2021年12月10日
Price Point:2021年第4四半期の原油・ガス価格の見通しを理解するための4つのトレンド

Price Point:2021年第4四半期の原油・ガス価格の見通しを理解するための4つのトレンド

執筆者 EY Japan

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2021年12月10日

石油市場は協調減産によって安定化を図った一方で、ガス市場は再生可能エネルギーの補完的役割を担うことによってガスインフラの価値を明確にしています。本稿では、最新の原油・ガス市場の⾒通しについて解説するとともに、価格の⾒通しに関するEYの分析を提供します。

要点
  • 石油価格の安定と液化天然ガス(LNG)のスプレッドの上昇に伴い、石油・天然ガスが短中期的に利益を見込め、再生可能エネルギーなどへの移行戦略を策定・実行する時間があるとの確信が高まる。
  • 天然ガス・LNG市場は、再生可能エネルギーの補完的役割を担うことによりガスインフラの価値を明確化した。
  • 2014~15年の景気後退以降、石油バリューチェーン全体への投資は遅れており、生み出したキャッシュフローの投資先に焦点が集まっている。

2021年の第4四半期の期首においては、石油・ガスが短中期的に利益を見込むことができ、再生可能エネルギーなどへの移行戦略を策定・実行する時間があるという確信を高めています。第3四半期の原油価格は石油ガス会社の経営を持続可能とする水準で安定しており、石油・ガス会社の収益とキャッシュフローはパンデミック前の水準に戻り、天然ガス・LNGの市場は過去10年間にないレベルにまで上昇しました。

第3四半期の石油市場は、第2四半期末とほぼ同水準で終えています。石油消費量は第2四半期には2019年同四半期の96%まで戻り、第3四半期も継続して上向いたことから2019年同四半期の約97%まで持ち直しました。

供給面では、世界市場の3分の1を占めるOPECプラスが生産量増加の60%以上を占めましたが、米国バイデン政権はOPECプラスにさらなる増産を要求しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機の間、OPECプラスは在庫水準を市場の正常化の指標としてきました。これによれば、すでに正常な市場になりつつあります。OECD加盟国の在庫は引き続き減少しており、2021年末までに2015年以来の最低水準に達すると予測されています。

天然ガス・LNG市場では、構造的な供給不足という証拠が蓄積され続けています。第3四半期末を迎え、ヘンリーハブ価格は第2四半期末に比べて40%、ヘンリーハブとアジアのLNGとの間のスプレッドは47%、それぞれ上昇しました。このような高騰は注目に値するものです。なぜなら通常は北半球の夏の終わりに需要(およびスポット価格)の一服を利用して、需要が増える冬に向けて安価な在庫を積むことが多いためです。しかし、LNGのスプレッドは冬の高値を記録した後、2月中旬に底を打って以来、継続的に上昇しています。

第4四半期のテーマは「コンティンジェンシー(不測の事態への対応)」です。天然ガス・LNG市場の発展は、安定した電力供給を維持するためのガスインフラの価値を明確にしました。ガス生産・LNG取引により再生可能エネルギーの一時的な供給停止に対処したことは、風力、太陽光、水力発電を補完するものとしての天然ガスの実行可能性や、電気自動車の普及や他の代替技術の登場が遅れることに対するヘッジとしての液化投資の価値を検証する機会となりました。

欧州と米州の気象パターンは、風力発電や水力発電の出力に影響を与え、両地域の天然ガスによる発電量の変化がそれを反映しています。米国西部では、2021年前半にガス発電量が5テラワット時(TWh)増加し、水力発電量の6TWhの不足をほぼ完全に補いました。英国では、第1四半期に風力発電が5TWh減少したものの、ガス発電を5TWh増加させたことで補いました。ロシアからの供給が途絶え、アジアのバイヤーとの競争が激化したため、欧州のガス貯蔵量は9月末時点で72%となり、この時期としては過去10年間で最も低い水準となりました(6%ポイント差)。

今後の石油市場を展望すると、石油需要がパンデミック以前のレベルに戻ったときに何が起こるのか、GDPに追随する軌道に戻るのかは誰にも分かりません。2014~15年の景気後退以降、石油バリューチェーン全体への投資は遅れています。これは投資家が、多くの人が斜陽産業と考えている石油事業に資金を提供することに消極的であり、取り組みが遅れているとはいえ、エネルギーの転換に対してより高い価値を認識していることを反映しています。

いつものように多くの議題は選択的な価格戦略と資本配分で占められ、最適解を発見した企業には大きな利益がもたらされるかもしれません。

  • 欧州やアジアで寒冬が訪れた場合、在庫が底をついている欧州でのLNG価格はどこまで上昇するのか
  • 天然ガスやLNGの価格上昇はいつまで続くのか。投資家は新たな資金を投入するのか
  • 投資を抑制してきた結果、需要がパンデミック前の水準を超えて増加した場合、原油価格が急騰するリスクはどの程度あるのか
  • 石油・ガス会社は獲得したキャッシュフローを株主への還元、従来型の石油ガス事業への投資、代替事業への投資に振り分ける際にどのような選択をするのか

2021年第4四半期には、次の4つのトレンドが見られます。

1.石油市場の安定

今回のパンデミックにより石油需要が激減した直後からOPECプラス各国は価格を維持するために協調減産を行い、在庫を削減することに合意しました。協調減産はこれまで顕著な成功を収めており、その傾向は当四半期も続いています。

2.コモディティ価格の回復より遅れる消費・活動レベル

原油、天然ガス、LNGの価格はパンデミック以前の水準以上になっています。資本市場が消極的なため、探鉱・開発活動は鈍く、典型的な供給主導の価格上昇サイクルが到来する可能性があります。

3.供給を上回るガス需要の高まり

さまざまな出来事が重なり、天然ガスやLNGの価格は特に夏場としては前例のない水準にまで上昇しました。少ない在庫と冬におけるガス需要の高まりが重なったときに何が起こるのか、良好な経済が維持できるのか、資本市場がどのように反応するのかは、時の経過とともに明らかになるでしょう。

4.顕在化しないエネルギー転換

政府や産業界では、脱炭素社会を実現するための政策や事業戦略の立案が続けられています。しかし今のところ化石燃料の消費によるCO2排出量は、今年中にパンデミック前の水準に戻るとの見方が大勢です。

サマリー

石油価格の安定とLNGのスプレッドの上昇で、石油・ガスは短中期的に利益を見込めているものの、石油バリューチェーン全体への投資は遅れており、生み出したキャッシュフローの投資先が注目されています。一方でガス・LNG市場は、再生可能エネルギーの補完的役割を担うことでガスインフラの価値を明確にしています。

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