保険IFRSアラート(2023年9月):IFRS解釈指針委員会が仲介者に対する未収保険料に関するアジェンダ決定を最終化することに合意
IFRS解釈指針委員会は仲介者に対する未収保険料に関するアジェンダ決定を最終化することに合意しました。
IFRS解釈指針委員会(以下、委員会)は、2023年9月12日に、仲介者に対する未収保険料(IFRS第17号「保険契約」(以下、IFRS第17号)およびIFRS第9号「金融商品」(以下、IFRS第9号))に関する暫定的なアジェンダ決定(Tentative Agenda Decision、以下、TAD)に寄せられたコメントについて議論しました。
このTADは、以下の事実パターンを前提としています。
- 保険契約者は支払期限の到来した保険料を仲介者に現金で支払い、契約上の義務を履行している
- 保険会社はまだ仲介者からその保険料を現金で受領していないものの、この時点から保険契約サービスを提供する法的義務を負っている
- 委員会は、TADにある通り、この事実パターンに関して2つの見解が受け入れられるという分析及び結論の大部分を変更しませんでした。
- 見解1:保険契約者が仲介者に保険料を支払っても、現金で回収されるまではIFRS第17号を適用し、当該保険料を保険契約グループの測定に含める。
- 見解2:保険契約者が仲介者に保険料を支払った場合、当該保険料を保険契約グループの測定に含めず、IFRS第9号を適用して別個の金融資産を認識する。
- 寄せられたコメントを受け、スタッフから以下のようなTADへの変更が提案され、委員会はこの変更に同意しました。
- この事実パターンにおいて、保険契約グループの測定からキャッシュ・フローがいつの時点で除外されるかを決定することは、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に基づく会計方針の選択となることの明確化。そのキャッシュ・フローを現金で回収または決済した時点(見解1)、または保険契約に基づく保険契約者の義務が履行された時点(見解2)で、保険契約グループの測定に含められなくなると判断します。
- TADの文言の焦点を技術的分析の主要な理由に当てること。
- 委員会は、IASBの同意を条件として、会議中に言及された文言への変更を加えた上で、アジェンダ決定を最終化することに合意しました。
弊法人のコメント
- 会計方針を策定する際に、これらの2つの見解についてすでに検討をしていたかもしれませんが、TADで明確にされたことで、企業が自身の状況を評価し、TADに示された見解を会計方針として決定するプロセスが明確にされたと考えられます。
- ただし、TADで提案された解釈は、委員会に提出された特定の事実パターンを前提として、IFRS第17号およびIFRS第9号の適用範囲を検討していることから、他の事実パターンに対してこの解釈をどのように適用できるかは検討されていません。したがって、TADガイダンスが自社の仲介者との取り決めにおいてどのように適用されるかを検討することが重要です。
- 会計方針の選択は、開示すべき重要な決定と考えられます。また、仲介者に対する未収保険料について信用リスクの集中が見られる場合には、信用リスクに関する開示を行うことも重要です。
次のステップ
委員会は、IASBが異議を唱えなければ、次回のIASBの会合において、アジェンダ決定を最終化・公表する予定です。
※ 詳細は下記英語版のリンクをご参照ください。
Insurance Accounting Alert September 2023
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