2021年第1四半期を終えるにあたり、EYが疑問を呈したのは次の2点です。①新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が開始され感染抑制に効果が表れるまで原油市場に対する信頼を維持できるかと、②OPECプラスの加盟諸国が協調減産を順守し続けることができるかです。これらの疑問に対する答えは、少なくとも現時点においては「YES」であると断言できるでしょう。WTI原油価格とブレント原油価格は、1月上旬の1バレル当たり50米ドル付近からピークとなった3月中旬には65米ドルを超える水準へと着実に上昇しました。この原油価格の回復は、サウジアラビアが主導するOPECプラスにより綿密に計画されたもので、OPECプラスが生産量を前倒しで以前の水準に戻したいという衝動を抑えることに成功したことによるものです。サウジアラビアが1月上旬に日量100万バレルの自主減産を約束した(続いて3月にも自主減産期間の延長を再表明した)ことが、それ以降、私たちが目撃している市況回復のきっかけとなったことは明らかです。
この回復基調は上流市場に限った話ではありません。製油所の操業停止と需要の回復により、2021年第1四半期において精製マージンは64%まで上昇し、昨年10月下旬に1バレル当たり11米ドル付近で取引されていたRBOBクラック・スプレッドも、3月下旬には20米ドルを上回る水準にまで回復しました。当四半期における最も劇的な話題としては、米国テキサス州を襲った強烈な寒波による影響が、グローバルの原油・ガス市場にとっては極めて小さかったということでした。
LNG市場に関しては、新たな投資を後押しする安定した価格という、長く待ち望んでいた時代がついに到来し、市場に対する期待の高まりに満ちて2021年第1四半期の幕が開きました。
原油在庫は正常化しつつありますが、依然として不確実性に満ちています。パンデミックはいずれ収束すると考えられますが、そのタイミングを予想することは非常に困難です。米国ではワクチン接種に一定の効果が見られましたが、欧州では依然として感染の第3波に苦しめられています。
原油先物のフォワードカーブは、前四半期末以降において根本的に変化しています。2020年12月下旬には、ブレント・フォワードカーブは将来に向かって徐々に増加していましたが、現在は、バックワーデーション(将来に向かって減少)の状態となっています。これは、市場参加者が短期の価格変動を中長期的なファンダメンタルズから切り離されたものとして捉えている明らかなサインと考えられます。
2021年第2四半期には、次の4つのトレンドが見られます。