁栄できる安全な空間作りが必要です。人々がリスクを負うことができ、仕返しを恐れるような環境にしないことが大切だと思います」

ヘルスケアの勢力図が変化

都市と同様、ヘルスケアもさまざまなセクターの企業がその形を作り変えています。データやアナリティクスを通じて生物学の世界、デジタルの世界、物理的世界が融合し、従来の伝統的ヘルスケア企業から、消費者、保険者、新規参入者へと勢力がシフトしています。

テクノロジー、データアナリティクス、人工知能の進展が私たちの暮らしや健康維持を様変わりさせています。Blippar社 のCEO兼共同創設者であり、EOY 英国受賞者であるAmbarish Mitra氏は「テクノロジーは社会の変化に非常に大きな役割を負っています。平等のための大いなる手段ともいえます」と話します。

自宅用音声認識デジタルアシスタントなど、人々がテクノロジーを活用し始めると、ヘルスケアの平等化はまず間違いありません。「例えば危険なレベルのかびなど、健康に深刻な影響のある感染の始まりを突き止められます」と、Nano Vision会長兼共同CEO、Steve Papermaster氏は言います。

ユニリーバ欧州プレジデント、Hanneke Faber氏は、すでに多くの人がその舞台に上がっていると指摘しています。消費者は、以前にも増して自分の健康に責任を負うようになっています。疾病予防の意識も高まっています。そして、ウエアラブル端末をその助けにしているのです」

テクノロジーは社会の変化に非常に大きな役割を負っており、平等のための大いなる手段とも言えます

Ambarish Mitra

Blippar社CEO兼共同創設者、EY Entrepreneur Of The Year(EOY) 2016 英国受賞者

 

データとプライバシーが重要

コンバージェンスがテーマのセッションの参加者たちも同意見であり、消費者の健康意識が高まり、よって要求も高まっているとの見解が挙がりました。こうした動きの結果、市場の流れに後れを取らないよう、企業はビジネスモデルの見直しを迫られ、そのためにデータをより一層重要視するようになっています。

EY Global Life Sciences LeaderのPamela Spence は、データの価値は、製品やサービスそのものよりも重要性が高まっていると語り、企業はサードパーティーによるデータ使用を取り巻く文化の違いを考慮する必要があると指摘します。Spenceによれば、米国の消費者は自分のデータに対価を求め、欧州の消費者は情報の共有に神経をとがらせ、アジアの消費者は自分のデータが使われることに比較的寛容な傾向があるようです。

当然のことながら、健康状態のモニタリングやレポーティングが盛んに行われるようになると、プライバシーの問題が持ち上がります。事実、コンバージェンスのセッションの中でも、疾患予防から信頼の話へと議論が直ちに進みました。起業家らは、人々がデータを共有した場合に、意図に反した使い方をされる可能性を危惧しますが、Mitra氏は解決の日は近いかもしれないと言います。「消費者がコントロール権を取り戻し、個人情報をどう使うべきか自身で決定するようになります」

ブランドの影響力の変化

データは、消費者関連業界にも転機をもたらしました。バリューチェーンのありとあらゆる箇所がデジタル化され、アルゴリズムによって、より多くのセクターのより多くの企業が個々の消費者ニーズをスマートに満たせる状態が整いつつあります。コモディティー化する製品が増え、従って競争は過熱傾向です。 

EY Global Consumer Products and Retail Leader のKristina Rogersは、次のように説明しています。「将来的に、ブランドの価値は希薄化すると考えられます。AIが消費者に代わって情報収集することで、消費者からブランドへの愛着心が低下するからです。時流に乗り続けるためには、他ブランドとのコラボレーションが必要になるかもしれません」

テクノロジーによって個人が自分自身のことを知り、自分に何が必要かを知るようになるので、ブランドにとっては影響力の強化という課題が生まれます。一つのアプローチをThai AirAsiaのCEO、Tassapon Bijleveld氏が提案しています。AirAsiaでは、ブランディングにフォーカスすることによって、利用者の期待に応えています。「AirAsiaでは、消費財メーカーのつもりでビジネス運営を行っており、マーケティングに特に力を注いでいます。顧客第一主義です。AirAsiaがグローバルブランドであるよう常に意識しています。私たちにとってブランディングが全てです」

Elle Macpherson

Elle Macpherson relies on social media and fan interaction to maintain her brand. 

ブランディングは、Macpherson氏のキャリアにおいて常に鍵を握っていました。スーパーモデルとして人気を集めていた1980年代にニュージーランドのランジェリーメーカーの目に留まり、名前と肖像のライセンス供与を求められました。現在では、オーストラリアを拠点に、自然食品由来の高吸収性栄養素を含む栄養補助食品をグローバルに販売するWelleCoの共同創設者です。

健康と美を一体化させる発想に強く引かれたとMacpherson氏は言い、ソーシャルメディアでの画像のシェアやファンとの対話を支えにした現在の会社の成功は、近づき難いが故に象徴的存在になったモデル時代からの大きな変化の一つと話しています。

透明性を求める消費者

コンバージェンスのセッションに集まった起業家たちは、将来の消費者像を熟考する上で、消費者が自分の購入したブランドがどこに由来し、何が使われているのかなど詳しい情報を知ることができるトレーサビリティーエコシステムの構築に賛同しました。この仕組みによって、自分の個人情報をもっと理解した上で、さらに有効的に製品を選ぶ手段が消費者に与えられることになります。

ヘルスケアに関するディスカッションの時と同様、消費者データの保護にも関心が集まり、個人情報や購買傾向を消費者自身がアクセス権をコントロールするブロックチェーンプラットフォーム上に保管し 、その上で自分の情報をベンダーに「貸し出す」方法が提案されました。この方法であれば、企業が消費者にダイレクトに製品を提供でき、可能であれば中間業者を省いて、サービスや体験をより効果的にコントロールできます。

各企業は、こうした全く新しい将来に向けて準備を進めています。ですから、心配し過ぎないことが肝要です。「全ての物事について、悪い方向に進むかもしれないという恐れが起業家精神をくじく」。 EOY受賞者であり、現在はこの賞のグローバルアラムナイ協議会メンバーであるNano VisionのPapermaster氏はこう言います。

EYのRohan Malikも同意見です。「大きく考え、アイデアを土台に小さく始めることが大切です」

サマリー

都市、ヘルスケア、消費者行動に劇的変化が到来しています。EY World Entrepreneur Of The Year(WEOY)2018 Forumには、大手企業のCEO、EYのセクターソートリーダー、過去のEY Entrepreneur Of The Year(EOY)受賞者が世界中から集まり、各業界からの参加者も加わって、この新しい破壊的現実について想定される将来を探求しました。

この記事について

執筆者 Bryan Pearce

Former EY Global Entrepreneurship and Start-ups Leader

Helping entrepreneurs add value to businesses, connect with each other and make the world a better place. Passionate about traveling and building lasting relationships with people around the world.

関連トピック 起業家精神 成長