4 分 2017.08.16
scientist comparing dna results computer

R&Dが人工知能でどう強化されているか

執筆者

Pamela Spence

EY Global Health Sciences and Wellness Industry Leader and Life Sciences Industry Leader

Ambassador for outcomes-based performance and healthy aging. Advocate for women.

4 分 2017.08.16

人工知能は創薬や医薬品開発に影響を与える可能性を秘めています。

ロンドンに拠点を置く、BenevolentAIの100%子会社であるBenevolentBioは、人工知能(AI)とマシンラーニングを使用して創薬を進めています。GlaxoSmithKlineの元SVPで、現在はBenevolentBioのCEOを務めているJackie Hunter教授にお話を伺いました。

EY:AIやこれに関連したマシンラーニングのツールは新薬の開発速度や開発コストにどのような影響を与えるのでしょうか。

Jackie Hunter教授: 人工知能は創薬や医薬品開発のプロセス全体に影響を与える可能性を秘めています。業界として、いまだにフェーズII、フェーズIIIの治験で候補となる化合物の半数が失われていますが、それは有効性が足りない、という理由によるものです。この状況はサステナブルであるとは言えません。つまりターゲットの選出を間違っているということなのです。フェーズII、フェーズIIIでの失敗のさらに4分の1は、戦略的もしくは商業的な理由によるものです。これについては、どの候補化合物を優先するかについて、業界が必ずしも常に正しい決定を下しているわけではない、ということが言えると思います。

当社のディープ・ラーニング・プラットフォームでは、ターゲットバリデーション(目標の妥当性検証)を含め、開発における成功率を4倍にまで高めることが可能です。私たちはすでにいくつかのエビデンスを持っています。1年以内に新たな仮説を36件作り、そのうちの24件のバリデーションをインビトロ(体外)で行いました。従来の医薬品開発では、この期間に同じ人員で可能となる件数は約5件というのが一般的なところでしょう。

また、私たちはディープラーニングを行うスーパーコンピューターを使用して、これまでだと2、3カ月かかっていた化学モデルを1週間以内に作成しています。こうした加速化が、臨床における概念の実証やそれ以上のものとなるかどうかはまだ分かりません。しかし目が離せないものであることは確かです。

EY: BenevolentBioのAIプラットフォームはどのように効果を上げ、どのような知見が得られているのでしょうか。

Hunter教授: システムには公共か個人か、構造化されているかどうかにかかわらず、化学についてのあらゆる情報が取り込まれます。そして専門家が使用するバイオメディカルの辞書も盛り込まれます。その後、自然言語処理などのアルゴリズムを適用して学習曲線を構築し、さまざまな分子組織体と疾病との間の複雑な相関パターンを見せます。これにより、新しい関連性の可能性の創成や既存の仮説の除外が可能となるのです。個別のアプローチを続けないという決断を下す場合など、時に、ネガティブな結果がポジティブな結果よりもかえって貴重となることがあります。

大手の製薬会社は、コンピューターの力やデータ解析が医薬品の研究・開発にもたらす恩恵を正しく享受するため、生物統計学やITだけではなく、部署を越えたデータ主導のアプローチにより積極的に取り組む必要があります。
Jackie Hunter
BenevolentBio社CEO

EY:大手製薬会社の多くが興味を持つ内容だと思います。創薬サービスも提供されていらっしゃるのですか。

Hunter教授: いいえ。バイオ医薬品業界のAI企業では珍しいかもしれませんが、当社はサービスプロバイダーではありません。自社のパイプラインを構築しているのです。2016年11月、Janssenから治験可能な新しい小分子の新薬候補物のライセンスを取得し、また臨床や生物学についても膨大なデータを得ました。当社のプラットフォームを使用し、こうした資産について新たな適応症を見つけようとしています。まず、今年はフェーズIIの治験に移る予定です。Janssenはこれら分子の買い戻し権は持っていませんが、当社がフェーズIIIに移行した場合にはロイヤルティや目標達成にかかる報奨金を手にするでしょう。

2017年4月、当社は医学研究機関であるMRC Technologyと2年間の創薬コラボレーションを締結しました。ここでは、当社のAIが策定した疾病ターゲットのいくつかについて錯体化学を適用する予定ですが、さらに当社のAIテクノロジーを通じて特定された、有用性が期待される分子を使用してバリデーションを行うことも検討しています。これまでにも、当社のプラットフォームを使用して得たターゲットや化学の基礎研究をアルツハイマー病に適用すべく、米国の医薬品会社にライセンス供与しています。

EY:投資家たちも、これまでよりも範囲が広くなったAIという領域に一気に参入してきていますね。医薬品開発にAIを適用する、ということについて、投資家や医薬品業者の興味や理解のレベルはどの程度だとお考えですか。

Hunter教授: AIはこれまでよりも主流なものになりつつあります。当社も他のAI企業も、膨大なベンチャー資金を調達してきました。BERG Health(AI支援の医薬品開発企業)はシリコンバレーの不動産億万長者、Carl Bergに支援されています。大企業の場合、そのほとんどが、創薬であれ、実際の成果であれ、もしくは顧客をよく知る、という目的であれ、その開発バリューチェーンのどこかでAIとの関わりを持っているのが事実です。当社は多くの製薬会社と、非中核資産に関するライセンス取引の可能性について検討を進めています。

EY:医薬品開発を合理化し促進しようと進められている貴社の取り組みの中で、最大の課題とは何ですか。

Hunter教授: 技術的なことだけではなく、文化的、社会的な問題もあるのです。生物学者は、マシンラーニングやデータクランチングが持つ価値、つまりそういったものを利用することでもう苦労しなくても済む、という価値に対しオープンになり、また以前は歩み寄りができなかったかもしれないような類いの新たな質問をしてみる、という姿勢を持たなくてはなりません。データを取り扱う科学者も生物学者や化学者と交流し、自身のツールがどう利用されるのかについてより理解を深めるべきです。大手の製薬会社は、コンピューターの力やデータ解析が医薬品の研究・開発にもたらす恩恵を正しく享受するため、生物統計学やITだけではなく、部署を越えたデータ主導のアプローチにより積極的に取り組む必要があります。

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サマリー

大手の製薬会社は、コンピューターの力やデータ解析が医薬品の研究・開発にもたらす恩恵を正しく享受するため、部署を越えたデータ主導のアプローチにより積極的に取り組む必要があります。

この記事について

執筆者

Pamela Spence

EY Global Health Sciences and Wellness Industry Leader and Life Sciences Industry Leader

Ambassador for outcomes-based performance and healthy aging. Advocate for women.