5 分 2021年3月22日

            地中海に浮かぶ石油タンカー

2020年第4四半期の決算報告で、歴史に残るこの1年の課題はどのように検証されたか

執筆者 Andy Brogan

EY Global Oil & Gas Leader

Oil & Gas sector leader, speaker and industry advocate, optimist, music addict and avid traveler.

EY Japanの窓口

EY Japan Oil & Gas Sector Leader

子どもは3人。趣味は料理をすること、食べること、犬と遊ぶこと。

5 分 2021年3月22日
関連トピック 石油・天然ガス 戦略

第4四半期中に需要と価格は上昇したものの、資本配分については、コアビジネスか再⽣可能エネルギーかという厳しい選択を⽯油・ガス企業は迫られています。

この記事は、石油・ガス業界の四半期トレンドシリーズの一部です。

要点
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響下、第4四半期はキャッシュフローが減少し巨額損失が発生したものの、第2四半期比では大幅な改善となった。
  • アナリストからは、今後の設備投資を上流事業と再生可能エネルギーのどちらに振り向けるのかという質問が再三なされた。
  • 米国企業はカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)削減に関して欧州企業に後れを取っており、アナリストからは出遅れを取り戻すことへのプレッシャーについて問われた。

2020年は、⽯油の時代が始まって以来、世界が直⾯した最も困難な年だったと⾔えるかもしれません。パンデミックと、それに伴い生じた移動制限と経済(および⽯油需要)への影響に⽀配された1年となりました。

第4四半期も原油市場の回復は継続しました。⽣産者が望んでいたペースより緩やかだったものの需要が持ち直し、減産により市場のバランスはおおむね維持される格好となりました。

原油価格は同四半期中では上昇基調となり、期末時点のWTI先物取引価格は期⾸⽐で20%上昇しました。ガス価格は地域差があり、例年よりも暖かかった⽶国ではヘンリーハブ(天然ガス)先物価格が横ばいだったのに対し、アジアでは寒さと輸送能⼒不⾜のためLNG価格が⾼騰しました。

⽯油メジャー各社がこの第4四半期に計上した純損失は総額250億⽶ドルと、第3四半期の3倍になりましたが、第2四半期⽐では2分の1以下にとどまっています。営業活動によるキャッシュフローは206億⽶ドルで、第3四半期⽐で36%減少したものの、第2四半期⽐では81%増加しました。

株式市場は未来を先取りし、株価は商品市場を追随する形となりました。国際的な⽯油企業の当四半期末の株価は期⾸⽐で20%、独⽴系⽯油会社は30%超、⽯油サービス会社は60%の上昇を見せました。

⽯油メジャー各社が第4四半期に計上した純損失は総額250億⽶ドルと、第3四半期の3倍になりましたが、第2四半期⽐では2分の1以下にとどまっています。株式市場は未来を先取りし、株価は商品市場を追随する形となりました。

キャッシュの活用方法

年末の決算報告では、従来とほぼ変わらずアナリストの質問は財務に関する事項に集中しました。中でも最大の焦点となったのはキャッシュフロー、設備投資の見通し、株主配当です。

原油価格の上昇を受け、キャッシュフローの改善がどの程度⾒込めるか、キャッシュを株主配当・コアビジネス・再生可能エネルギーのどこに振り分けるのか、といった質問への具体的な回答が求められました。アナリストからの質問に共通していたテーマは「柔軟性」で、原油価格が現在の⽔準で安定的に推移する場合や上昇に転じた場合、下半期に設備投資計画を加速させるのか、またそれはどのような形になるのかという点にも注⽬が集まりました。

アナリストらは、原油価格が低⽔準でも安定的な配当を維持することが市場の評価につながると指摘し、株主に対する利益還元に強い関⼼を⽰しました。増配を再開するには原油価格がどの⽔準で安定する必要があるかという直接的な質問のほか、利益還元を⾏う場合は⾃社株買いと配当⾦のどちらになるかについても質問しています。

コアビジネスと再生可能エネルギー事業とのバランス

コアビジネスと再生可能エネルギー事業のバランスに関するアナリストの関⼼が高いことが浮き彫りになりました。今後の設備投資を原油価格の上昇を⾒越して上流事業への投資に回すのか、再⽣可能エネルギー事業に振り向けるのかとの質問が再三なされました。

アナリストは、企業の意欲について理解を⽰したものの、財務と戦略の両⾯から各社の競争⼒を評価しようと努めました。企業が掲げる再⽣可能エネルギーに関する事業計画の実現可能性に疑問を呈し、コアビジネスの収益稼得能⼒についての質問や再⽣可能エネルギー事業の予想収益との⽐較を⾏いました。

また企業に対し、⾃⼰資本⽐率の現状と⽬標⽔準についての質問も投げかけています。債務⽔準を抑制しながら信⽤格付けを維持することと、収益性の低い⾮⽯油事業を拡⼤させることでレバレッジが必然的に⾼まること、これら2つの間にトレードオフがあることは明⽩です。アナリストの念頭に、信⽤格付け機関が発表する最新の格下げ⾒通しがあったことは疑いようがありません。

戦略⾯では、⽯油メジャーの低炭素事業への取り組みが重要なポイントとなり、再⽣可能エネルギー事業が軌道に乗るのはどの程度先になると⾒込んでいるかについて、複数の質問が投げかけられました。

米国企業の追い上げ

他国の同業他社に⽐べて取り組みが遅れている⽶国企業に対しては、社外(同業他社、株主、信⽤機関など)からのカーボンフットプリント削減を求める強いプレッシャーが取締役会の議論にどう影響しているかという質問がありました。アナリストは、欧州企業のように多⾓化したエネルギー企業として事業を展開する⻑期計画を策定しているかについて注目しています。

各社は戦略性の低い資産を売却し、利益率の⾼いプロジェクトに集中的に投資することでポートフォリオを強化してきました。質問が尽きることはなく、資本の優先順位の変化と、⻑期的にみた場合の上流事業の適正規模が焦点となりました。

⽶国の政権交代と連邦規制の変更案が⽶国メキシコ湾における資産戦略に与える影響、またそれに伴うリスクの規模に、アナリストは強い関⼼を⽰しました。

政策と規制については、米国の政権交代と連邦規制の変更案が、米国メキシコ湾における資産戦略に与える影響、またそれに伴うリスクの規模に、アナリストは強い関心を示しました。

事業運営⾯では、⽣産量の⾒通しが焦点となりました。企業に向けたアナリストのメッセージの根本にあったのは、⽯油需要の回復によって(仮に)価格が急騰した場合、プロジェクトを迅速に再開して⽣産を拡⼤させるだけの体⼒を維持できるかということです。

これまでと同様、アナリストが知りたがっていたのは主要な投資プロジェクトの進捗状況です。資本が不⾜し、⽯油・ガスプロジェクトが拡⼤中の再生可能エネルギープロジェクトと競合する中、資本効率、リターン、事業の展望のほか、資本配分と⽣産量⾒通しとの関連性について質問が集中しました。


            アナリストの質問に占める上位3テーマと割合のグラフ

見通し

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、ワクチンが普及して⽯油需要が回復するまでの間、引き続き市場の重しとなるでしょう。その場合、⽯油・ガス事業への投資の⻑期的価値と、安定的なキャッシュフローが⾒込まれるものの先⾏き不透明な事業への投資とのトレードオフが今後も注⽬されることになります。

企業が現在の業績を維持しながらカーボンフットプリント削減に取り組むことへのプレッシャーが⼀層⾼まると予想されます。再⽣可能エネルギーの成⻑とリターン⽬標を実現する体⼒が企業にあるかを測るためのエビデンスを、アナリストは常に探っています。

  • 分析の対象範囲および手法

    当レビューの目的は、世界の石油・ガス企業11社を対象に、2020年第4四半期の決算報告シーズン中にアナリストが質問した内容から、主要テーマを分析するものです。上位3テーマの特定は、決算報告の電話会議の記録を分析した内容のみに基づきます。今回の分析は、以下の企業を対象としています。

    • BP plc
    • Chevron Corporation
    • ConocoPhillips
    • Eni SpA
    • Equinor ASA
    • Exxon Mobil Corporation
    • Repsol SA
    • Royal Dutch Shell plc
    • Suncor Energy Inc
    • TOTAL S.A.
    • Woodside Petroleum Ltd

サマリー

ワクチン接種が進み、⽯油需要が回復すれば、企業は現在の業績を維持しながら再⽣可能エネルギーの戦略の推進に⼀層注⼒することになるでしょう。

この記事について

執筆者 Andy Brogan

EY Global Oil & Gas Leader

Oil & Gas sector leader, speaker and industry advocate, optimist, music addict and avid traveler.

EY Japanの窓口

EY Japan Oil & Gas Sector Leader

子どもは3人。趣味は料理をすること、食べること、犬と遊ぶこと。

関連トピック 石油・天然ガス 戦略