変革設計の原則
このような規模での変革を推し進めるには、革新的な思考と、段階的に変えていくアプローチを組み合わせる必要があります。特に重点を置くべきなのは、企業文化の変革、能力増強、新たなソーシング戦略とベンダー管理戦略の策定です。
失敗に終わった変革計画には共通の落とし穴があります。この落とし穴にはまらないように、財務リーダーは、大胆かつ独創的な発想と確かな戦術で徐々に成果を上げていくことで、勢いをつけなければなりません。長期的な視点を持つことが、実行可能な計画の策定に役立つはずです。それにより、最も喫緊の「今解決すべき」問題に対処し、継続的なイノベーションの必要性を見落とすことなく、変革に必要な能力を構築できます。
ビジョンと目的を運用化し、そして何より変革の成果を長期間にわたり維持し続けるには、企業文化を変える必要があります。目指すところを明確にし、それを成し遂げるための計画を策定し、必要なリソースを注ぎ込まなければ、多大な努力や能力が要求される困難な目標は達成できません。チームの士気が高まれば高まるほど、変革計画の有効性が高まるため、コミュニケーションは重要です。
今後は、データの統合、先進テクノロジー、力を備えたチームだけでなく、主要なベンダーやパートナーと互恵的な関係を構築する能力も優秀な財務部門の条件になるでしょう。リーダーは、パートナーに求めるさまざまな特性や、最も適した関係の構築の仕方を考え抜いて決めなければなりません。専門技術の互換性や企業文化の相性も重要な判断材料です。
未来への道
このような財務グループは、組織的能力を拡充し、プロセスを合理化して連携させ、テクノロジーとデータを強化することで、会社が戦略的かつ安全に、情報に基づいて市場機会を生かす手助けをしています。財務グループの存在によって会社の競争力は高まり、純利益の向上に向けたより有意義な貢献につながるでしょう。
すべての業績データが集まる場として、財務部門は業績を正確に測定し、会社のいたるところでのビジネスチャンスを見極め、今後の予測をモデル化する独自の役割を担っています。このような視点を持っているからこそ、不確実性が高まり、急速に進化が進む時代にあっても、戦略的アドバイザリーサービスを提供し、イノベーションと成長を促進する手助けができるのです。
過度に野心的な変革計画のリスクを業界のプロフェッショナルはよく知っています。しかし、将来の上昇傾向が非常に説得力があるものであることから、財務リーダーは、無理のない範囲で価値を創造していこうとするのであれば、遅かれ早かれ行動を起こすはずだと私たちは見ています。
本記事の作成にあたり、EY Global Insurance Finance Transformation LeaderであるSteve Cappsにご協力をいただきました。ここに同氏に対して感謝の意を表します。