25 分 2022年5月24日
ドア越しに広がる屋上庭園

ジェネラルカウンセル(最高法務責任者)が直面する喫緊の課題:法務部門がサステナビリティ戦略実行の鍵を握る

執筆者 Cornelius Grossmann

EY Global Law Leader

Global Law Leader. Passionate about integrity and diversity. Father of five. Fond of classical music.

EY Japanの窓口

EY Japan Law リーダー EY弁護士法人 マネージング・パートナー

外資系ローファーム経験後、EY弁護士法人の日本代表に就任。専門はクロスボーダーのM&A・提携・再編。

25 分 2022年5月24日

サステナビリティに関する問題が、法務、規制、レピュテーション上のリスクにつながる事態が増加しています。法務部門は重要な役割を果たすよう期待されています。 

要点
  • サステナビリティの問題は、法務部門に一連の複雑な課題をもたらしている。そのため、注力すべき重点領域を見極める必要がある。
  • この状況は、規制当局のガイダンスの曖昧さ、ステークホルダーからの圧力、企業内で競合する目標により、さらに複雑になっている。
  • 法務部門が全社的に重要な役割を果たすようになるのに伴い、業務量の増加が予想される。その結果、人材戦略を見直す必要が生じる。
Local Perspective IconEY Japanの視点

本調査には45社の日本企業も参加しています。わが国においても、2021年6月に公表されたコーポレートガバナンス・コードの改訂版がESGをはじめとするサステナビリティ関連を大幅に補充するなど、企業はサステナビリティについて積極的かつ能動的に取り組むことを求められています。本調査は、企業の法務部門がサステナビリティにいかに取り組むべきかについて、グローバル企業の法務部門の現状分析を含めて解き明かすなど、極めて示唆に富むものになっています。近年、法務部門の守備範囲は拡大し、契約審査や訴訟対応といった伝統的な業務にとどまらず、レピュテーションリスクを含む広範な経営リスクに対応した全社的リスクマネジメントにおいて、重要な一翼を担うものとして機能することが求められています。それを実現するにあたって、ソーシングモデルや法務DXを含めて法務部門のオペレーションの体制を見直すことも急務だと考えます。法務部門がサステナビリティの課題への取り組みを含む高度なリーガル・リスク・マネジメントを実践しつつ、事業部門にしっかり寄り添いビジネスの推進に貢献することが、日本企業の国際的な競争力強化において極めて重要であると考えています。

 

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木内 潤三郎
EY Japan Law リーダー EY弁護士法人 マネージング・パートナー

サステナビリティを巡る状況(広義には環境、社会、ガバナンスの問題を含む)は拡⼤しており、さらに多様化と複雑化が進み、内包するリスクが⾼まっています。新しい法規制、また、投資家、規制当局、顧客、従業員、さらには一般社会の環境・社会問題に対する姿勢の変化が、組織に広範な影響を及ぼしています。

「今まで、サステナビリティとはメッセージの発信や自発的コミットメントの問題でした。しかし、今、世界は大きく転換しており、サステナビリティの実行が重要となり、レピュテーションリスクが深刻化しているのを私たちは目にしています」とEY Global Law LeaderであるCornelius Grossmannは述べています。「社会はもはや、企業に有害な行為を行わないだけではなく、環境や社会的な問題に適切に対処することも期待しています。これが企業に対する大きな圧力となっています」

この転換は、事業部門の大部分に影響を及ぼすとみられます。中でも、コンプライアンスとリスク管理を主要な責務とし、サステナビリティにつながる幅広い課題に関与するジェネラルカウンセルと法務部門は、鍵となる役割を果たすことになるでしょう。

このような状況を受け、EY LawとHarvard Law School Center on the Legal Profession(ハーバード大学法科大学院センター・オン・ザ・リーガル・プロフェッション)は、最近、20カ国、12業種のジェネラルカウンセルおよびCLO(最⾼法務責任者)1,000⼈を対象に、インタビューによる調査を実施しました。その目的は、サステナビリティ1に関する問題の重要性が高まる中、法務部門がどのように対応しているかを理解することでした。

2022 General Counsel Sustainability Studyの主要な調査結果では、法務部門がサステナビリティに関するステークホルダーからの多様な圧力にさらされ、以下のような新たな課題に直面している姿が明らかになりました。

  • ジェネラルカウンセルは、社会の意識の変化のために組織のリスクプロファイルが変容しているにもかかわらず、経営陣はその意味を十分に理解していないと報告している。
  • サステナビリティに関連するレピュテーションリスクの増大の結果、法務部門が注力すべき領域が、従来は他の部門が担当していた領域へと急速に拡大している。
  • 権限の拡大に伴い、日々の意思決定への法務部門の関与が深まり、各事業部門との連携が強まっている。
  • サステナビリティに関するジェネラルカウンセルの最重要課題とは、社会の期待が組織の法規制上の義務を上回る事項について、経営陣に助言を提供することである。
  • 法務部門には、サステナビリティ関連業務の増加への対応に必要な人材と予算が与えられていない。また、それらの課題への対応に関し、見解が分かれている。

ジェネラルカウンセルが今後の進路を適切に定めるためには、法律部門がどの領域でどのようにサステナビリティに関わるべきかを判断することが重要です。また、法務部門が組織の他の部門とどのように連携していくかを決定することも不可欠です。

最も切迫した問題の多くに、規制は明確に対処していません。従って、企業全体で、複雑なサステナビリティの問題を巡る意思決定の枠組みの構築に取り組むことが極めて重要です。法務部門は、この取り組みを担う上で最適の部署です。相互に関連する多様なサステナビリティに関する疑問や課題の中心に位置する法務部門は、このような論点に対して、独自の洞察力を得ることができます。

サステナビリティに関連する問題に対応することで、法務部門に業務面の課題が生じることも多いと考えられます。サステナビリティの重要性が増すにつれ、業務量も増大し、多くの法務部門がすでに直面している圧力がさらに高まります。サステナビリティ関連業務に必要な柔軟性、規模、独自の専門性を備えた法務部門に適した業務モデルの構築が不可欠となるでしょう。

(Chapter breaker)
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第1章

法務部門が注力すべき領域

圧力やリスクの変化に対応するため、法務部門の注力すべき領域が拡大する可能性があります。

法務部門が注力すべき領域

サステナビリティの「スペクトラム」に含まれる検討事項は極めて多いため、法務部門の注意を最も要する事項を特定することが、ジェネラルカウンセルの課題となっています。

現在、多くの法務部⾨では、訴訟、規制順守、トランザクション・デューデリジェンスに関連するサステナビリティ業務に最も注⼒しています。これらの領域が焦点となっているのは、投資家や規制当局からの圧力と関連しています。

最も圧力を感じる対象を0~100の間で評価するよう尋ねたところ、ジェネラルカウンセルは、投資家と規制当局を最上位に挙げました。次いで、圧力の大きい順に、訴訟当事者、顧客、従業員、一般社会、メディア、サプライヤーとなっています。これは、これらのステークホルダーの期待は通常⼗分に明確にされており、コンプライアンス違反のコスト(市場価値の変動、⾦銭的不利益、資⾦調達⼿段の減少)が確実かつ深刻であるためだと考えられます。

ジェネラルカウンセルは、投資家と規制当局から受ける圧⼒を最上位に挙げていますが、他にも多様なグループに⾔及しています。これは、法務部⾨のステークホルダーが変化していることを⽰唆しています。顧客と従業員から感じる圧力は、投資家や規制当局からの圧力に比べて、差はわずかしかないとジェネラルカウンセルは報告しています。ここ数年、この2つのグループは、企業の環境や社会に関する慣行への懸念を表明する行動を著しく活発化させています。また、ボイコットやストライキなどの集団行動に参加する傾向が高まっています。 

  • モンデリーズ・インターナショナル社、Laura Stein氏の発言より引用

    ESGの課題の重要性について

    「私たちのステークホルダーの期待は進化しています。全てのステークホルダーが、環境と社会の問題に関⼼を寄せています。これには、投資家、格付け機関、規制当局、サプライヤー、顧客などが含まれます。さらに、従業員やより広い社会からの期待も考慮する必要があります。このような期待の進化が、これら全ての問題により深く関与できるように法務チームの役割の進化を促しているのです」

    Laura Stein氏、モンデリーズ・インターナショナル社、企業法務担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルカウンセル

興味深いことに、法務部門は、企業のサステナビリティに関する最大のリスクは本質的に純粋にレピュテーションに関するものであると報告しており、「レピュテーションの悪化による顧客離れ」と「ブランドへの悪影響」の2つを最上位に挙げています。これに対し、「投資へのアクセスに関する課題」や「新しい法規制に関するリスク」は今も重要であり、組織の評判に影響を与える可能性があるにもかかわらず、回答者の懸念事項のリストでは下位に位置しています。

圧⼒とリスクを⽐較すると、法務部⾨の⽬下の焦点はコンプライアンスとトランザクション・デューデリジェンスであり、サステナビリティ上の懸念のために企業が直⾯している他のレピュテーションリスクとの間にずれがあることが分かります。

Ernst & Young Law GmbH Energy Law LeaderであるBoris Scholtkaは、「この領域で転換が起こるでしょう。今後、法務部門はレピュテーションリスク管理の取り組みを強化し、規制や投資の課題との均衡を図ると思われます」と述べています。

実際、多くの法務部門が、今後3年間でサステナビリティにさらに注力する意向であると報告しています。最も積極的な法務部門では、企業の非法務リスクの定義や、環境・社会問題に関するポリシーの策定に向けての取り組みを強化しようとしています。

また、法務部門が今後さらに重視する予定の領域に、規制のモニタリングがあります。Ernst & Young Law Talasiewicz, Zakrzewska i Wspólnicy sp.k.、EU Green Deal Center of Excellence Leader、Kasia Klaczynska Lewisによると、これは環境・社会に関連する法令の急速な変化を反映しています。「多くのビジネスリーダーが、法務部門に、中期的に規制がどのように進化していくのかを理解する助けとなることを期待しています。この情報は、⾃発的なコミットメントの定義付けや、主要な投資のストラクチャーの決定を⾏う際には極めて重要です」

  • 国際金融公社、Christopher Stephens氏の発言より引用

    ESG領域の重要性について

    「国際金融公社などの多国間投資家は、環境・社会に関する基準の適用において重要な役割を担っています。企業に対し、厳格な環境・社会ポリシーの実施とその順守状況の報告を求め、順守状況の監視を認めさせることで、⺠間セクターがローカルルールにとどまらず、グローバルなベストプラクティスを取り⼊れるよう奨励することができます」

    Christopher Stephens氏、国際金融公社、法務・コンプライアンスリスク担当バイスプレジデント兼ジェネラルカウンセル

新たなリスクの管理に関する法務部門の権限の拡大に伴い、社内弁護士が最も効果的に機能するにはどの程度関与すべきかを検討することが重要になります。この10年間、多くの企業が法務部門の権限を拡大し、コンプライアンスや広報などの機能を移管してジェネラルカウンセルの管轄下に置くことを選択しました。より最近では、企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)を担当するチームがジェネラルカウンセルの管轄下に移管される傾向がみられます。Association of Corporate Councilの最近のレポートによると、24%の組織のCSRおよびESG担当チームが、このような指揮命令系統を有していることが明らかになりました(2年前にはわずか15%)。

一部の企業では、法務部門がサステナビリティの問題に対して主導的な役割を担うように位置付けられていますが、別の道を選択する企業もあるでしょう。このような企業では、法務部門が対等のパートナーとして、あるいは個別の問題に対するアドバイザーとして、他の部門と連携することになるかもしれません。最適な関与の程度は、企業が事業を行っている業界、企業が各分野で直面しているリスク、およびそれらのリスクの管理に要する軽減策によって異なります。

法務部門の役割の定義を難しくしているのは、環境・社会に関する活動の多くは複数のリーダーにより統率されているか、担当者がさまざまな機能部門に分散しているかのどちらかだという事実です。その結果、行動を促し、説明責任を向上させるためには、全社的な密接な協働が必要となります。法務部門はこの必要性を認識しています。ジェネラルカウンセルの61%が、サステナビリティに関して事業部門との協働の強化が予想されると報告しています。

提言と行動のポイント

法務部門が最適な形でサステナビリティに注力できるようにすることで、ステークホルダーの利益と企業のリスクの均衡を図ることができます。法務部門がリスク管理の取り組みを拡大する際には、以下のような領域に焦点を絞ることを検討するべきです。

  • 規制順守プロセスの改善⽅法とそれに対応するために必要な業務上の調整の特定
  • 環境・社会の問題に関連する非法務リスクの特定、およびその達成に向けての自主目標の設定とガバナンス体制の構築
  • 中期的に規制環境がどのように進化していくかを詳細に把握し、自社の方針と法務部門の業務戦略を将来に適したものにする 

 

(Chapter breaker)
2

第2章

曖昧さを乗り越え、競合する目標を両立させる

規制当局からの明確なガイダンスがない状況では、期待、⽬標、リスクのバランスを取る必要があります。

法務部門は常に新しい規制に対応することが課題であると報告していますが、その一方で、多くの法務部門が負担軽減につながる戦略を見出しています。新しい規制を社内ポリシーに反映させるのが困難であると報告したジェネラルカウンセルは、わずか37%です。

法務部門にとってより大きな課題は、規制当局からの明確なガイダンスがない、曖昧な領域で業務を進めなければならないことです。実際、90%の法務部門が、環境の問題に関連する具体的な規制がない場合は、ポリシー作成が課題であると報告しています。同様に、92%の法務部門は、社会的な問題に関して具体的な規制がない場合は、ポリシーの作成が困難であるとしています。

「職場の安全がその絶好の例です」とEY Global Labor and Employment Law Leader and Nordics Law LeaderであるPaula Hogéusは述べています。「パンデミックの間、多くの企業が、オフィスへの立ち入りの許可や禁止、マスク着用やワクチン接種に関するルールの策定など、通常は公衆衛生監督当局の権限で行われる決定を迫られました」

環境に関する指標の設定もその一例です。企業は、議員、従業員、顧客、そしてより広く一般社会から、炭素排出量やプラスチック使用量など、環境のサステナビリティに関連する幅広い課題に連動した目標の設定を求める圧力にさらされています。

企業は、従業員の給与、職場の安全、社会的公正など、他の多くの論点においても同様の課題に直面しています。これらの分野では明確なガイダンスがないため、企業の経営陣や社内弁護士は、規制当局や立法府からの明確な指針のない状況で判断せざるを得ず、難しい立場に立たされています。

  • ウォルト・ディズニー社、Horacio Gutierrez氏の発言より引用

    法的ガイダンスのない領域で問題に対処する

    「曖昧さに対処する鍵は、問題を大局的に検討することです。ESG領域では、場当たり的な判断はできません。自社が同じような問題に再び直面することを了解した上で判断しなければなりません。従って、生じている問題の根本を理解するべきです。また、意思決定過程全体にわたる指針となる企業の価値観を明確に理解する必要があります」

    Horacio Gutierrez氏、ウォルト・ディズニー社、シニア・エグゼクティブ・バイスプレジデント、ジェネラルカウンセル兼セクレタリー 

曖昧さを乗り越える

必要なガイダンスが規制当局から得られない状況下でサステナビリティに関する複雑な期待に直面している企業にとって重要なのは、自社の立ち位置と義務を明確に定義することです。

「法務部門は、第1に、該当する法務リスクと要件を検討するべきです」とGrossmannは述べています。「第2に、ステークホルダーの期待に関連して、自社が直面する可能性のあるレピュテーションリスクを理解する必要があります。そして第3に、自社がリスクを管理するために取らなければならない措置、また、法的要件を充足しない、あるいは利害関係者の期待に応えないという不作為から生じる財務上の問題を検討する必要があります。これら全てと、⾃社のサステナビリティの⽬標とを均衡させるべきです」

これらの圧力を調整するために法務部門が検討すべき3つの行動を以下に挙げます。

  • 組織が直⾯するリスクについて経営陣を啓発する:現在、経営陣が環境リスクを十分に理解していると考えているジェネラルカウンセルは15%に過ぎません。同様に、経営陣が自社に対する社会的リスクを十分に理解していると考えているジェネラルカウンセルは、わずか39%でした。 
  • 経営幹部と協⼒して、企業の⽬標を明確に定義する:効果的な意思決定には、目標と価値観を理解することが不可欠です。ジェネラルカウンセルの69%が⾃社の社会的な⽬標は明確に定義されていると回答している⼀⽅で、環境上の⽬標について同様に回答しているのは22%にとどまっています。
  • トレードオフや競合する目標をどのように調整するかについて、社内の対話を進め、合意を形成する:目標が競合するのは避けられません。それを管理するための強固な体制が重要です。これは容易ではありません。95%の法務部門が、財務目標とサステナビリティの目標のトレードオフを調整することは難しい課題であると回答しています。

法務部門には、このような圧力と競合する目標との調整に取り組む企業を支えることができる、重要な資質が備わっています。弁護士には、法規制や規制当局が企業の実務を評価する際に用いるアプローチに関する深い知識があります。また、法的・倫理的なジレンマの調整を経験しています。さらに、多くが、過去や現在の行動が将来に与え得る影響を検討した経験があります。

さらに、法務部門は、労働と雇用、訴訟、サプライチェーン、契約締結、トランザクション、コンプライアンス、データプライバシー、環境問題など、サステナビリティに関連する事業上の課題の大部分に深く関与しています。このため、明確な規制ガイダンスが存在しない状況では特に、法務部門はその独特な立場から、企業全体のサステナビリティに関する意思決定の向上を支援することができます。

提言と行動のポイント

サステナビリティに関する複雑な課題の解決に向けて⾃社を⽀えるために、ジェネラルカウンセルは以下のことを⾏うべきです。

  • 法務部門を、サステナビリティに関する複雑な課題に関して社内で主導的な役割を果たす部署として確立する
  • 価値観や目標に関する明確なガイダンスおよび競合する利害の調整に用いるフレームワークを策定する
(Chapter breaker)
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第3章

業務増加への対処

サステナビリティの重要性が増すとともに、法務部門の業務量も増加すると予想されます。

業務増加への対処

EYの調査では、環境・社会に関する課題により、法務部門の業務量が大きく増加することが明らかになりました。実に99%が、今後3年間で業務量が増加すると予想しています。

予想される影響の範囲は重大です。40%超のジェネラルカウンセルが、今後3年間に環境と従業員の安全に関わる業務が年率10%以上のペースで増加すると予想しています。同様に、24%がダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(多様性、公平性、包括性)に関連する業務が10%以上増加すると予想しています。本調査によると、あらゆる業種のジェネラルカウンセルが業務量の増加を予想していますが、⾦融、エネルギー、消費者向け製品・サービスなど、経済において重要な役割を担う⼤企業に及ぶ影響が最も⼤きいとみられます。

このような業務の急増は、一部には、新しい法律の増加、規制の強化、投資家の関心事に関連する報告業務の増大によるものです。また、複雑な案件やレピュテーションリスク関連の案件について法務部門がビジネスパートナーとして助言を提供する、アドバイザリー業務が増加していることも一因です。

法務部⾨が現在、このような案件にどのように関与しているかは企業によって異なります。しかし、サステナビリティに関連した、より価値の⾼いアドバイザリー業務が今後3年間で⼤幅に増加するとみられるという点で、回答者の⾒解はおおむね⼀致しています。

リソースの配分

この業務の増加にどのように対処するかについては、調査の対象となった法務部門の考えは一様ではありません。本調査によると、法務部⾨が取っているアプローチには、以下の3つの類型があることが分かりました。

  • 20%は、採用と既存の人材の配置転換により、サステナビリティ業務の大半を社内の人材で担う(インソーシング)予定です。加えて、アウトソーシングを戦術的に活用します。
  • 46%は、サステナビリティ業務の大半を社内の人材で担い、テクノロジーとプロセス管理の活用強化により業務を最適化する予定です。加えて、アウトソーシングを戦術的に活用します。
  • 34%は、タスクの要件とリソースの能⼒およびコストを考慮の上、社内リソース、社外の法律事務所やオルタナティブ・リーガル・サービス・プロバイダーを活⽤する、混合ソーシング戦略を実施する予定です。

この3つのアプローチのそれぞれを、人材、コスト、法務部門が抱える課題という点から検討する価値があります。

ジェネラルカウンセルの96%が、サステナビリティ、環境、社会の分野について必要な専門知識が法務部門に備わっていないと報告していることを考えると、インソーシングモデルには問題があるかもしれません。さらに、自社のサステナビリティの取り組みを支えるために必要な資金が十分ではないとは考えているジェネラルカウンセルが94%に上ります。

事実、法務部門はコスト削減を求める大きな圧力にさらされています。Harvard Law School Center on the Legal Professionと共同で実施した2021 EY Law Surveyによると、ジェネラルカウンセルの88%が今後3年間のうちに法務部門全体のコストを削減する計画であり、50%がコストを20%以上削減すると回答しています。

インソーシングをテクノロジーやプロセスの改善と組み合わせることで、法務部門がより効率的に、より多くの業務に対応できるようになる可能性があります。一部の法務部門ではプロセスの改善やテクノロジーの活用を進めていますが、他方、多くの法務部門が障害に直面しています。2021 EY Law Surveyによると、大多数の法務部門では必要なスキルが不足しており、時間の制約や変更管理の問題が目的達成を阻む障壁となっています。

  • サウジアラムコ社、Nabeel A. Al Mansour氏の発言からの引用

    業務モデルについて

    「環境・社会・ガバナンスの課題に関する法務部門の業務モデルは、複雑になる一方です。当社では、独自の多くの専門分野にわたる機能をもつアジャイルなエコシステムを開発しました。社内では、これらの課題に関する専門家を雇い、助言を得るとともに、独自のリソースを有機的に開発しています。また、社内の専門性を補完する分野に深い知見を持つ外部の法律事務所と強力な関係を築いています。さらに、常に社内の利用者との関係を深めるように努め、真のパートナーとして日々進化するこれらの課題に対応しています」

    Nabeel A. Al Mansour氏、サウジアラムコ社、上級副社長兼ジェネラルカウンセル

混合ソーシング戦略は、専門性、プロセス改善およびテクノロジーに関する課題を解決できる可能性があります。鍵となるのは、適切なタスクと適切なソーシング戦略を組み合わせ、業務とコスト管理の双方の点で最適なポートフォリオを構築することです。

「どのアプローチを選択するかは、最終的には法務部門の状況によります」とEYGlobal Legal Operations LeaderであるJohn Knoxは述べています。「鍵となるのは、戦略を見極めることです。法務部門が増大するコンプライアンスや報告の業務に対処しつつ、レピュテーションリスクや多大なリスクを伴う、より複雑な課題に関して事業部門と連携するための時間を十分に確保できるような戦略が必要です」

提言と行動のポイント

増加する業務量に対応するためには、ジェネラルカウンセルは、より価値の高い活動に力を注ぐための能力、専門知識、リソースを確保できるよう、下記の措置により法務部門の業務モデルの改善を検討するべきです。

  • 支出管理評価を実施し、社内外のリソースの現在の活用状況を把握する
  • タスクと適切なリソースを適合させるモデルにより、今後の業務戦略を策定する
  • 戦略計画を実行するために、センター・オブ・エクセレンスやテクノロジーの改善など、社内外で能力を構築する

結論

ジェネラルカウンセルと法務部門は、企業が直面しているサステナビリティの課題への対処を支えるパートナーシップ、目標、ガイドライン、ガバナンスの枠組みを築く上で、重要な役割を果たすことができる立場にあります。そのために、ジェネラルカウンセルは下記を実行するべきです。

  • サステナビリティに関連するレピュテーションリスクや非法務リスクを対象に含めるために、リスク管理の取り組みの拡充を検討する
  • 事業部門と協力し、サステナビリティにおける各部⾨の役割の範囲および主要なパートナーやステークホルダーの役割を明確にし、⾏動の促進と説明責任の向上を⽀援する
  • 企業が直面するリスクと目指している目標について理解の共有を進め、特に明確な規制がない領域において、複雑なサステナビリティの課題に対処するための意思決定の枠組みを構築する
  • 法務部門向けにサステナビリティに関する業務に求められる柔軟性、規模、独自の専門性の提供を可能にする業務モデルを構築する

EY 2022 General Counsel Sustainability Studyでは、法務部門がこのような取り組みにおいてさまざまな障害に直面していることが明らかになりました。一方で、多数の法務部門のリーダーが、サステナビリティに注力することの必要性を認識し、この課題に立ち向かっています。 

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    1. 「社会」とは、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン、従業員の安全とウェルビーイングの課題を指します。 「環境」とは、気候変動、炭素排出、プラスチック、廃棄物など、天然資源や地球生態系に影響を与え得る課題を指します。

サマリー

環境、雇用、あるいは、より広い社会に関わるものであれ、サステナビリティに関連する問題は、企業に継続的な課題をもたらすでしょう。これらの問題に関連するリスクには、法的なものとそうではないものがあり、その双方に対処する必要があります。そのため、法務部門が全社的に重要な役割を果たすことになるでしょう。優先順位を定め、課題を克服するための枠組みを策定し、効果的にリソースを配分することで、企業は将来の成功に向けて、強固な基盤を構築することができるでしょう。

この記事について

執筆者 Cornelius Grossmann

EY Global Law Leader

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