7 分 2020年12月8日
            チョウを指にのせている少女

コラボレーションが支える細胞・遺伝子治療(CGT)の確かな未来

執筆者 Adlai Goldberg

EY Global Digital, Social and Commercial Innovation Life Sciences Leader

Keenly focused on capturing opportunities and managing impacts created by the digital megatrend for the life sciences clients.

投稿者
EY Japanの窓口

EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネス・マーケットセグメントおよびライフサイエンスセクターのリーダーを兼務。健康に楽しく生きることを自ら実践。

7 分 2020年12月8日

臨床科学レベルでCGTの実現が進む⼀⽅で、業界の課題はいかに⼿頃な価格で治療を普及させるかです。

要点
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、CGTの力強さともろさの両面を明らかにした。
  • データを中心にデジタル化したビジネスモデルであれば、迅速な対応とイノベーションの実現が容易になる。
  • CGT業界がその可能性を最大限に発揮するために、すべての当事者のこれまでにないレベルのコラボレーションが必要となる。
Local Perspective IconEY Japanの視点

日本でも、細胞・遺伝子治療の分野を含む再生医療の進展は目覚ましいものがあります。2007年の自家培養表皮「ジェイス」に始まり、数種類の承認製品が続き、2020年に入ってからは脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療用製品「ゾルゲンスマ」、ヒト角膜輪部由来角膜上皮細胞シート「ネピック」、2021年にはCD19を標的とする大細胞型B細胞リンパ腫を対象としたCAR-T細胞製品「イエスカルタ」、大細胞型B細胞リンパ腫を対象としたCAR-T細胞製品「ブレヤンジ」と、14年間(「EY Japanの視点」執筆時点まで)に11製品が承認を取得しています1。また、iPS細胞を用いた細胞治療の臨床試験や研究も多数行われており、日本の技術力が期待される分野です。市場規模も2030年には1兆円を超えると予想されています。

再生医療は、安全性をはじめ費用・規制・供給体制・流通面で課題を抱えているのも事実です。研究開発に要するコストが膨大であるためビジネスとして成立しにくい側面もあります。しかし、この分野の新たなイノベーションを情熱的に推進する研究者、アカデミア、ベンチャー企業、製薬企業も数多く存在します。そして多くの異業種企業がこうした動きをサポートしています。課題をひとつひとつ解決し、日本における重要な産業として育て、今後の「アンメット・メディカル・ニーズ」に対する治療として大きく貢献することが期待されています。 

1.「承認情報(再生医療等製品)」、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構ホームページ、
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/ctp/0001.html(2021年8月23日アクセス)

EY Japanの視点

矢崎 弘直
EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

新型コロナウイルス感染症の拡大により、細胞・遺伝⼦治療(CGT)エコシステムの力強さともろさの両面が明らかになりました。優先順位の変更、臨床試験の遅れ、研究所の閉鎖、免疫不全患者のリスクの高まりなどの要因から、CGTの研究・開発・製造・提供の進展が阻害されています。EYのレポート「How collaboration will strengthen the future of cell and gene therapies」(PDF・英語版のみ)で考察したように、EYはCGT業界に対し、新たな視点でのコラボレーションとデータ共有の検討を提言しています。

臨床科学レベルでCGTの実現が進む⼀⽅で、いかに⼿頃な価格で治療を普及させることができるのでしょうか。今回のパンデミックから得た教訓は、患者、医療提供者、医療サービス会社、保険会社、保険者、バイオ医薬品業界などの当事者が協力するエコシステムによって達成されるということです。

先日、OCTS Cell Therapy SummitでEYが主催したパネルディスカッションにおいて、Johnson & Johnsonの先進細胞治療サプライチェーンのプログラムリーダーであるOrlando Serani氏は、「科学のスピードに合わせて協力する必要がある」と述べました。CGTにおいては、これまでにないレベルの協力、情報共有への姿勢、高次元の信頼感をデータとテクノロジーの力を使って実現することと言えるでしょう。言い換えるなら患者と業界の現在、次、さらにその先を支えるようなレジリエンスに大切な要素を実現することです。

EYでは、CGTの世界市場が2021年の年間推定30億米ドルから、2027年には年間推定500億米ドルへと、医薬品の世界市場の成長を上回る速さで飛躍的に成長すると見込んでいます。2,600件を超えるCGTの臨床試験により、2022年から2027年にかけて相次いで製品が承認されると考えられます。

CGT企業はこれまで、多額の資金調達を進めてきました。再生医療アライアンス(ARM)のGlobal Regenerative Medicine & Advanced Therapy Sector Reportは、CGT企業は2020年1月から6月までの間に、世界全体で推定107億米ドルを調達したと報告しています。これは前年比120%の増加です(Biomedtrackerによる調査)。

こうした特異的な治療法は変革をもたらす一方、課題も突き付けます。製造や管理が難しい上に高価なためミスは許されません。また、短期間の治療で治癒効果が得られることが特徴であるがゆえに通常よりも高額になるのです。

先日開催されたOCTS Cell Therapy SummitでEYが主催したCGT普及に関するパネルディスカッションでは、Optum(UnitedHealth Group傘下)の腫瘍部門のシニアバイスプレジデントであるSarah Dye氏が、細胞・遺伝子治療に新しい償還モデルを確立することの必要性を強調しました。「償還モデルを改善して患者のアウトカムと関連付け、バリューチェーン全体でインセンティブを調整し、治療にかかる高額な費用を複数年に分散できるようにする必要があります。支払いに関するこうした改革は現在の支払いモデルを大きく変えるため、確立するまでには時間がかかるでしょう」

コラボレーション環境の強化によりCGT業界の成果につながるのか

EYのプロフェッショナルチームは、CGTのバリューチェーンに沿って各ステップと協力のポイントを調査し、以下について考察しました。

  • 命を救うこうした治療の普及をどのように支援できるか
  • バリューチェーンの当事者が、いかに治療の状況について安全に確実に把握できるか
  • CGT業界に対して、これまでにない⽅法でのコラボレーションの検討を促すには?

EYはまた、Microsoftとの協力の下、テクノロジーに関する重要課題に取り組みました。「データとテクノロジーにより生活を一変する個別化治療を安全性、アクセス、信頼性を確保した提供が可能になります」と述べるのは、Microsoftのメディカル責任者兼Worldwide Commercial Business(WCB)医療部門のバイスプレジデントであるDavid Rhew氏です。「私たちは、患者の適時・的確で適切な場所での治療を実現するため、いかなる量、種類、スピードの医療データをあるシステムから別のシステムにスムーズに取り込んで充実させるという課題の解決に取り組んでいます」

CGT業界が求めているのは、CGTエコシステムで患者のアウトカムに関わる主要な当事者を連携させることができる、Pointellis™のような信頼性の高いオープンなデータ交換プラットフォームです。Pointellis™は、命を救える可能性のある重要な治療法を迅速に提供し、高コストとなるエラーを最小限に抑え、最先端の治療を、その恩恵を受けられる患者全員に届けられるよう広く普及させるためのソリューションです。

これまでにない方法でデータを統合・共有することで、実現できることは何か

「パンデミックが引き起こした世界的な混乱により、データを中心にデジタル化したビジネスモデルであればレジリエンス、アジリティ、イノベーションの実現がより可能になることが分かりました」と、EY Global Health Sciences and Wellness Industry Leader兼Life Sciences Industry LeaderであるPamela Spenceは述べています。「この混乱は『転換点』にもなりました。より患者を中心とした医療へと変わり、自身のデータを所有し、安全なプラットフォームを通じて自分のデータにアクセスしたいという患者の要望が広く理解されるようになりました」

CGTが、連携したオープンなデジタルエコシステムに変われば、CGTバリューチェーンの当事者間の従来の区分が曖昧になります。その結果、バリューチェーンの応答性が高まり、提供までの時間が短縮されると同時に効率化が進み、高度な制御性とトレーサビリティを通じて、最終的にはコストを抑えながらオンデマンドの個別化治療を幅広い患者に提供することができます。

複雑なCGTバリューチェーンの課題とニーズへの対応以外にも、Pointellis™のようなオープンなデジタルプラットフォームは、現在そしてこれからも、患者中心の高度な個別化治療を実現する機会をもたらします。当事者間での情報共有、信頼感、これまでにないレベルでのコラボレーションによって、組織は劇的に成功率を高めてコスト削減を達成できるため、迅速かつ効率的に、利用しやすい治療を届けることができます。その上、成功率が上がればさまざまな治療法の提供につながり、医療面でも金銭面でも患者のニーズに合った選択肢を増やすことが可能になります。

ミッション

EYは、すべての患者と家族が細胞・遺伝子治療の恩恵を受けられるようサポートしたいと考えています。データ、テクノロジー、情報管理といったトランスフォーメーションの力を活用することで、Pointellis™のようなソリューションは、新しい科学の進化から優れた物流の提供や可能な限り最適な医療の提供まで、エコシステムに属する誰もが、自身が最も力を発揮できる分野に集中できるように導きます。

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サマリー

細胞・遺伝子治療の改革は止まりません。ARMによると、世界中で1,000社を超える企業が設立され、この新しい治療法の範囲拡大と効率化が図られています。未来のCGTエコシステムは、治療を受ける何十万人もの患者に対応する準備が整っているでしょうか。EYは、コラボレーション、信頼感、テクノロジーがそろえば、その答えは明らかに「イエス」であると考えます。

この記事について

執筆者 Adlai Goldberg

EY Global Digital, Social and Commercial Innovation Life Sciences Leader

Keenly focused on capturing opportunities and managing impacts created by the digital megatrend for the life sciences clients.

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