4 分 2022年9月12日
貨物列車の鳥瞰写真

気候変動への取り組みにおいて、政策立案者が企業に期待する4つの行動

執筆者 Cathy Koch

EY Global Tax Policy Network and Americas Tax Policy Leader

Leader in US and global tax policy with an informed perspective on public and private sectors and a deep knowledge of the US legislative environment.

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EY税理士法人 インダイレクトタックス部 パートナー

強くて優しい人を目指しています。まずは肉体の強さから始めようということで格闘技を習っています。

4 分 2022年9月12日

サステナビリティの課題に取り組む上で、政府と企業間の協働は最も重要です。

要点
  • 企業は、政策立案者を含め、ステークホルダーの期待に応えるために行動しなければならない。
  • 気候問題に対して行動しなければ、コストとリスクが劇的に増大しかねない。 
Local Perspective IconEY Japanの視点

気候関連の環境課題について投資家や顧客等からの要求に応えるために、企業は国からの助成金や税の優遇措置という「アメ」を活用し、国による法規制や制裁措置という「ムチ」に配慮しながら、その課題への対応を進めています。この「アメ」については、企業・業界団体・経済団体からの要望により施策されていることから、政策立案者と企業の方向性が合致しており、国は引き続き合致した方向性で施策を進めるべきです。しかしながら、「ムチ」については、企業を突き放すような罰則性を高めるよりも、その企業が国の環境関連施策に参加するべきという融和性を持たせるもの(例:事業改善・雇用機会創出を達成した場合における課徴金の返還)を設けることにより、政策立案者と企業等が一丸となった環境課題への取り組みを継続できるものと考えます。

 

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岡田 力
EY税理士法人 インダイレクトタックス部 パートナー
関谷 浩一
EY Japan メディア・エンターテインメントセクター・タックスリーダー 兼 タックス・ポリシーリーダー EY税理士法人 パートナー

年を追うごとに、気候変動に対して行動を起こさないことへのリスクが顕著になってきています。政府、企業の双方に果たすべき役割があり、双方が共通の目標に向かって協力して初めて、大きな変化が生まれるのです。  

政府と企業の両方が、それぞれの持ち場で影響力を駆使することにより、気候問題の解決を推進することができます。従来通り、協働が最も意義のある進展をもたらすでしょう。

幸い、企業には、環境のサステナビリティ向上のために積極的に行動し、政策立案者と協力する機会が数多くあります。そして、このような行動が、投資家、サプライヤー、顧客、従業員からの高まる要求に応えるためには不可欠です。  

受動的なアプローチを取っていては、政府が求める要件と期限に応じることはできません。企業がサステナビリティへの貢献を進めるに当たって、検討すべき4つの行動があります。 

1. 気候関連活動の透明性を高める

企業は排出削減目標に関して誓約することは、正しい方向への一歩と言えます。しかし、規制当局とステークホルダーは、成果と説明責任が現実のものとなり、意欲的な目標が達成されることを望んでいます。

今、企業は、気候関連情報の開示強化に向けて自社の態勢が整っているかを評価する必要があります。2022年3月、米国証券取引委員会(SEC)は、気候関連リスク、気候関連目標、温室効果ガス(GHG)排出量、および取締役会と経営陣による気候関連リスクの監督体制について、登録企業による開示の増強・標準化を目的とした、新しい規則(PDF、英語版のみ)を提案しました。また、SECの提案では、登録企業に対し、特定の気候関連事象や移行に向けた活動の影響を監査済み財務諸表で定量化することを義務付けています。

投資家、顧客、従業員がこのような情報を求める傾向は強まっており、企業は対応可能な体制を整える必要があります。企業は、サステナビリティのストーリーを伝える、つまり、その取り組みを文書化し、その過程で得られた成果と知識を共有することで自らの模範を示し、社内外の人々の意欲を引き出すことができるのです。

2. 気候関連の進展が目に見えるように測定する

意義のある透明性は、気候問題への取り組みのモデル化、計画、追跡、監視が可能となって初めて実現することができます。企業にとっては、測定可能な目標を定め、その達成に必要なロードマップを策定することが効果的です。これを実行するには、サプライチェーン全体を慎重に調査し、排出量が発生する場所と、GHG削減と脱炭素化の取り組みを集中させるべき領域を詳細に理解する必要があります。選択の結果生じた影響を定量化し、適切な場合には、環境に配慮した選択を促すために金銭的インセンティブを導入することで、説明責任を向上させることができるでしょう。また、従業員やその他のステークホルダーの意識を高め、気候問題に配慮した行動や活動を促進することにもなります。

3. イノベーションで差別化する

環境問題は、あらゆる地域、産業、コミュニティに、何らかの形で影響を及ぼしています。気候関連の課題に対応し、サステナビリティ向上に必要な新たな製品、プロセス、技術が何であるかを分かっている企業は、市場で優位に立つことができるでしょう。さらに、気候関連の取り組みは新たな雇用機会をもたらし、経済成長を推進する強力な原動力となる可能性があります。

4. 公共部門と協働して政策形成に関与する 

サステナビリティ政策の形成過程にはさまざまな力がダイナミックに作用します。有意義で確固とした政策を形成するには、多数の関係者の協働が必要です。政策立案者は、企業との開かれた対話を継続することで、提案された変更が事業運営や雇用機会にどのように影響するかをより深く理解できるようになります。企業と政策立案者の間のコミュニケーションは、「アメ」と「ムチ」を適切に組み合わせた環境政策の形成につながります。このような政策の方が、世界規模でも地域レベルでも気候目標を達成し、それを持続させられる可能性が高いと考えられます。税金は、気候変動対策の主要な資金源として、議論に不可欠な要素です。 

サマリー

私たちはすでに、気候変動に対する不作為の影響を目の当たりにしています。協力して解決策を見いだし、測定可能な目標を定め、政策を行動に移すことで、すでに負ったダメージの一部を取り戻すために前進することができます。

この記事について

執筆者 Cathy Koch

EY Global Tax Policy Network and Americas Tax Policy Leader

Leader in US and global tax policy with an informed perspective on public and private sectors and a deep knowledge of the US legislative environment.

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